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問題社員を解雇するためにはどうすればよい?|社内トラブルを未然に防ぐ対処法を弁護士が解説

2025.03.20

「社員同士のトラブルを繰り返して職場の雰囲気を悪化させている」「業務命令に従わない・勤務態度に問題がある」――いわゆる問題社員への対応に悩む経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
実際に「解雇したい」と思っても、不当解雇とみなされるリスクや企業イメージの低下など、多面的なリスクが伴います。
そこで本記事では、労務分野に強みを持つ当事務所の視点から、問題社員を解雇するうえで知っておくべき法的ルールや実務対応のステップをわかりやすく解説します。
どのように対処すれば大きなトラブルを回避できるのか、解雇が本当に有効となるのか、ご不安な方はぜひ最後までお読みいただき、当事務所の無料相談もご活用ください。

もくじ

1. 問題社員とは何か?基本的特徴とトラブル事例

1-1. 典型的な問題社員の行動パターン

企業内部で「問題社員」と呼ばれる存在には、さまざまな行動パターンが見られます。
たとえば、無断欠勤や頻繁な遅刻に加え、上司の指示を無視して独断で作業を進めてしまうケースなどが挙げられます。
業務命令違反が重なると周囲の従業員に過度な負担をかけ、職場全体の生産性や雰囲気にも深刻な影響を及ぼすでしょう。
さらに、内部情報を持ち出す、他者へのハラスメント行為があるなど、深刻な規律違反が認められる場合は、もはや軽視できないレベルのトラブルへと発展する可能性も高くなります。

1-2. 問題行動が生まれる背景と企業側の責任

問題社員の行動の背景には、本人の性格的要因やモチベーションの低下、社内評価制度の不備など、さまざまな理由が潜んでいるかもしれません。
企業が評価制度や就業規則を明確に整備していないと、従業員が「自分がどこに問題があるのか」を理解できず、結果的にトラブルを深刻化させることもあります。
このような場合、企業側は「問題社員だけが悪い」とは言い切れません。
従業員の不満が生じる仕組みや、適切な指導・評価を行う環境が整っているかどうか、改めて確認することが大切です。

1-3. 問題社員を放置するリスク

問題社員を放置すると、単なる業務の停滞だけでなく、職場全体に悪影響を与え、優秀な従業員のモチベーションまで下がるリスクがあります。
また、ハラスメントや情報漏洩など重大な行為が放置されれば、経営上の損失や企業イメージの失墜にもつながりかねません。
早い段階で専門家に相談し、必要な対処を講じることが企業防衛の要となるでしょう。

2. 解雇の前に知っておくべき法律・労務の基礎知識

2-1. 解雇権濫用法理と社会通念上の合理性

日本の労働法では、解雇は非常に高いハードルを課されています。
労働契約法16条に基づく「解雇権濫用法理」により、客観的な理由に乏しい解雇や、社会通念上相当とは言えない解雇は無効となる可能性が高いのです。
問題社員といえども、「どれだけ周囲に悪影響を与えているか」を具体的かつ証拠に基づいて説明できなければ、裁判所から解雇無効の判決を受けるリスクがあります。

2-2. 普通解雇と懲戒解雇:2つの違い

解雇には大きく分けて「普通解雇」と「懲戒解雇」があります。
普通解雇は、能力不足や勤務態度の問題を理由とするもので、懲戒解雇は横領・セクハラなど重大な規律違反を理由とする最も重い処分形態です。
懲戒解雇は退職金が不支給となる場合もあるため、従業員への影響が非常に大きい一方で、企業側にも慎重な証拠収集と手続きが求められます。
就業規則で懲戒解雇に当たる行為を具体的に規定していないと、法的に争われたときに不利となるケースが多いです。

2-3. 「退職勧奨」との比較:合意退職のメリット

問題社員の対応では、「解雇する」という最終手段に至る前に「退職勧奨」を検討することが推奨されます。
退職勧奨は、従業員が自発的に辞める形を模索するため、企業にとって不当解雇リスクを減らせる利点があります。
ただし、強引な退職勧奨(いわゆる退職強要)は違法と判断される恐れがあり、逆に紛争を拡大させてしまうこともあるため注意が必要です。

3. 問題社員を解雇するためのポイントと必要な手順

3-1. 就業規則や懲戒規定の明確化

問題社員を解雇するうえで、まず確認すべきは就業規則や懲戒規定の内容です。
具体的に「どのような行為を行ったら解雇対象になるか」を明文化しておき、周知しているかどうかが裁判所の判断でも重視されます。
就業規則が不明瞭だと、企業側の主張が「後付け」とみなされ、解雇が無効とされる可能性が高まります。

3-2. 段階的な指導・注意と証拠化

問題行動に対して、段階的に注意や指導を行い、従業員に改善の機会を与えることは必要不可欠です。
たとえば、初回は口頭注意、改善されなければ書面での始末書、最終的には懲戒処分へ進むなど、会社としてのプロセスを明示しましょう。
また、これらのステップを踏んだ証拠を残すことも重要です。
メールや社内書面、面談記録などを保存しておくと、後で従業員が「聞いていない」「不当だ」と主張した際に反論しやすくなります。

3-3. 配置転換・降格などの解雇回避策

たとえば能力不足の問題社員に対しては、配置転換やポジション変更など、解雇を回避する方法を模索した事実があるか否かが争点になる場合もあります。
企業側が「できることはすべて試したが、これ以上雇用継続が困難」と説明できれば、解雇の正当性が認められやすいといえます。

4. 実務フロー:問題社員への段階的対応と解雇プロセス

4-1. 事実関係の把握と問題行動の記録

解雇に着手するにあたって、まずは問題社員の具体的行動やトラブル内容を整理しましょう。
無断欠勤の回数、業務命令の拒否状況、他の従業員への影響度合いなどを可視化し、可能な限りエビデンスを収集しておくことが大切です。

4-2. 注意・警告とそのフォローアップ

「どのような点を問題と考えており、どう改善すべきか」を明確に伝え、本人が理解したかどうかもチェックします。
場合によっては「始末書の提出」や「小さな懲戒処分」などを挟み、改善が見られるか観察する期間を設定するとよいでしょう。
その際、やり取りを文書化し、本人の署名や押印を得るとさらに効果的です。

4-3. 解雇理由書の作成と通告

改善が見られない、あるいは重大な違反が発覚した場合、解雇理由を整理した書面を準備します。
解雇理由書には就業規則のどの条項に該当し、どのような問題行動があったかを具体的に記載しましょう。
通告時には従業員を別室に呼び出し、落ち着いた場で上司や人事担当者が同席しながら説明します。
感情的な対立を避けるためにも、複数名で対応することが望ましいです。

4-4. 普通解雇と懲戒解雇の最終判断

違反行為の重大性や就業規則の内容に照らして、懲戒解雇とするか普通解雇とするかを判断します。
懲戒解雇の場合は退職金不支給などの影響があるため、必ず弁明の機会を設けるなど、厳格に手続きを踏む必要があります。

5. よくあるトラブル事例と裁判例から学ぶ注意点

5-1. 成績不良・能力不足による解雇

業績不振を理由に解雇する場合、「研修や教育を十分に行ったか」「具体的に目標を提示し、改善計画を共有したか」が問われます。
何のフォローもなく解雇されたと従業員から訴えられ、裁判所に解雇無効と認定される事例も少なくありません。

5-2. 横領・セクハラなどの重大違反事例

横領やセクハラなどは懲戒解雇に該当しやすい行為ですが、会社が証拠をしっかり押さえていなければ、無効と判断される可能性もあります。
「会社が主観的に重大だと考えているだけではなく、客観的に見ても社会通念上許容できない違反行為である」と立証できるかどうかがカギです。

5-3. 協調性欠如や態度不良をめぐる紛争

他の社員とのトラブルが絶えない、指示に対して常に反抗的な態度を取る、といった事例では、程度の大きさが問題となります。
裁判例でも「ただの性格の不一致では解雇が認められない」「改善に向けた手続きが不十分」という理由で、企業側が敗訴した例があります。

6. 解雇後に待ち受けるリスクと対策

6-1. 事後トラブルの典型:不当解雇主張や損害賠償請求

解雇後、労働審判や裁判で「不当解雇」と主張されると、賃金のバックペイや慰謝料の支払いが発生するおそれがあります。
会社としては証拠を揃えておかないと、結果的に和解金を支払うなど、大きな出費を余儀なくされるケースもあるでしょう。

6-2. 解雇理由証明書と解雇予告手当の取り扱い

従業員から要求があれば、「解雇理由証明書」を交付する義務があります。
ここで解雇理由を変えてしまうと整合性が崩れ、「後付けの理由」と判断されかねません。
また、労働基準法により30日以上前の解雇予告もしくは解雇予告手当が必要です。
懲戒解雇であっても、よほどの重大行為が認定されない限り、除外認定を受けるのは簡単ではありません。

6-3. 解雇後の職場フォローも忘れずに

問題社員を解雇した後、職場にいる従業員が「次は自分がターゲットかもしれない」と不安に陥る場合もあります。
企業としては、解雇の理由を正しく周知し、残る従業員が仕事に集中できるようフォローアップを行うことも大切です。

7. 管理職が果たすべき役割:問題社員化を未然に防ぐマネジメント力

問題社員を解雇する場面では、往々にして管理職のマネジメント不足が指摘されることがあります。
もちろん、問題行動を起こす本人の責任が大きい場合もありますが、その原因の一端が「管理職による適切な指導やフォローが行われていなかった」「業務命令を曖昧に伝えていた」などにあるケースも多いのです。
ここでは、管理職がどのような点を意識すれば問題社員の発生や深刻化を抑えられるか、マネジメント力向上の観点から解説します。

まず重要なのは、業務の目的と具体的な目標を明確に示すことです。
管理職が「何をどの程度やってほしいのか」をしっかりコミュニケーションしないまま、「やる気がない」「問題行動ばかり」と評価してしまうと、社員は不満を抱きやすくなります。
たとえば、週次や月次のミーティングで業務状況をヒアリングし、数字目標や成果指標を共有する仕組みを整えておけば、従業員が自分のタスクの優先度や期待される役割を正しく理解しやすくなるでしょう。
また、仕事の進捗をこまめに確認し、誤解やミスを早期に発見することで、問題行動やコミュニケーションの行き違いを未然に防げます。
次に、管理職自身が適切な注意指導の手順を理解しているかも大切です。
注意すべきなのは、感情的な叱責やパワハラまがいのアプローチを行うと、逆にトラブルが深刻化する恐れがあること。
問題行動が目立った社員に対しては、初回の段階で「具体的にどんな行為が不適切か」を冷静に伝え、改善策を一緒に考える姿勢を示すことが重要です。
無断欠勤や遅刻が多い場合は、就業規則の該当条文と照らし合わせながら、「同じ行為を続ければ懲戒処分もあり得る」という事実を明確に告げる必要があります。
このような段階的な指導と記録を怠ると、いざ解雇の判断を下す際に「管理職は十分なフォローをしていない」と従業員から反論を受けやすくなるのです。
最後に、管理職間の情報共有も欠かせません。
部署や担当者が異なると、問題社員の行動が部分的にしか把握されず、一貫性のない指導が行われる場合があります。
そうなると、本人から「一方の上司はOKと言ったのに、もう一方の上司はNGと言う」といった混乱が起き、ルールの抜け道をつかれかねません。
定期的な管理職ミーティングやチャットツールなどで情報を共有し、指導方針を統一することで、問題社員に対する対応がブレにくくなり、適切かつスピーディーな対処が可能になります。
このように、問題社員を解雇するかどうかは最終的な判断ではあるものの、その前段階で管理職のマネジメント力を高め、業務目標や指導方針を明確にし、チーム全体で情報を共有していくことが、問題の発生や深刻化を大きく抑止する鍵となります。
結果として、問題社員への対策だけでなく、他の従業員にとっても働きやすい環境が整い、企業全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

8. まとめ:問題社員への対処が会社の将来を左右する

問題社員の解雇は、企業が抱えるストレスを一気に解消するように思えるかもしれません。
しかし、解雇には厳しい要件と手続きがあり、適切に進めなければ不当解雇として会社が大きな代償を払う恐れがあるため、就業規則に基づいた説明や証拠の確保、段階的な指導など、正しい手続きを踏んだうえで判断することが重要です。
また、問題社員を生まない企業風土づくりや評価制度の明確化は、長期的に見て大きなリターンをもたらします。
社内規程や処遇制度がしっかりしていれば、“問題社員”として扱われる前に改善のチャンスを与えることもでき、余計な訴訟や紛争を未然に回避する可能性が高まるでしょう。

労務トラブルに強い弁護士が在籍する当事務所では、問題社員の解雇から就業規則の再整備、従業員トラブルの予防策まで包括的にサポートします。
早めにご相談いただくほどリスク管理が容易になりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
最適な解決策をご一緒に考えましょう。

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