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自由診療の契約書・同意書はどこまで必要?クリニックが整備すべき書類と注意点を弁護士が解説

2026.06.12

クリニックで自由診療を提供する場合、治療の内容や期待できる効果だけでなく、リスクや副作用についても患者に分かりやすく説明し、患者の同意を得た事実を残すことが重要です。あわせて、費用負担や中途解約時の取り扱いなども、患者との認識にずれが生じないよう事前に書面化しておく必要があります。本記事では、自由診療の契約書・同意書で整備すべき内容を弁護士が解説します。

 

第1章 自由診療では契約書・同意書だけで足りるのか

1-1 自由診療では同意書だけでは不十分なケースがある

自由診療では、患者が治療内容やリスクを理解しているかという問題だけでなく、費用や契約面での問題からトラブルになることがあります。
このようなトラブルを防ぐには、医療上の説明と患者の同意意思を確認する同意書だけでなく、治療内容やリスクを事前に十分説明できるだけの資料を併せて整備することが重要です。

1-2 自由診療を行う際に整備すべき書類の全体像

自由診療を提供する際に整備すべき書類は、診療内容や料金体系によって異なりますが、ベースとしては次のような書類を整備することが一般的です。

書類 主な役割
説明文書・治療説明書 治療内容、効果、リスク、副作用、代替療法を説明する
同意書 患者が説明を受け、理解し、同意したことを残す
料金表・見積書 費用総額、追加費用、支払条件等を明確にする
契約書・申込書 施術内容、回数、期間、支払、解約、返金等を定める
キャンセル・返金規程 キャンセル料、中途解約等の扱いを定める
説明記録 誰が、いつ、何を説明したかを診療録と一体で残す

 

第2章 自由診療の同意書と契約書の違い

2-1 同意書は医療行為への同意を確認する書類

自由診療の同意書は、患者が治療内容やその効果、リスクや副作用、代替療法などについて説明を受け、その内容を理解したうえで治療を受けることに同意したことを確認する書類です。
厚生労働省の診療情報提供に関する指針でも、代替的治療法がある場合には、その内容や利害得失を説明すること、手術や侵襲的検査を行う場合には、その概要だけでなく実施時及び実施しない場合の危険性、合併症の有無等を説明することなどが示されています。

2-2 契約書は費用・支払・解約条件を明確にする書類

これに対して、自由診療の契約書は、費用や契約条件を明確にするための書類です。
契約書では、診療や施術後にトラブルが発生してしまった場合の根拠資料として使うということを想定し、施術内容だけでなく料金部分(キャンセル料含む)、解約時の取り扱いや精算条項なども網羅的に入れ込む必要があります。

2-3 同意書と契約書は役割を分けて考える

実務上、同意書と契約書を1つの書面にまとめることもあります。しかし、医療上のリスク説明と、費用・支払・返金条件の説明が混ざると、説明漏れや認識の違いが起こりやすくなります。
特に、高額な自由診療や継続型のコースでは、同意書と契約書を分ける、または1つの書面にまとめる場合でも章立てを明確に分けることが望ましいです。
同意書は「治療内容を理解したうえで治療を受けることへの同意」、契約書は「費用や解約条件への合意」を確認する書類です。この違いを意識して整備することが、後日のトラブル予防につながります。

 

第3章 自由診療の説明文書・同意書に記載すべき内容

3-1 治療内容・施術内容を具体的に記載する

自由診療の説明文書や同意書では、まず、どのような治療を行うのかを具体的に記載します。
記載例)施術名、治療の目的、対象となる症状、治療方法、使用する薬剤・医療機器、治療期間、術前・術後の注意点など。

「美容治療一式」「点滴療法一式」のような抽象的な表現では、患者が何に同意したのかが不明確になります。クリニック側としても、後から説明内容を証明しづらくなるため、自由診療の同意書はメニューごとに作成することが望ましいです。

3-2 期待できる効果と限界を記載する

自由診療では、患者が効果に期待して来院することが多いため、説明文書や同意書には、効果には個人差があること、治療結果を保証するものではないことは明記をしておいたほうが望ましいほか、複数回の治療が必要になる場合があるのであればそれも記載の上で施術前に説明しておいたほうがよいでしょう。

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3-3 リスク・副作用・合併症を具体的に記載する

よくある副作用だけでなく、頻度は低くても重大なリスクについても記載します。
たとえば、施術後の腫れや痛み、内出血のように比較的起こり得る反応だけでなく、感染、アレルギー、色素沈着、瘢痕、神経障害など、頻度は高くなくても患者の判断に影響するリスクについても説明しておく必要があります。また、期待した仕上がりにならない可能性がある治療では、その点も事前に伝えておくべきです。
「副作用はほとんどありません」「安全な治療です」といった表現だけでは、十分な説明とはいえません。治療ごとに、実際に起こり得るリスクを整理し、患者が理解できる言葉で記載する必要があります。

3-4 代替療法・治療しない選択肢・費用を記載する

診療を受けるかどうかを患者が判断するためには、その治療以外にどのような選択肢があるのかも重要です。保険診療で対応できる可能性がある場合や、他の治療方法を検討できる場合には、その点も事前に説明しておいた方がよいでしょう。また、治療を受けなかった場合にどのような経過が想定されるのかについても、必要に応じて伝えておくことが望ましいです。
費用についても、患者が最終的にどの程度の負担になるのかを理解できるようにしておく必要があります。施術そのものの費用だけでなく、事前検査や薬剤の使用、麻酔、術後の診察・処置、追加施術などによって費用が変わる可能性がある場合には、その内容を施術前に分かりやすく説明しておくことが重要です。

 

第4章 自由診療の契約書・申込書に記載すべき内容

4-1 施術内容・契約対象を明確にする

まずは契約の対象を明確にします。
自由診療では、同じクリニック内でも複数のメニューやコースが用意されていることがあります。そのため、契約書や申込書では、対象となる施術内容、施術を行う範囲、何回分の治療をどの期間内に受けるのかを明確にしておくことが重要です。
特にコース契約の場合は、契約時点で患者が「何回分のどのような施術を受けられるのか」「いつまでに利用しなければならないのか」「未消化分が残った場合にどう扱われるのか」などについてを確認できるようにしておく必要があります。

4-2 料金・支払方法・追加費用を明確にする

料金総額と内訳についても明確にしておきます。
施術費だけを記載するのではなく、支払うタイミングや支払方法、分割払いや医療ローンを利用する場合の条件も含めて、患者が契約前に確認できるようにしておくことが重要です。
また、別途費用が発生する可能性がある場合には、「別途費用がかかる場合があります」という抽象的な記載ではなく、どのような場面で追加費用が発生するのか、患者が具体的にイメージできるように整理しておく必要があります。

4-3 キャンセル・中途解約・返金のルールを定める

自由診療では、キャンセルや中途解約をめぐるトラブルも少なくありません。
そのため、契約書や申込書において、予約をキャンセルした場合の扱いだけでなく、患者の都合で通院を途中でやめる場合や、医師の判断で治療を中止する場合に、未消化分をどのように精算するのかを定めておく必要があります。
ただし、「いかなる場合も返金しません」「当院は一切責任を負いません」といった表現は推奨されません。そのように記載するだけで直ちに認められるものではなく、契約内容、施術の進行状況、消費者保護法制との関係で、有効性が問題になる可能性があるためです。
返金規程は、提供済みの役務、未提供分、実際に発生する損害、特商法の適用可能性などを踏まえて慎重に設計する必要があります。

4-4 合併症や副作用が出た場合の対応を定める

治療後に副作用や合併症が出た場合の対応も整理しておくべきです。
合併症が発生した場合に、すべてを無料対応にする必要があるとは限りません。ただし、どの範囲を通常の術後対応とし、どの範囲から追加費用が発生するのかが不明確だと、患者との認識のずれが生じやすくなります。治療後の診察や処置をどの範囲まで含めるのか、追加対応が必要になった場合の費用負担をどう考えるのかについて、事前に分かりやすくしておく必要があります。

 

第5章 美容医療・コース契約・未承認薬では追加対応が必要になる

5-1 美容医療やコース契約では特商法対応が必要になる場合がある

美容医療のコース契約や前払い契約では、特定商取引法の特定継続的役務提供に該当する可能性があります。
特定継続的役務提供とは、特定商取引法上、政令で定められた一定の役務を、一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価で提供する取引をいいます。美容医療についても、対象となる役務に該当し、かつ期間が1か月を超え、金額が5万円を超える場合には、特定継続的役務提供に該当する可能性があります。たとえば、医療脱毛の複数回コースなどが考えられます。
該当する場合には特定商取引法の義務として、契約締結前の概要書面と契約締結後の契約書面を交付するとともに、クーリング・オフ、中途解約、関連商品の扱いなどを踏まえた書面整備が必要です。

5-2 未承認医薬品等・適応外使用では説明項目が増える

自由診療では、国内で承認されていない医薬品・医療機器を使う場合や、承認された効能・効果、用法・用量とは異なる使い方をする場合があります。また、個人輸入等により入手した医薬品等を使用するケースもあります。
このような場合、通常の同意書だけでは説明が不足する可能性があります。使用する医薬品等が国内で承認されたものかどうか、どのような経路で入手されたものか、国内に同じ目的で承認されている医薬品等があるのかなどを分かりやすく説明しておく必要があります。

 

第6章 書類を作るだけでなく、説明と記録の運用も整える

6-1 医師が説明すべき内容とスタッフが補助できる内容を分ける

自由診療では、カウンセラーや受付スタッフが患者に説明する場面もあります。
料金や予約、支払方法、来院時の流れなど、事務的な説明をスタッフが補助することは、実務上よくあります。一方で、患者にどの治療が適しているのか、どのようなリスクがあるのか、どの治療方針を選択すべきかといった医学的判断に関わる部分は、医師が説明・確認すべき事項です。
そのため、説明フローを作る際は、スタッフが説明できる範囲と、医師が必ず説明・確認すべき範囲を分けておくことが重要です。

6-2 即日施術では患者の希望と熟慮時間を記録する

美容医療などでは、カウンセリング当日に契約し、そのまま施術を行うことがあります。
ただし、即日施術はトラブルになりやすい場面です。即日施術の必要性が医学上認められない場合には、即日施術を強要すること等は慎むべきであり、やむを得ず患者が希望する場合でも、十分な説明と熟慮時間を設けた上で実施しなければならないとされています。
即日施術を行う場合は、患者が自発的に希望したこと、説明内容や質問への対応、施術を受けるかどうかを考える時間を確保したこと、医師が最終確認を行ったことを記録に残す運用が必要です。

6-3 説明文書・同意書・契約書・診療録を一体で管理する

後日トラブルになった場合に重要なのは、書類の有無に限りません。
誰が、いつ、どの資料を使って、何を説明し、患者からどのような質問があったのかが確認できることが重要です。そのためには、説明文書や同意書、契約書だけでなく、見積書や料金表、返金に関するルール、説明時の記録などをばらばらに管理するのではなく、後から一連の経緯を追える形で整理しておく必要があります。
書式の作成だけでなく、説明・記録・保存の運用まで一連で設計しておきましょう。

 

第7章 自由診療の契約書・同意書を弁護士に確認してもらうべきケース

7-1 すべての自由診療で弁護士確認が必須というわけではない

自由診療の契約書・同意書は、必ずしもすべてのケースで弁護士に作成を依頼しなければならないわけではありません。
たとえば、比較的低額・単発の自由診療で、治療内容も比較的シンプルであり、未承認薬や適応外使用の問題がなく、コース契約や前払い、高額なキャンセル料などが発生しない場合には、院内で説明文書や同意書を整備して運用しているケースもあります。

7-2 弁護士確認が必要になりやすい自由診療メニュー

一方で、次のような自由診療では、契約書・同意書を院内の判断だけで作成するのは慎重に考えるべきです。
たとえば、以下のような場合は、特定商取引法や未承認薬に関する説明事項など、通常の同意書だけでは足りない規制対応が問題になりやすいです。

  • 美容医療でコース契約や前払い契約を行う場合
  • 未承認医薬品等、適応外使用、個人輸入等により入手した医薬品等を使う場合

上記のような自由診療を扱う場合は、契約書・同意書だけでなく、料金表や説明フローも含めて弁護士への確認を検討するのが安心といえます。

7-3 迷う場合は、リスクが高い部分だけでもリーガルチェックを受ける

リスクが高い部分だけを優先してリーガルチェックする方法もあります。
すべての書類をゼロから作成してもらう場合に比べて、費用を抑えながら必要な修正点を把握しやすくなりますし、弁護士の確認を受けておくことで不安を減らし、クリニック側も患者に対して説明しやすくなります。
特に、返金条件、未承認薬の説明、コース契約の中途解約など、院内だけでは判断に迷いやすい部分だけでも確認しておく意味は大きいでしょう。
さらに、契約書や同意書の整備段階から弁護士が関与していれば、万が一患者とのトラブルが発生した場合にも、どのような治療内容で、どのような説明書類を使い、どのような運用を想定していたのかを把握してもらいやすくなります。

 

第8章 自由診療の契約書・同意書はトラブル前に整備する

医療現場では、問題が起きる前に、リスクを想定して備えることの重要性をよく理解されていると思います。契約書・同意書も同じです。患者との認識のずれを防ぎ、安心して自由診療を提供するためには、契約面の備えも欠かせません。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士を中心に各士業が連携し、自由診療の書類整備やリーガルチェックをサポートしています。専門的な対応が必要な場合は、お気軽にご相談ください。

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