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クリニックを閉院したいが借金が残っている場合はどうする?閉院後の返済と院長個人への影響を弁護士が解説

2026.11.02

経営不振が続き、クリニックを閉院したいが借金が残っているので閉院できないのではないかと悩んでいませんか。借金が残っていても閉院すること自体は可能です。ただし、個人クリニックでは、閉院後も原則として院長本人に返済義務が残るため、その整理が必要になります。
本記事では、借金がある個人クリニックを閉院する場合の考え方と、借金の返済が難しい場合の対応、廃業を進める際の注意点を弁護士が解説します。

 

第1章 借金が残っていてもクリニックは閉院できる?

1-1 借金を完済していなくても閉院することはできる

金融機関からの借入金が残っているからといって、完済するまでクリニックを閉院できないわけではありません。医療法上も、診療所を廃止するための条件として借金の完済は定められていません。
そのため、「あと2,000万円借金があるから、返し終わるまで診療を続けなければならない」などと考える必要はありません。むしろ、毎月赤字が発生し、借入金や院長の個人資金で赤字を補填しているのであれば、診療を続けるほど債務が増えることもあります。

1-2 個人クリニックでは閉院後も院長に借金が残る

ただし、クリニックを閉院したからといって、借金が自動的になくなるわけではありません。クリニックを閉院することと、残った借金の返済をどうするかは別の問題です。
個人クリニックは、医療法人のような法人格があるわけではないため、開業資金や運転資金を院長本人が借り入れている場合、その債務を負っているのは院長個人です。
そのため、診療をやめてクリニックの屋号を使用しなくなっても、借入金の残額については引き続き院長に返済義務があります。

 

第2章 クリニックを閉院すると院長にはどのような負担が残る?

2-1 金融機関からの借入金

まず確認すべきなのが、金融機関から借り入れた開業資金や運転資金です。
閉院時に一括返済できるのであれば問題は比較的小さくなりますが、預貯金や医療機器の売却代金などを充てても残債が生じる場合には、その後の返済方法を考えなければなりません。
また、借入契約の内容によっては、廃業や事業の停止について金融機関への報告が必要となる場合があります。閉院後も従来と同じ条件で分割返済を続けられるとは限らないため、借入契約を確認したうえで金融機関との調整を行う必要があります。

2-2 医療機器のローン・リース

CTやMRI、内視鏡、電子カルテなど、高額な医療機器についてローンやリース契約が残っているケースもあります。
ローンで購入した設備であれば、機器を売却して返済に充てられる場合がありますが、担保や所有権留保が設定されていれば自由に処分できないこともあります。
リースの場合はさらに注意が必要です。リース会社が機器を所有しているため、閉院時には返却が必要となることがあり、中途解約に伴う精算金などが発生する可能性もあります。まずは、それぞれの契約内容を確認しましょう。

2-3 テナントの原状回復費

閉院時には、借入金以外にもまとまった支出が発生することがあります。
テナントで開業している場合には、賃貸借契約の解約予告期間や原状回復の範囲を確認する必要があります。医療機器や配管、間仕切りなどを撤去してスケルトン状態に戻す契約であれば、相応の工事費が必要になることもあります。

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2-4 スタッフへの給与・退職金、その他の未払い金

スタッフへの給与や残業代など、退職までに発生する金額も確認する必要があります。退職金制度があるクリニックでは、スタッフが就業規則や退職金規程などの支給要件を満たす場合には退職金の支払いも必要です。また、院長側からスタッフを解雇する場合には、解雇予告手当が発生することもあります。

このほか、医薬品・消耗品の仕入代金や外注費など、閉院後に支払期限を迎える債務が残るケースもあります。
借入金だけでなく、こうした未払い金も含めて閉院時に必要な資金を見積もっておくことが重要です。

 

第3章 借金を返済できるかどうかで閉院後の対応は変わる

3-1 資産などで借金を完済できる場合は通常の閉院手続を進める

院長個人の預貯金だけでなく、閉院後に入金される診療報酬等の未収金、売却できる医療機器、返還を受けられる敷金なども含めて確認し、閉院費用を支払った後でも借金を完済できるのであれば、通常の廃業として進めやすくなります。
ただし、閉院時には支出と入金の時期がずれることがあります。
最終的には資産が債務を上回っていても、手元資金が先になくなれば、給与や原状回復費などを支払えなくなる可能性があるため、資産の総額だけではなく、いつ入金され、いつ支払いが必要になるのかという資金繰りまで確認しておくことが大切です。

3-2 返済を続けられる場合は金融機関と返済方法を調整する

閉院時に借金を全額返済できないからといって、直ちに自己破産をしなければならないわけではありません。
たとえば、閉院後に勤務医として働き、その収入から残債を返済できる見込みがある場合には、返済を続ける方法を検討できます。現在の毎月の返済額では負担が大きい場合には、金融機関に返済期間や返済条件の見直しを相談することも考えられます。
もっとも、返済条件の変更に金融機関が応じるかどうかは個別の判断となります。そのため、金融機関に対し、閉院して収入構造が変わることも含め、今後どの程度の返済が可能なのかを具体的に示して協議する必要があります。

3-3 返済できない場合は個人再生・自己破産などの債務整理を検討する

資産を処分しても多額の借金が残り、勤務医として得られる収入などを考えても返済を続けることが難しい場合には、債務整理を検討します。
将来継続的に収入を得られる見込みがあり、債務額などの要件を満たせば、個人再生を利用できる可能性があります。一方、収入や資産を踏まえても債務を継続的に返済することができず、支払不能の状態にある場合には、自己破産を検討することもあります。

クリニックの開業医が自己破産する場合の医師免許への影響や、個人再生と自己破産の違いについては以下のコラムで詳しく解説しています。

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第4章 借金が残っているクリニックの閉院はどう進める?

4-1 借金・資産・閉院費用を整理する

閉院を考え始めたら、まず現在の財務状況を整理します。
金融機関の借入残高だけを見るのではなく、2章で確認したようなローンやリース、未払金などを含めて今後支払う金額を確認します。同時に、院長個人の預貯金や未収の診療報酬、売却可能な医療機器、返還予定の敷金など、返済や閉院費用に充てられる資産も把握します。

こうした数字の整理は院長自身でもある程度できますが、実際に閉院を進める場合には、顧問税理士などに協力してもらい、閉院までの入出金や税金も含めた資金繰りを確認しておくとよいでしょう。

4-2 返済方法や債務整理の方針を決める

次に、閉院後に借金が残る場合の処理方針を決めます。
返済を継続できるのであれば、必要に応じて金融機関と返済方法を調整し、返済が難しい場合には個人再生や自己破産などの債務整理も検討します。
特に、すでに返済が難しい状況では、一部の債権者だけに多額の返済をしたり、親族へ資産を移したりするなど、自己判断で財産を動かすことは避けた方がよいでしょう。その後に自己破産などを行う場合、破産手続の中で問題となる可能性があるためです。

返済を続けられるのか、債務整理が必要なのかによって、その後の資金の使い方や閉院の進め方も変わります。資金繰りが厳しく、債務整理の可能性がある場合には、閉院費用を支出する前の段階から弁護士に相談し、処理方針を決めておくことが重要です。

4-3 患者・従業員・テナントなどへの閉院対応を進める

債務処理の見通しが立ったら、閉院日を設定し、患者やスタッフ、取引先などへの対応を進めます。
患者については、通院中の方が治療を継続できるよう閉院時期を案内し、必要に応じて他の医療機関への紹介などを行います。診療録についても、医師法上、原則として5年間の保存が必要なため、閉院後の保管方法まで決めておかなければなりません。

スタッフとの雇用関係を終了させる場合には、退職時期や給与・退職金などの支払い、社会保険等の手続を整理します。院長側からスタッフを解雇する場合には、原則として30日前に解雇を予告する必要があります。30日前までに予告できない場合には、30日に不足する日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。たとえば、20日前に予告した場合は、30日に不足する10日分の平均賃金を支払うといった具合です。
従業員が複数いる場合などは、退職や社会保険の手続に漏れがないよう、顧問社労士などに確認しながら進めるとよいでしょう。

テナントについても、賃貸借契約に定められた解約予告期間を確認し、原状回復工事の日程を踏まえて明渡しまでのスケジュールを組みます。

4-4 クリニックの廃止に必要な手続を行う

クリニックの診療を終了した後は、医療機関としての廃止手続も必要です。
医療法では、診療所を廃止した開設者は10日以内に都道府県知事へ届け出ることとされています。実際の提出窓口や様式は自治体によって異なるため、所在地を管轄する保健所などに確認して手続を進めます。

また、保険医療機関の指定を受けている診療所を廃止した場合には、地方厚生(支)局への廃止届も必要です。個人事業の廃業に伴って税務上の届出も行います。税務上どの届出が必要になるかはクリニックの状況によって異なるため、顧問税理士にも確認しておくとよいでしょう。

このほかにも、クリニックの診療内容や取得している指定等によって必要な手続が変わります。閉院日だけを先に決めるのではなく、患者対応、従業員対応、契約終了、行政・税務手続を一つのスケジュールとして組み立てて進めることが大切です。

 

まとめ|閉院を迷っている段階から専門家に相談を

クリニックの経営が厳しくなっていても、返済ができていたり、閉院を決めかねていたりすると、専門家に相談する段階ではないと考えるかもしれません。しかし、資金繰りに余裕があるうちだからこそ、返済を続けながら閉院するのか、金融機関との調整が必要なのか、債務整理まで見据えるべきなのかを比較して検討できます。

また、実際にクリニックを閉院するとなれば、借金の処理だけでなく、スタッフの退職やテナントの明渡し、税務や行政上の手続なども並行して進める必要があります。院長一人でそれぞれの専門家を探し、個別に相談しながら進めることは大きな負担になるでしょう。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・社会保険労務士などが連携し、借金への対応から資金面の整理、スタッフの退職手続までワンストップでサポートしています。このままクリニックを続けるべきか迷っている、閉院したいが借金が心配といった段階でも構いません。今後の選択肢をお一人で検討されているなら私たちにお気軽にご相談ください。

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