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医療法人の合併で税金はどうなる?適格合併の要件と持分放棄の贈与税を弁護士・税理士が解説

2026.11.04

医療法人同士の合併では、法人税法上の適格合併に当たれば資産の含み益に対する課税は繰り延べられますが、非適格合併では消滅する医療法人の資産の含み益に法人税がかかります。また、持分あり医療法人では、合併に伴う出資持分の放棄・払戻し・割当によって、法人や出資者に贈与税や所得税がかかることもあります。
本記事では、医療法人の合併で生じる税金と適格合併の要件、持分の放棄に伴う贈与税を避ける方法を弁護士・税理士が解説します。

 

第1章 医療法人の合併で法人にかかる税金は、適格合併か非適格合併かで大きく変わる

医療法人の合併では、税務上の一定の要件を満たす「適格合併」と、それ以外の「非適格合併」で、消滅法人が保有する資産の取扱いが異なります。

1-1 適格合併なら、資産を帳簿価額で引き継ぐため含み益への課税は繰り延べられる

医療法人の合併が適格合併に該当する場合、消滅法人の資産・負債は原則として帳簿価額のまま存続法人に引き継がれ、資産の含み益に対する法人税は合併時点では発生しません。
たとえば、帳簿価額が3,000万円、現在の時価が8,000万円の土地を消滅法人が所有していても、適格合併であれば3,000万円のまま引き継ぎます。差額の5,000万円について、その合併を理由に法人税が課されることはありません。

ただし、課税が免除されるわけではなく、将来その土地を売却する際などに課税されます。また、合併時までの通常の事業利益には法人税がかかります。
なお、合併による資産の移転自体は消費税の課税対象にならず、合併によって不動産を取得する場合も、不動産取得税は非課税とされています。

繰越欠損金は、適格合併でも引き継げないことがある

適格合併では、消滅法人の過去の赤字(繰越欠損金)を、一定の要件のもとで存続法人に引き継ぐことができます。ただし、合併事業年度の開始日の5年前の日より後に両法人の支配関係が生じた場合などには、共同事業に関する一定の要件を満たさなければ、繰越欠損金の引継ぎが制限されることがあります。
たとえば、理事長一族が赤字の医療法人の出資持分を取得し、数年以内に吸収合併する場合には、この制限が問題になることがあります。赤字を合併後の利益と相殺することを予定している場合は、支配関係が生じた時期や事業の継続状況を事前に確認しておきましょう。

1-2 非適格合併では、消滅法人の土地・建物などの含み益に法人税がかかる

医療法人の合併が適格合併に該当しない場合(非適格合併)、消滅法人は資産と負債を合併時の時価で存続法人に譲渡したものとして、時価と帳簿価額の差額(含み益)に法人税がかかります。
この法人税は消滅法人の最後の事業年度の所得として計算され、納税の義務は存続法人が引き継ぎます。

1-1の適格合併のケースとは異なり、診療所の土地の帳簿価額が3,000万円、時価が8,000万円であれば、差額の5,000万円が課税の対象になります。実際の税額は、ほかの資産の含み損や欠損金との相殺などによって変わります。

特に、取得時期の古い不動産ほど、大きな含み益が生じていることがあります。合併を検討する段階で消滅法人の不動産の時価と帳簿価額を把握し、非適格合併になった場合の税額を試算しておくことが、合併条件を協議する前提になります。

 

第2章 医療法人の合併が適格合併になるかは、出資の保有関係と事業の引継ぎで判定する

2-1 合併の対価として金銭を交付すると、原則として非適格合併になる

医療法人の合併が適格合併になるには、出資の保有関係にかかわらず、原則として、消滅法人の出資者に存続法人の出資(持分)以外の金銭などを交付しないことが必要です。
たとえば、持分あり医療法人同士の合併で、消滅法人の出資者に持分の代わりとして精算金を支払うと、ほかの要件を満たしていても非適格合併になります。

出資者への金銭の支払いを予定している場合は、合併の対価とするのか、合併前の払戻しなど別の手続で行うのかを整理し、それぞれの課税関係を確認しておく必要があります。

2-2 同族の持分あり医療法人同士は、出資の保有割合によって適格要件が異なる

理事長とその親族が両方の医療法人の出資をすべて保有している場合(完全支配関係)は、合併後も理事長一族による存続法人の出資の保有が継続する見込みであれば、金銭を交付しないことと合わせて適格合併の要件を満たします。

理事長一族の出資持分の保有割合が、両法人とも50%超100%未満の場合(支配関係)は、さらに次の2点も満たす必要があります。

  • 消滅法人の従業員のおおむね80%以上が存続法人の業務に従事すること
  • 消滅法人の主な事業を存続法人が引き続き営むこと

 
消滅法人のクリニックを分院として運営し続ける一本化であれば、これらの要件は満たしやすいといえます。一方、合併を機に閉院したり、スタッフの多くが退職したりすると、要件を満たさなくなるおそれがあります。

2-3 持分なし医療法人や出資関係のない医療法人との合併は、事業の関連性や従業員の引継ぎなどで判定する

持分なし医療法人が関わる合併では、出資の保有割合による判定ができないため、原則として「共同で事業を行うための合併」の要件で適格合併に該当するかを判断します。両法人の間に支配関係のない持分あり医療法人同士の合併も、同様です。

この場合、主に次の要件を確認します。

  • 両法人の事業が関連していること
  • 両法人の売上高や従業員数などの規模の差がおおむね5倍以内であること、または両法人の経営の中心となる役員が合併後も同様の役員に就任すること
  • 消滅法人の従業員のおおむね80%以上を引き継ぐこと
  • 消滅法人の主要な事業を継続すること

 
医療法人同士であれば、事業の関連性は認められやすいといえます。
一方、病院を運営する法人が小規模なクリニックの法人を吸収する場合などは、規模の差が5倍を超えることがあります。その場合は、消滅法人の理事長などが合併後に経営に関わる役員に就任するかどうかが重要な判定要素になります。

 

第3章 合併に伴う出資持分の放棄・割当・払戻しでは、法人や出資者に贈与税・所得税がかかることがある

持分あり医療法人が合併する場合、出資者の持分は、合併前に放棄や払戻しで整理されるか、存続法人の持分として割り当てられます。

3-1 持分の放棄で相続税・贈与税の負担が不当に減ると、医療法人に贈与税がかかる

持分あり医療法人の出資者が持分を放棄し持分なし医療法人に移行する場合、それによって出資者の親族などの相続税・贈与税の負担が不当に減少すると認められる場合には、医療法人を個人とみなして贈与税が課されます(相続税法66条4項)。
相続税法施行令33条3項では、税負担が不当に減少しないと認められるための要件として、次の事項が定められています。

  • 運営組織が適正で、役員などに占める親族等の割合を3分の1以下とする旨の定款の定めがあること
  • 出資者や役員、その親族などに特別の利益を与えていないこと
  • 解散時の残余財産が国・地方公共団体などに帰属すると定款で定めていること
  • 法令違反など公益に反する事実がないこと

 
理事長一族が役員の多くを占める医療法人では、親族等の割合に関する要件を満たすことが難しい場合もあります。また、税額は放棄された持分の評価額をもとに計算されるため、内部留保の大きい法人ほど負担も大きくなるおそれがあります。
持分の放棄を合併の前提とする場合は、第4章の認定医療法人制度を使えるかを先に検討しましょう。

3-2 持分を残す合併で割当が財産価値とずれると、出資者の間で贈与があったとみなされることがある

持分あり医療法人同士の吸収合併で持分を残す場合、消滅法人の出資者に割り当てられる持分の価値が、その出資者が合併前に保有していた持分の価値に比べて低くなることがあります。その場合、存続法人の出資者の持分価値が対価なく増え、その増えた分に贈与税が課される可能性があります(相続税法9条)。
反対に割当が多すぎれば、消滅法人の出資者が利益を受けたとされるおそれがあります。
出資者が同じ一族であっても、出資者間の経済的利益の移転が課税上問題になり得る点は変わりません。
持分の割当比率は両法人の資産・負債を評価したうえで決め、算定根拠を記録に残しておきましょう。後日の税務調査で説明する資料になります。

3-3 出資持分の払戻しや非適格合併での割当では、みなし配当による所得税が生じることがある

持分あり医療法人の出資者が退社して持分の払戻しを受けた場合、受け取った金額のうち出資額(税務上の資本金等の額のうち、その出資者に対応する部分)を超える部分は配当とみなされ、所得税がかかります(所得税法25条1項6号)。
また、非適格合併で存続法人の持分の割当を受けた場合も、割り当てられた持分の時価のうち出資額を超える部分がみなし配当となります(同項1号)。

合併で持分なし医療法人になる場合、出資者は合併前に払戻しか放棄かを選ぶことになります。払戻しを選べば、出資者に所得税がかかり、法人の資金も流出します。放棄を選べば、出資者に所得税はかかりませんが、3-1の贈与税が問題になります。

合併に伴って出資持分を整理する際は、出資者の税負担、法人の資金繰り、贈与税の有無をあわせて試算する必要があります。

 

第4章 認定医療法人制度を利用すれば、持分なし医療法人への移行に伴う贈与税を避けられる

4-1 認定医療法人として移行すれば、医療法人への贈与税が非課税になる場合がある

持分あり医療法人が、持分なし医療法人への移行計画について厚生労働大臣の認定を受け、所定の要件を満たして持分なし医療法人へ移行した場合は、出資者の持分放棄に伴う医療法人への贈与税は課されません。この認定を受けた医療法人を「認定医療法人」といいます。
認定医療法人制度では、3-1で解説した親族役員の割合などの要件ではなく、役員報酬が不当に高額にならないよう支給基準を定めることや、社会保険診療等の収入割合が80%を超えることといった、運営に関する要件で判断されます。

一部の出資者だけが放棄し、残る出資者に贈与税がかかる場合も、一定の要件を満たせば納税が猶予され、その後、移行期限までに全員が放棄すれば猶予された贈与税も免除されます。
ただし、認定医療法人は、持分なしへの移行後6年間は運営に関する要件を満たし続ける必要があります。その間に認定が取り消されると、非課税とされていた贈与税が課されるため、移行後の運営体制も含めて検討する必要があります。

4-2 合併と組み合わせる場合は認定を受ける法人と合併の順序に注意する

認定医療法人の認定を受けられるのは、2026年10月現在、令和11年12月31日までです。また、認定日から5年以内に持分なし医療法人への移行を完了する必要があります。

合併と組み合わせる場合に特に注意したいのは、認定医療法人が合併によって消滅すると、認定が取り消されるという点です。認定の取消しによって納税猶予が終了した場合、猶予されていた税金の納付が必要になります。

一方、移行期間中に他の持分あり医療法人を吸収し、持分あり医療法人のまま存続する場合は、合併後に移行計画の変更認定を受けることで制度の利用を継続できます。
合併と持分なしへの移行を両方予定している場合には、どちらの法人が認定を受け、どちらを存続法人とするのか、いつ持分を放棄するのかを、認定の期限から逆算して決めておきましょう。

 

第5章 合併の条件を決める前に、税務上の扱いを専門家と確認する

医療法人の合併で、認可申請や合併契約の準備が進んでから税務を確認すると、非適格合併と分かって想定外の法人税が生じるおそれがあります。また、一部の出資者だけに贈与税がかかり、出資者間の対立につながることもあります。
特に次のような場合は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

  • 理事長一族で持つ複数の医療法人を一本化したいが、適格合併になるか分からない
  • 出資持分の放棄や払戻しを検討しているが、法人と出資者にかかる税金が分からない
  • 合併と認定医療法人制度を組み合わせて、持分なし医療法人に移行したい
  • 相手法人との協議の前に、非適格合併になった場合の税負担を試算しておきたい

 
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士と税理士が連携し、適格合併の判定や税負担の試算から、合併契約の作成、出資者との調整までを一体で支援しています。医療法人の合併をご検討中の場合は、具体的な条件を決める前の段階でもお気軽にご相談ください。

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