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【2026年4月1日施行】医療法改正で何が変わる?病院・クリニックの開業・経営規制とオンライン診療の法制化を弁護士が解説

2026.07.21

2026年4月1日施行の医療法改正により、医療機関の開業・分院展開、保険医療機関の管理者要件、オンライン診療の運用ルールに大きな変更が生じています。特に、これから都市部で新規開業や分院展開を検討している場合や、オンライン診療を行っている場合には、改正のポイントを押さえておく必要があります。

 

第1章 2026年4月1日施行 医療法改正の概要

1-1 医療法改正の背景と主な変更点

2026年4月1日から改正医療法の一部が施行されました。今回の改正の背景には、高齢化に伴う医療ニーズの変化、人口減少、医師の地域偏在、医療DXの推進があります。
これまで行政指導や努力義務、厚生労働省のガイドラインを中心に運用されてきた一部の事項が、法律上のルールとして整理されました。ただし、すべての改正事項が一斉施行されるものではなく、一部は公布日から施行され、その他の規定も時期を分けて段階的に実施されます。

2026年4月1日から施行されたのは、主に、外来医師過多区域における無床診療所への対応強化、保険医療機関の管理者要件・責務に関する規定、オンライン診療に関する規定などです。
そのため、特に、都市部での新規開業や分院展開、それに伴う院長・分院長の選任を予定している場合、また、オンライン診療の実施や検討をしている場合は、注意が必要です。

1-2 医療機関経営者が押さえるべき3つの主要ポイント

医療法改正の内容は広範囲に及びますが、新規開業・分院を検討している場合や、人事、診療手法にかかわる経営面で、以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。

ポイント1|外来医師過多区域における無床診療所の新規開設・分院規制
対象

無床診療所および分院展開を検討する医療法人
外来医師過多区域での無床診療所の開設について、開設前の事前届出制と、地域外来医療への協力要請・勧告への対応

ポイント2|保険医療機関の管理者要件の厳格化
対象

保険医療機関である病院および診療所
院長・分院長などの管理者について、医師免許だけではなく、保険医としての一定年数の従事経験等を求める要件の新設

ポイント3|オンライン診療の法制化
対象

オンライン診療を実施・検討するすべての医療機関
オンライン診療の医療法上の定義、実施手続、受診施設に関するルールの整備と、院内運用・患者説明体制の見直し

それぞれのポイントについて、以下で詳しく確認していきます。

 

第2章 【ポイント1】外来医師過多区域での開業・分院展開における新規規制と実務上の注意点

2-1 外来医師過多区域では無床診療所の新規開設に事前届出が求められる

2026年4月1日施行の医療法改正の中でも、都市部で新規開業を考えている場合や、分院展開を検討している場合に特に確認しておきたいのが、外来医師過多区域における無床診療所の開設手続についての改正です。

外来医師過多区域とは、外来医療を担う医師が多いとされる区域のうち、都道府県が指定する区域をいいます。この区域で無床診療所を新たに開設する場合、2026年4月1日以降、原則として開設日の6か月前までに、都道府県知事への事前届出が必要になりました。

この改正の目的は、外来医師過多区域で新たに開設される無床診療所について、地域で不足している外来医療への協力可能性を開業前の段階で確認することにあります。たとえば、夜間・休日診療、在宅医療、地域の基幹病院との連携などについて、地域の実情に応じた協力が求められる場合があります。
そのため、事前届出の内容を踏まえ、地域外来医療への協力内容が不十分と判断された場合には、都道府県から協議への参加を求められたり、協力の要請・勧告を受けたりする可能性があります。

2-2 要請や勧告に応じない場合、保険医療機関の指定期間短縮のリスクがある

2-1で説明したとおり、外来医師過多区域で無床診療所を開設する場合には、地域外来医療への協力について、都道府県から要請や勧告を受けることがあります。

今回の改正では、この要請や勧告に従わない場合の不利益として、保険医療機関の指定期間を短縮する仕組みも新設されました。具体的には、通常であれば6年間とされる保険医療機関の指定期間について、要請や勧告に従わない場合には、3年以内の期限を付した指定とされるものです。

保険診療収入を前提に事業計画を立てている医療機関にとって、指定期間が短縮されることは大きな経営リスクとなります。直ちに保険診療ができなくなるわけではありませんが、通常より短い期間で再指定の手続を迎えることになり、経営の安定性に影響するためです。

また、新規開業や分院展開では、内装工事や医療機器の導入、人件費などの初期費用を、金融機関からの融資を前提に進めることも少なくありません。指定期間の短縮や、要請・勧告に従っていないという事情がある場合には、金融機関との協議においても、その背景や今後の対応方針を説明する必要が生じる可能性があります。

2-3 物件契約や融資申込みの前に開業予定地の法規制の確認が必要

このように本改正によって、外来医師過多区域における無床診療所の新規開設や分院展開は、従来よりも事前確認の重要性が高まっています。

新規開設や分院展開を予定している場合、まずは開業予定地が都道府県の医療計画において外来医師過多区域に該当しているかどうかを確認する必要があります。該当する場合には、地域外来医療への協力として行政がどのような協力を求めてくるのか、医療計画や行政の公表資料、ガイドラインなどを踏まえて検討し、事前に整理しておくことが望まれます。

実務上、避けるべきなのは、先に不動産賃貸借契約を締結し、手付金の支払いや内装設計の発注、医療機器の売買契約まで進めた後で、外来医師過多区域における要請や指定期間短縮のリスクに直面することです。この段階で計画の変更や撤退を余儀なくされると、違約金や初期投資の回収不能など、大きな負担が生じる可能性があります。

そのため、物件契約や融資申込みを進める前に、開業予定地の規制状況、必要な行政手続、地域外来医療への協力方針を確認しておくことが重要です。開業準備の初期段階でこれらを整理しておくことで、後から計画変更を迫られるリスクを抑えやすくなります。

 

第3章 【ポイント2】保険医療機関の管理者要件の厳格化と院長・分院長人事への影響

3-1 保険医療機関の管理者には保険医としての経験等が求められる

2026年4月1日施行の改正では、保険医療機関の管理者についても、要件と責務が明確化されています。
保険医療機関の管理者とは、実務上、院長や分院長にあたる立場の医師を指します。

これまでは、保険医療機関の管理者について、保険医としての従事経験年数を法律上の要件として確認する仕組みはありませんでした。そのため、極端な例をあげれば、初期研修を終えたばかりの若い医師であっても、医師免許さえあれば診療所の管理者として行政に届け出ることができ、院長に就任することも法的に可能でした。
しかし、本改正により、保険医療機関である病院やクリニックの管理者について、単に医師免許を所持していることだけでは足りず、保険医として一定年数の従事経験を有すること等が要件として定められました。

具体的には、2026年4月1日時点で臨床研修を終えていない医師については、臨床研修修了後、原則として病院において3年以上、保険診療に従事した経験が必要とされます。一方、2026年4月1日時点で臨床研修を終えている医師については、臨床研修期間を含め、病院または診療所において3年以上、保険診療その他管理及び運営に関する業務に従事した経験が求められます。

ただし、地域枠医師、専門医資格、公務員としての勤務経験、緊急承継など、一定の場合には別の要件や配慮が設けられています。また、すでに2026年4月1日時点で管理者である場合には、経過措置の対象になる可能性があります。

3-2 分院展開では若手医師をそのまま管理者にできない場合がある

医療法人が分院を立ち上げる場合、医療法上、それぞれの診療所に管理者を配置しなければなりません。
従来の分院展開においては、法人の理事長や本院の院長が全体を統括し、新しく開設する分院の院長には、若手の医師や、新しく雇用した勤務医を就任させるケースもありました。

しかし、今回の改正により、分院長に配置しようと検討していた医師が、保険医としての一定年数の従事経験などの管理者要件を満たしていない場合、厚生局への保険医療機関指定申請や管理者変更手続の段階で、予定通りに手続が進まない可能性があります。

そのため、今後、新たな管理者の採用を検討する場合は、診療経験や専門性だけでなく、改正後の管理者要件を満たしているかという観点からも採用候補者の経歴を確認する必要があります。

 

第4章 【ポイント3】オンライン診療の法制化と求められるコンプライアンス対策

4-1 オンライン診療は医療法上のルールに従った運用が求められる

これまで、スマートフォンやタブレットなどを活用したオンライン診療については、医療法に明確な定めがなく、主に厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」などを前提に運用されてきました。

今回の改正により、オンライン診療が医療法上の制度として定義され、実施にあたって必要となる手続や、医療機関が遵守すべき基準が法律上の枠組みとして整理されました。
これにより、オンライン診療は、医療法上のルールに従って実施すべき診療方法として位置づけられたことになります。

今後は、本人確認や診療の適応判断、患者への説明、診療録への記録、プライバシー保護などについて、従来以上に慎重な運用が求められます。医療法に新設された規定と整合しない形でオンライン診療を行った場合、行政指導や是正対応の対象となる可能性があります。運用の内容や違反の程度によっては、報告徴収や立入検査などの行政対応につながるリスクもあるため、法令やガイドラインに沿った体制整備が不可欠となっています。

4-2 オンライン診療受診施設との連携では契約関係の整理が重要

今回の改正では、オンライン診療の定義が明確化されただけでなく、オンライン診療を受ける場所を提供する施設に関する規定も整備されています。

具体的には、患者が自宅以外の場所でオンライン診療を受ける場合の施設について、新たに規定が整備されました。地域の公民館や郵便局、商業施設内に設置された個室ブースなどで、情報通信機器を用いて医師の診察を受ける「オンライン診療受診施設」の活用が想定されており、これらの施設に関する手続や、オンライン診療を行う医療機関側の確認事項などが法的に整理されています。

これにより、医療機関としては、自院の診療所内だけでなく、外部のオンライン診療受診施設と連携してオンライン診療を提供する方法も検討しやすくなります。たとえば、通院が難しい患者や、医療機関へのアクセスが限られる地域の患者に対して、オンライン診療受診施設を活用した診療体制を整えることも考えられます。

しかし、こうしたオンライン診療受診施設と連携して診療を行うにあたっては、事業者間での複雑な法務・契約関係を整理する必要があると考えられます。たとえば、施設の設備管理責任はどちらが負うのか、通信トラブル等により患者の状態把握が十分にできなかった場合の損害賠償責任の帰属はどうなるのかといった問題です。
そのため、オンライン診療受診施設を活用したオンライン診療を検討する場合には、従来の診療所運営とは異なる観点から、契約書の作成やリーガルチェックを行っておくことが重要です。

4-3 院内ルールと患者説明の内容を法改正後の基準に合わせる

オンライン診療が医療法上の制度として位置づけられた以上、医療機関としては、これまでの運用が現在の法令やガイドラインに適合しているかを改めて確認する必要があります。特に、情報セキュリティ、個人情報保護、患者への説明同意の手順については、院内マニュアルや各種書式を見直しておくことが重要です。

情報セキュリティ|通信環境や利用端末の管理体制の確認

オンライン診療では、患者の顔画像をはじめ、病歴や検査結果などがインターネットを通じてやり取りされます。そのため、通信環境、ID管理、アクセス権限、録画・録音データの取扱いなどについて、システム事業者任せにせず、医療機関側の院内ルールとして整理しておく必要があります。

個人情報保護|患者情報の取得・保存・共有ルールの明確化

オンライン診療で取得する患者の個人情報の取り扱いにも注意が必要です。診療に必要な問診内容や本人確認書類、決済情報などをWebフォームや予約システム上で取得する場合には、利用目的、外部事業者等への共有範囲を整理し、プライバシーポリシーや同意書、予約画面の記載と矛盾がないように整えておくことが重要です。

患者への説明同意|オンライン診療の限界と緊急時対応の事前説明

対面診療と異なり、オンライン診療は触診や聴診ができないなど診療上の限界があります。そのため、患者に対して、オンライン診療で対応できる範囲、対面診療が必要になる場合、緊急時の受診方法、費用やキャンセルの取扱いなどを事前に説明し、同意を取得しておく必要があります。

なぜ医療機関において契約書が重要なのか?

 

第5章 医療法改正を踏まえたクリニック経営の見直しを

今回の医療法改正は、対応を誤ると、希望エリアでの開業計画の見直しや、管理者要件を満たす医師を確保できないことによる分院開設の遅れなど、医療機関の経営計画に大きな影響を及ぼすリスクをはらんでいます。しかし、改正内容を正確に把握し、その対応を多忙な医師や医療法人だけで行うことには限界があると思います。
このような場面でこそ、専門家の活用を検討してみてください。
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