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【宿泊業向け】外国人雇用で失敗しないための注意点とは?在留資格の確認から労務管理まで弁護士が徹底解説

2026.03.11

人手不足が深刻化する中、宿泊業でも外国人雇用への関心が高まっています。しかし、在留資格ごとの業務範囲、受入企業の義務、雇用後の労務管理体制を正しく理解していなければ、意図せず法令違反に至るリスクも否定できません。本記事では、宿泊業の経営者・人事責任者が押さえるべき外国人雇用の注意点を、在留資格と労務管理の両面から体系的に解説します。

もくじ

第1章 宿泊業における外国人雇用の現状と主な在留資格

1-1 なぜ宿泊業で「特定技能」が注目されているのか

人手不足に直面している宿泊業界において、2019年に創設された在留資格「特定技能」は大きな転換点となりました。それまでの在留資格、とりわけ「技術・人文知識・国際業務」は、大学での専攻内容との関連性が求められる専門職向けの制度であり、宿泊業においても企画や通訳、マーケティングなどの専門的業務が中心でした。そのため、客室清掃や料飲サービスといった現場業務を主たる職務とする就労には一定の制約がありました。
これに対し、特定技能(宿泊)は、技能試験および日本語試験に合格した人材が、宿泊サービスの現場業務に従事することを前提とした制度です。フロント業務、接客、レストランサービスなど、宿泊施設の実務を幅広く担うことが可能であり、現場の人手不足への直接対応が期待できる制度設計となっています。
なお、特定技能には「1号」と「2号」の区分がありますが、宿泊分野で現在広く活用されているのは主に特定技能1号です。

1-2 「技術・人文知識・国際業務(技人国)」と「特定技能」の違い

宿泊業で最も混同されやすいのが、従来からある在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」と「特定技能」の使い分けです。
「技人国」は大学等での専攻内容を活かす専門的・学術的な業務を対象としています。そのため、翻訳・通訳、海外予約対応、マーケティングなどが主業務である必要があり、客室清掃やレストランの配膳といった現場実務がメインとなる場合は、入管法違反と判断されるリスクや、更新時に不許可となる可能性が生じます。
一方、「特定技能」は、一定の技能試験と日本語試験に合格した者が、現場実務を含めた幅広い業務に就くことを想定した制度であり、宿泊業界の現場ニーズに即した設計がなされています。

1-3 アルバイト採用(留学生)における「資格外活動許可」のルール

留学生を雇用する際は、必ず在留カードの裏面で「資格外活動許可」の有無を確認しなければなりません。そのうえで、就労時間は原則週28時間以内と定められており、長期休業期間中のみ1日8時間以内まで拡大されます。
この時間を超過すれば、留学生本人は不法就労として退去強制の対象になり得ますし、雇用主側も「不法就労助長罪」に問われるおそれがあります。本人任せにせず、企業側が正確なシフト管理体制を構築することが、コンプライアンス遵守の基本となります。

第2章 特定技能(宿泊)を導入する際の実務上の注意点

2-1 従事可能な業務範囲と「付随業務」の許容限度

特定技能(宿泊)の外国人は、フロントや接客などの主業務に加え、日本人が通常従事する付随業務にも従事できます。付随業務には客室清掃、館内売店での販売、備品の補充などが含まれます。
ただし、注意が必要なのは「付随業務のみ」を専ら行うことは認められないという点です。あくまで宿泊サービスの提供という主業務に関連する範囲でなければならず、実態が清掃専属となっているような場合は、入管法違反とみなされる可能性があります。

2-2 受入企業(特定技能所属機関)に課される義務

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、主に以下の義務が課されます。

  • 外国人との雇用契約を適正に履行すること
  • 適切な支援体制(事前ガイダンス、生活支援等)を構築すること
  • 出入国在留管理庁への定期的な届出(四半期に一度)を行うこと
  • 日本人と同等以上の報酬額を担保すること
  • 適切な社会保険への加入を徹底すること

例えば、特定技能外国人とは3か月に1回以上の定期面談を実施し、その記録を保存することが求められています。また、支援計画書の作成や生活オリエンテーションの実施も義務の一部に含まれます。これらの義務を怠った場合、改善命令の対象となるほか、制度上の認定取消や受入停止等の措置が講じられる可能性があります。

2-3 登録支援機関への委託と自社支援の判断基準

特定技能外国人の支援計画(出入国の際の送迎、住居確保の補助、日本語学習の機会提供など)は多岐にわたります。これらを自社ですべて行う(自社支援)ことも可能ですが、それには「過去2年間に中長期在留者の受け入れ実績があること」や「支援責任者・担当者の選任」などの要件を満たす必要があります。
多くの宿泊施設では、これらの事務負担を考慮し、外部の登録支援機関に支援を委託しています。委託費用のコストと社内リソースの負荷を比較検討し、自社に適した体制を選択する必要があるでしょう。

第3章 不法就労を未然に防ぐための在留資格確認フロー

3-1 在留カードの確認と有効期限の管理方法

採用選考の際には、在留カードの原本確認が不可欠です。近年は精巧な偽造カードも存在するため、出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会サイトなどを活用し、カードが有効なものであるかの確認をフローに組み込んでおくことが望ましいでしょう。
また、有効期限の管理も極めて重要です。在留期限が切れた状態で就労させれば、過失であっても不法就労とみなされるおそれがあるため、アラート機能などを活用した厳格な管理が必要といえます。

3-2 「指定書」の確認が必要なケースとその見方

特定技能などの在留資格の場合、在留カードの表記だけでは具体的な就労条件が判断できません。その際は、パスポートに貼付されている「指定書」を必ず確認してください。
指定書には、就労が認められる具体的な企業名や職種が記載されています。
中途採用のケースなどで、前職の企業名が記載された指定書のまま自社で働かせることは原則としてできません。
指定書に前職の企業名が記載されている場合には、当該在留資格に応じた変更申請が必要となるのが通常です。就労開始前に、出入国在留管理庁に対し、在留資格変更許可申請や指定書の変更申請など、当該在留資格に応じた適切な手続を行い、新たな就労先として適法に活動できる状態にしておく必要があります。

3-3 不法就労が発生した場合の企業のリスクと罰則

万が一、自社で不法就労が発生した場合、雇用主は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。これには3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されるという重い罰則が定められています。
「在留資格があると思っていた」という主観的な認識だけでは不十分であり、確認を怠った過失があると判断されれば、処罰の対象となるおそれがあります。刑事罰に加え、今後一定期間にわたり外国人の受け入れが制限されるなど、経営上の大きな制約が生じるリスクを認識しておくべきでしょう。

第4章 採用後に直面する労務管理と社会保険の注意点

4-1 日本人と同等以上の報酬額を維持するための賃金設計

外国人雇用において、入管庁が審査する項目の一つに「日本人との報酬同等性」があります。同じ業務に従事する日本人従業員がいる場合、その賃金体系と比較して不当に低くなっていないか、客観的な根拠を持って説明できる状態にしておくことが望ましいでしょう。この同等性は基本給だけでなく、賞与や各種手当を含めた総支給額ベースで判断される点にも注意が必要です。
年齢や勤続年数に基づいた賃金規定がある場合は、外国人のこれまでの経歴をどのように評価し、どの等級に格付けしたかを明確にする必要があります。
不透明な賃金設計は、在留資格の更新時に合理的な説明が困難になるだけでなく、労働法上のトラブルを招く要因にもなり得ます。

4-2 労働時間管理と残業代未払い問題の予防策

労働基準法は、原則として国籍を問わず日本で働くすべての労働者に適用されます。外国人従業員から「より多くの収入を得たい」という希望があった場合でも、36協定の範囲を超えた時間外労働や、法定休日・休憩時間の未付与は認められません。
特に未払い残業代の問題は、帰国や転職を機に表面化するケースも想定されます。1分単位での正確な勤怠管理を行い、実労働時間に基づいた適切な給与支払いを継続することが、事後の紛争リスクを抑えるための基本と考えられます。

4-3 社会保険・労働保険への加入義務と外国人特有の制度

社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険・労災保険)への加入は、日本人従業員と同様の適用基準で義務付けられています。保険料負担を理由に加入を回避することは、法令遵守の観点から避けるべきです。
一方で、将来日本を離れる予定の外国人従業員のうち、一定の条件を満たす者については、納付した年金保険料の一部が戻る「脱退一時金」などの制度が存在します。
こうした外国人特有の制度についても会社側が正しく理解し、丁寧に説明を行うことで、適正な加入に対する従業員の納得感を得やすくなることが期待できます。

第5章 法令違反・現場トラブルを未然に防ぐための職場環境整備

5-1 文化・宗教の違いを反映した就業規則の適正化

画一的な就業規則では、外国人雇用において現場の摩擦を十分にカバーできないケースが想定されます。
例えば、礼拝時間の確保や特定の食品に対する忌避など、宗教的・文化的な背景への配慮をどの程度認めるのか、あらかじめ服務規律として整理しておくことが望ましいでしょう。
また、慶弔休暇の対象となる親族の範囲を明確に定めるなど、個別の事情を考慮しつつ日本人従業員との公平性を保つ規定を整備することは、組織の規律を維持し、無用な不公平感を生ませないための有効な手立てとなり得ます。
もっとも、業務の遂行に重大な支障が生じる場合まで無制限に配慮義務が生じるわけではなく、合理的配慮の範囲で調整するという視点が重要です。

5-2 損害賠償請求に発展するリスクを回避するハラスメント相談窓口の多言語対応

言葉や文化の壁から生じるコミュニケーションの齟齬が、意図せずハラスメント問題に発展するケースが見受けられます。
被害を受けた従業員が言葉の壁によって社内で適切に相談できず、外部機関や裁判所を通じて直接訴え出る事態になれば、企業は安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を受けるリスクにさらされます。
多言語対応の相談窓口を設置し、初期段階で事実関係を把握できる体制を整えることは、こうした紛争の深刻化を未然に防ぐための重要な防衛策と考えられます。

5-3 過料・罰則の対象となる「雇用状況届出」の提出漏れと不適切な労働時間管理

外国人を雇用・離職させた際のハローワークへの「外国人雇用状況届出」は法律上の義務であり、これを怠ったり虚偽の申告を行ったりした場合には、30万円以下の過料の対象となるおそれがあります。
また、前述の労働時間管理についても、適切な運用がなされていないと判断されれば、是正勧告や企業名の公表といった制裁を招くきっかけになり得ます。事務的な手続きの「うっかり漏れ」が、企業の社会的信用を損なう要因となり得ることを認識し、管理体制を強化することが求められます。

第6章 【FAQ】宿泊業の外国人雇用に関するよくあるご質問

Q1.  特定技能に必要な「試験」とは何ですか?免除されるケースはありますか?

A1. 日本語と宿泊実務の試験がありますが、過去の経歴により免除される場合があります。

特定技能(宿泊)の資格を得るには、原則として「日本語能力」と「宿泊実務の技能」を確認する2つの試験に合格する必要があります。ただし、過去に「技能実習2号(宿泊職種など)」を良好に修了した外国人の場合、これらの試験が免除される仕組みがあります。他業種(例:農業や建設)の技能実習を修了した方の場合は、日本語試験は免除されるのが一般的ですが、宿泊業の技能試験には合格しなければならないといったルールがあります。採用候補者の過去の在留資格や職歴によって免除の範囲が異なるため、詳細な確認が推奨されます。

Q2. 特定技能外国人の住居費を、給与から控除してもよいでしょうか?

A2. 事前の合意と適正な額の設定があれば、控除できると考えられます。

住居費を給与から天引き(控除)するには、あらかじめ労使協定の締結(労基法24条)および本人との合意が必要とされています。その際の控除額は、本人が住まいとしている家賃等の実費を超えない範囲で設定することが望ましいでしょう。実費を著しく上回る額を控除していると判断された場合、報酬同等性の観点から入管庁より是正を求められる可能性が否定できません。

Q3. 採用予定の外国人が、すでに他社で資格外活動許可を得ている場合は?

A3. 自社での雇用にあたって、改めて許可内容や条件の確認が推奨されます。

留学生などの資格外活動許可は、個別の企業ごとに与えられるものではなく、包括的に与えられているのが一般的です。ただし、採用候補者が前職のアルバイトを辞めた後も、学校への通学など在留資格に応じた本来の活動を継続しているかを確認することは非常に重要です。もし既に学校を退学しているような場合、在留資格そのものが取り消しの対象となっている可能性があり、そのまま働かせると不法就労とみなされるおそれがあるためです。また、他社との兼業がないか、合計の労働時間が週28時間以内に収まっているかも併せて確認しておくべきでしょう。

Q4. 外国人の家族を「家族滞在」の在留資格で呼び寄せることはできますか?

A4. 特定技能や留学の資格で就労する場合、原則として家族の帯同は認められません。

特定技能1号や留学の在留資格では、配偶者や子の帯同は原則として認められていません。一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの専門的な在留資格や、将来的に特定技能のより上位の区分(特定技能2号)へ進んだ場合であれば、一定の条件のもとで家族帯同が認められる可能性があります。

Q5. 海外の求職者とオンライン面接だけで採用を決めても問題ないでしょうか?

A5. 制度上の制限はありませんが、本人確認等の慎重な精査が望まれます。

オンライン面接のみで採用を決定すること自体に法令上の直接的な制限はありません。しかし、入管への申請書類作成の過程で、経歴の齟齬や書類の不備が判明するケースも想定されます。対面での面接が困難な場合でも、現地エージェント等を通じた多角的な情報収集を行い、本人確認を徹底することが、採用後のミスマッチやトラブルを防ぐ一助となります。

第7章 外国人雇用体制の構築に向けて

宿泊業における外国人雇用は、単なる人手不足の解消に留まらず、インバウンド対応の強化や組織の活性化など、多くの可能性を秘めています。しかし、そのためには入管法と労働法という、性質の異なる二つの法律を高いレベルで遵守しなければなりません。
まずは自社の在留資格管理、雇用契約書、そして就業規則が、最新の法令に適合しているか見直すことから始めましょう。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人、税理士法人、司法書士法人が一体となった士業法人グループです。外国人の在留許可申請から、就業規則の整備、給与計算、さらには万が一の紛争対応まで、中小企業の経営課題をワンストップで解決できる体制を整えています。外国人雇用に関する不安や疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽に私たちへご相談ください。貴社の持続的な成長を、法務・労務の両面からサポートいたします。

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