企業経営において、従業員とのトラブルは避けられません。特に、業務命令に従わない、他の社員とトラブルを起こす、著しく業務に支障をきたす「問題社員」の対応に苦慮する経営者や人事担当者も多いでしょう。しかし、感情的に解雇を決断すると、法的リスクを伴う可能性があり、適切な手続きを踏むことが不可欠です。本記事では、問題社員を辞めさせる方法や注意点を専門家の視点から解説し、トラブルを未然に防ぐためのポイントをお伝えします。
問題社員とは?定義と具体的な特徴
もくじ
- 1 問題社員の定義とは?
- 2 問題社員に該当する具体的なケース
- 3 問題社員を放置するリスクと企業への影響
- 4 問題社員対応の基本原則
- 5 問題社員への対応手順
- 6 退職勧奨に対するパワハラ訴訟
- 7 解雇無効訴訟に発展した事例
- 8 Q.問題社員の勤務態度が悪いだけで解雇できますか?
- 9 Q.問題社員の懲戒処分を実施する際、就業規則にはどのような記載が必要ですか?
- 10 Q.問題社員を解雇する際に「解雇予告手当」は必ず支払う必要がありますか?
- 11 Q.問題社員を解雇する際に「解雇理由証明書」は交付しなければならないのですか?
- 12 Q.問題社員がメンタルヘルス不調を理由に勤務態度を改善しない場合、どのように対応すべきですか?
- 13 Q.問題社員が「労働組合」に加入し、解雇を回避しようとする場合の対処法は?
問題社員の定義とは?
企業経営において、「問題社員」の対応は避けて通れない課題の一つです。問題社員とは、組織の秩序を乱し、業務遂行に支障をきたす行動を取る従業員を指します。ただし、「問題社員=即解雇すべき存在」ではなく、適切な対応によって改善の可能性がある場合もあります。そのため、問題社員の特徴を正確に理解し、適切な対応策を講じることが重要です。
問題社員に該当する具体的なケース
問題社員は、単に業務能力が低いだけではなく、組織の秩序や職場環境に悪影響を及ぼす言動を繰り返すケースが多く見られます。以下に、具体的な問題社員のケースを分類し、それぞれの特徴を詳しく解説します。
業務指示に従わない社員
上司の指示に従わず、組織の運営に支障をきたす社員が該当します。
具体例
- 上司の指示を無視し、独断で業務を進める
- 指示された業務を意図的に怠る、または報告を怠る
- 業務の優先順位を無視し、必要な作業を後回しにする
このタイプの社員が放置されると、組織の意思決定や業務の遂行に支障をきたし、他の社員の業務負担も増加します。
勤務態度に問題がある社員
職場での勤務態度が著しく悪く、業務に対する責任感が欠如しているケースです。
具体例
- 遅刻や無断欠勤が頻繁に発生する
- 就業時間中に私的な活動(スマートフォンの使用、居眠りなど)を繰り返す
- 勤務中の態度が悪く、同僚や上司との協調性が欠けている
こうした社員が存在すると、職場全体の士気が低下し、他の従業員のモチベーションにも悪影響を及ぼします。
他の社員や顧客とのトラブルを起こす社員
対人関係に問題を抱え、同僚や上司、顧客とのトラブルを引き起こすケースです。
具体例
- 同僚や部下へのパワハラ・モラハラ行為を行う
- 顧客対応に問題があり、クレームが頻発する
- 上司や同僚と頻繁に衝突し、職場の雰囲気を悪化させる
このような社員を放置すると、職場環境の悪化だけでなく、企業の対外的な信用にも影響を及ぼす可能性があります。
業務遂行能力に問題がある社員
基本的な業務遂行能力に欠け、仕事の成果が出せないケースです。
具体例
- 業務ミスや納期遅延が頻発する
- 指導や研修を受けても改善が見られない
- 自己成長やスキル向上への意欲が低く、成長しようとしない
このタイプの社員が長期間放置されると、業務の質が低下し、他の社員の負担が増加する要因となります。
コンプライアンス違反を行う社員
企業のルールや社会的な規範を無視し、不適切な行為を行う社員です。
具体例
- 機密情報の持ち出しや漏洩を行う
- 経費を不正に使用し、会社資金を流用する
- SNS上で会社や顧客に関する不適切な投稿を行う
このような社員が発生すると、企業の信頼が大きく損なわれるリスクがあるため、厳格な対応が必要となります。
業務命令に対する反抗的な態度をとる社員
組織のルールや上司の指示に対して、反抗的な態度を取る社員も問題視されます。
具体例
- 上司や同僚の意見に対して、非協力的な態度を取る
- 会社の方針やルールに納得できず、指示を拒否する
- 他の従業員と衝突し、組織の調和を乱す
このタイプの社員は、チームワークの阻害要因となるため、適切な対応が求められます。
問題社員を放置するリスクと企業への影響
問題社員の存在を認識しながらも、適切な対応を取らずに放置することは、企業にとって深刻なリスクをもたらします。労務管理上の課題が未解決のまま積み重なると、組織全体の生産性や企業の信用に悪影響を及ぼすだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。ここでは、問題社員を適切に管理しない場合に発生し得るリスクについて解説します。
労働環境の悪化と組織の士気低下
問題社員の存在を放置すると、適切に業務を遂行している他の従業員の士気が大きく損なわれます。
主な影響
- モチベーションの低下:不公平感が生じ、まじめに業務をこなす社員の意欲が削がれる
- 職場環境の悪化:トラブルメーカーの行動が容認されることで、職場全体の秩序が崩れる
- 優秀な社員の流出:健全な職場環境を求め、優秀な人材が離職する可能性が高まる
特に、労務問題が長期化すると、組織全体のパフォーマンスに影響を及ぼし、企業の成長を阻害する要因となりかねません。
企業の法的責任と損害リスク
問題社員に対する適切な対応を怠ると、企業が法的責任を問われるリスクがあります。
考えられる法的リスク
- ハラスメントの黙認と安全配慮義務違反:職場内でのパワハラやセクハラを放置した場合、被害を受けた社員が企業に対して損害賠償請求を行う可能性がある
- 未払い残業代の発生:業務遂行能力に問題のある社員が業務を長時間かけて行い、残業代請求につながるケース
- 不当解雇リスク:問題社員の対応を誤り、適切な手続きを踏まずに解雇を行うと、不当解雇として労働審判や訴訟に発展する可能性がある
企業が適切な労務管理を怠ると、訴訟リスクが増大し、不要なコストや時間を要する結果となるため、慎重な対応が求められます。
社会的信用の低下
問題社員の行動が公になることで、企業の信用やブランドイメージが損なわれる可能性があります。
具体的なリスク
- SNS炎上リスク:問題社員がSNSで会社の不満を発信し、企業の評判を著しく低下させる
- 取引先や顧客への悪影響:社員の不適切な対応が原因で取引関係に悪影響を及ぼす
- 行政指導・監査の対象:労働基準監督署や行政機関による指導が入り、企業の健全性が問われる
企業の対外的な評価が低下すると、新規取引の減少や株価の下落といった経済的な損失にもつながるため、適切なリスクマネジメントが不可欠です。
企業の成長戦略への影響
労務管理が適切に行われていない企業は、長期的な成長にも悪影響を及ぼします。
考えられる課題
- M&Aや上場準備の妨げ:労務環境が適正でない企業は、デューデリジェンス(DD)の過程で法的リスクが指摘され、買収対象や上場適格企業として認められない可能性がある
- 人材採用の困難化:問題社員が蔓延する企業では、採用市場において求職者の評価が下がり、優秀な人材を確保しにくくなる
- 生産性の低下と競争力の低下:社内の労務管理が整っていない企業は、労働生産性が低下し、競争優位性を確保できなくなる
企業が継続的に成長するためには、適切な労務管理が不可欠であり、問題社員への対応を後回しにすることは避けなければなりません。
問題社員に対する適切な対応手順
問題社員対応の基本原則
問題社員への対応は、企業のガバナンスを守るうえで重要ですが、適切なプロセスを踏まないと不当解雇などの法的リスクが生じます。対応時の基本原則は以下の3点です。
- 記録を残す…問題行動の詳細を記録し、客観的な証拠を確保する
- 改善の機会を与える…適切な指導・指示を行い、改善の機会を提供する
- 法令を遵守する…労働基準法や労働契約法に則った対応を行う
特に、「記録を残す」という点については、後に発生する可能性のある労務トラブルに備え、問題行動の指摘から改善の指示、懲戒処分に至るまでの経緯を詳細に文書化することが重要です。証拠が十分でない場合、企業側が不利になるリスクが高まるため、慎重な対応が求められます。
問題社員への対応手順
指導・改善指示を行う
問題社員に対しては、いきなり懲戒や解雇を実施するのではなく、まずは最初の対応として問題行動の具体的な指摘と改善指示を行うことが求められます。この指導の過程を適切に記録し、客観的な証拠を残すことで、将来的なトラブルを防ぐことが可能です。
①口頭指導・注意
- 問題行動が発生した際には、まず口頭での注意を行い、問題点を指摘する
- 後の書面での指導に備えて、指導の日時・内容・社員の反応を記録しておく
②書面による注意・指導
- 口頭指導を行った後も問題行動が改善されない場合、①業務上の問題点、②指導内容、③改善方法を書面にして交付する(業務改善指導書)
- 書面交付は、問題行動が確認されてから間をあけずに速やかに実施する
- 書面作成時のポイント(1)問題となる行動を正確に記載する:「業務をさぼっている」というような抽象的な書き方ではなく「何月何日にこのような業務指示をしたがそれに従わなかった」というように問題行動を具体的かつ正確に書くことが大事です
- 書面作成時のポイント(2)どのように改善するかの方法を明示する:問題行動に対して、会社側としてどのような方法で改善をしてほしいのかを具体的に記載をしておきましょう。(こちらも、「業務をさぼらない」というような抽象的な書き方ではなく、「業務指示を受けたら、このような対応をして、上司にいつまでに報告をしてください」というように、具体的に記載することが必要です。
- 書面作成時のポイント(3)該当する社員から書面内に署名をもらう:問題社員から書面を見ていない・受け取っていないなどと言われないようにするため、業務改善指示書の末尾に「指導書の内容を確認し指摘事項の遵守および改善に努めます」など内容を確認し改善に努めることを約束する文言を入れて、本人から署名をもらっておきましょう。
書面での注意・指導は、後の法的対応の際に企業側の適正な対応を証明する重要な証拠となりますので、記載事項に不安がある場合は交付する前に専門家のチェックを挟むことをお勧めします。
指導や改善指示を行っても問題行動が改善されない場合は、配置転換による解決ができないかを検討します。
配置転換による対応
問題社員の適性や業務遂行能力に問題がある場合、配置転換を検討することが一つの解決策となります。問題社員の行動が特定の業務環境に起因している可能性がある場合は、従業員の特性に合った業務を任せることで、パフォーマンスの改善が期待できるほか、組織全体の円滑な運営にもつながります。
配置転換の検討ポイント
- 職種・業務内容の適正評価:現在の業務が従業員の能力・スキルと合っているかを分析し、配置転換が妥当かを判断する
- 就業規則・雇用契約書の確認:雇用契約書に「特定の業務に従事する」と明記されている場合、配置転換が難しくなる可能性があるため、契約内容を事前に精査する
- 適切な職種・役職の提示:本人の強みを活かせる役割・役職を提案することで、配置転換を前向きに捉えやすくなる
通常、企業が従業員を配置転換(異動)する場合は、就業規則や雇用契約書に「配置転換の可能性がある」旨の記載があれば、企業の裁量で実施することが可能です。
しかし、雇用契約書に「特定の業務・勤務地で働く」ことが明記されている場合や、会社の就業規則が「特定の業務のみ従事する」と定めている場合は、配置転換を実施すると労働条件の一方的な変更とみなされ、無効となる可能性があります。
このような場合は、就業規則を改訂し配置転換の法的根拠の整備が必要であるほか、雇用契約書で従事する職務の制約がある場合は、社員の同意を得た上での異動を行うなど、配置転換を慎重に進めることが必要ですので、労務に強い弁護士に相談されることをお勧めします。
配置転換が難しい場合、または配置転換を行っても問題が改善しない場合は降格・懲戒処分を実施する段階になります。
降格・懲戒処分の実施
問題社員に対して指導や配置転換を行っても改善が見られない場合、降格や懲戒処分を検討することが必要です。ただし、これらの措置は労働基準法や労働契約法の規定に則り、公平性・合理性をもって実施する必要があります。
①降格の実施要件
降格は、社員の職務遂行能力の不足や職務態度の問題が著しく、管理職・専門職などの職責を果たせない場合に検討されます。
場合によっては労使紛争に発展する可能性がありますので、以下条件が揃っているかには十分に注意が必要です。
- 就業規則に明確な規定があることを確認
- 降格が賃金減額を伴う場合、労働条件の不利益変更に該当するため、合理的な理由と社員の同意が必要
- 降格が人事権の範囲内で適正に行われたことを証明するため、社員の評価や問題行動に関する書面での記録を十分に確保する
②懲戒処分の種類と要件
懲戒処分は、企業秩序を維持するための措置であり、問題社員の行動が就業規則違反や業務に重大な支障を与えた場合に適用されます。
懲戒処分の種類 | 内容 | 適用基準 |
戒告・譴責 | 書面や口頭での厳重注意 | 軽微な規律違反や業務態度の不良 |
減給 | 賃金の一部を減額 | 業務怠慢や業績不振による損害 |
出勤停止 | 一定期間の就業禁止 | 度重なる規則違反 |
降格 | 役職や職務等級の引き下げ | 管理職としての適性欠如 |
懲戒解雇 | 即時解雇 | 重大な規律違反 (横領・ハラスメントなど) |
懲戒処分についても降格と同様に労使紛争に発展する可能性がありますので、就業規則に懲戒処分の基準および手続が定められているかを確認し、就業規則に明記されていない場合は、就業規則の整備が必要となります。
降格・懲戒処分いずれも、処分の妥当性の判断や不当な処分であるとみなされないよう、労務に強い弁護士と相談しながら進めることが望ましいでしょう。
退職勧奨・解雇
問題社員の対応として、降格や懲戒処分を実施しても改善が見られない場合、企業は最終的な対応として退職勧奨や解雇を検討することになります。ただし、労働法上、解雇は厳しく制限されており、企業が適切な手続きを踏まないまま進めると、不当解雇と判断されるリスクがあるため慎重な対応が求められます。
退職勧奨による自主退職
退職勧奨とは、企業が労働者に対して自主的な退職を促す行為です。これはあくまで労働者の合意に基づく退職であり、強制力はありません。
強引な退職勧奨は違法となる可能性があるため、従業員が納得する形で話し合いを進めることが必要です。
この段階で自主退職の運びとなった場合は、必ず退職合意書の取り交わしを行い、合意に基づく退職であることを明確にして将来的な紛争に備えておきましょう。
解雇
合意退職が難しい場合は、最終手段として解雇を検討することとなりますが、適切な手続きを踏まない解雇は「不当解雇」として無効と判断されかねません。
労働審判や訴訟のリスクを防ぐため、以下の要件を満たすことが不可欠です。
解雇の種類 | 概要 | 適用要件 |
普通解雇 | 能力不足や勤務態度不良による解雇 | 事前の指導・改善機会を提供し、それでも改善が見られない場合 |
懲戒解雇 | 横領・業務命令違反などの重大な違反行為に基づく解雇 | 就業規則に基づき、適正な懲戒手続きを経た場合 |
整理解雇 | 経営不振など企業都合による解雇 | ①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③合理的な人選、④手続の適正性が満たされることが条件 |
不当解雇とみなされないための注意点
解雇を行う際には、不当解雇であるとみなされないよう、以下の点に十分留意する必要があります。
- 就業規則や労働契約に基づいた合理的な解雇事由がある
- 指導・教育・配置転換など事前の指導・改善機会を与えており、かつ書面での記録も十分に残っているが改善が見られない
- 解雇の手続きが法的に適正である(解雇予告、合理的な説明)
解雇が無効と判断された場合、労働者より地位確認請求訴訟が起こされる、賃金支払い義務が発生するといったリスクがあるため、労務に精通した弁護士のアドバイスを受けながら、適切な対応を進めることが不可欠です。
退職・解雇をめぐるトラブル事例と対処法
退職勧奨に対するパワハラ訴訟
企業が問題社員への対応として退職勧奨を行った際、適切な手続きを踏んでいなければ、パワハラ(パワーハラスメント)を理由とする訴訟リスクが発生します。特に、執拗な退職勧奨や強引な説得は、退職の自由を奪う行為とみなされ、裁判で企業側に不利な判断が下されることがあります。
【事例】
ある企業で、勤務態度に問題のある社員に対し、上司が複数回にわたり個別面談を実施し、「このままだと厳しい」「転職したほうがいい」と圧力をかけ続けた結果、社員が精神的苦痛を理由にパワハラ訴訟を提起。裁判では、企業の対応が退職を強要する行為に該当すると判断され、損害賠償が命じられました。
【対策】
- 記録の保存…面談の回数や発言内容を適切に記録し、証拠を残す
- 複数名での対応…退職勧奨は1対1ではなく、複数の管理職が同席することで圧力とみなされるリスクを軽減
- 従業員の意思尊重…強制的な発言や圧力を避け、あくまで本人の意思を尊重した対応を徹底
解雇無効訴訟に発展した事例
【事例】
業績不振を理由に、ある企業が複数の従業員を突然解雇。しかし、解雇前に十分な業務改善の指導を行っていなかったため、解雇された従業員が不当解雇を主張し提訴。裁判では、企業側が解雇に至るまでの適切な手続きを踏んでいなかったとして、解雇無効の判断が下され、従業員の復職命令が出された。
【対策】
- 段階的な指導・記録の徹底…解雇に至るまでの業務改善指導を文書で記録し、証拠を確保
- 解雇理由の明確化…解雇の理由が労働契約法に適合していることを確認し、適法性を担保
- 弁護士・社労士への事前相談…解雇のリスクを最小限にするため、事前に専門家へ相談し、法的リスクを回避
Q&A|問題社員の対応に関するQ&A
Q.問題社員の勤務態度が悪いだけで解雇できますか?
A:単に勤務態度が悪いだけでは、労働契約法に基づく「客観的合理性」と「社会的相当性」が認められず、不当解雇と判断される可能性があります。まずは書面での指導記録・業務改善指示書を残し、段階的な注意・指導を経た上で、解雇事由に値するだけの客観的事実が必要です。
Q.問題社員の懲戒処分を実施する際、就業規則にはどのような記載が必要ですか?
A:懲戒処分を行うためには、就業規則に具体的な懲戒事由が明記されていることが必要です。例えば、「勤務態度が著しく悪く、業務遂行に支障をきたした場合」や「社内外において会社の信用を毀損する行為を行った場合」など、具体的な懲戒事由と処分の種類(戒告、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇など)を定めておくことが重要です。また、処分の決定に際しては、懲戒委員会の設置や本人の弁明機会を与える手続きも規定しておくと、後の法的トラブルを回避しやすくなります。
Q.問題社員を解雇する際に「解雇予告手当」は必ず支払う必要がありますか?
A:労働基準法第20条により、解雇を行う場合、原則として30日以上前に予告をするか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。ただし、懲戒解雇のうち「重大な非行」に該当する場合は、労働基準監督署の認定を得ることで即時解雇が可能です。ただし、認定が下りないケースも多く、結果的に不当解雇とされるリスクがあるため、事前に弁護士に相談をされることをお勧めします。
Q.問題社員を解雇する際に「解雇理由証明書」は交付しなければならないのですか?
A:労働基準法第22条により、労働者が請求した場合には、解雇理由証明書を発行する義務があります。この証明書には「解雇の具体的理由」を記載する必要があり、曖昧な表現を避け、懲戒処分の履歴や問題行動の具体例を明示することが求められます。なお、会社側が不適切な理由を記載すると、不当解雇の証拠とされるリスクがあるため、記載内容は弁護士と相談して作成を進めてください。
Q.問題社員がメンタルヘルス不調を理由に勤務態度を改善しない場合、どのように対応すべきですか?
A:メンタルヘルスを理由に業務改善を拒否する社員に対しては、労務管理の観点から慎重な対応が必要です。まず、産業医面談の実施や医師の診断書の提出を求め、業務遂行能力を客観的に判断します。その結果、業務継続が困難と判断された場合は、休職制度の適用を検討し、必要に応じて復職支援プログラムを活用するのが適切です。ただし、問題行動が病気とは関係なく、単なる業務命令違反である場合は、通常の指導手順に沿った対応が可能です。
Q.問題社員が「労働組合」に加入し、解雇を回避しようとする場合の対処法は?
A:問題社員が労働組合に加入すると、団体交渉を通じて解雇の撤回を求めてくる可能性があります。会社としては、団体交渉の場で「指導歴」「改善指導の経緯」「就業規則に基づく懲戒理由」などを適切に説明できるよう準備を行うことが重要です。特に、団交拒否は不当労働行為とされるため、弁護士からの法的助言を受けながら交渉対応を進められてください。
問題社員の対応に関するご相談は労務に強い弁護士へ
問題社員の対応は、企業の労務管理において極めて慎重な判断が求められる分野です。対応を誤ると、不当解雇やハラスメントの訴え、さらには労働審判・訴訟リスクに発展する可能性があります。特に、解雇や懲戒処分を行う場合には、労働法や企業の就業規則に基づいた適切なプロセスを遵守しなければなりません。
しかし、問題社員への対応には、単に法律を遵守するだけでなく、企業の業務運営や職場環境の安定を確保する視点も必要です。そのため、適切な手順を踏みながらも、企業の利益を守りつつ円滑な問題解決を図る戦略的な対応が求められます。
当事務所では、弁護士と社会保険労務士の資格を併せ持つ労務特化の弁護士を中心に、問題社員対応を含む労務問題全般に対して企業の実情に即した総合的なサポートを提供しています。法的リスクを最小限に抑えながら、企業経営にとって最適な対応を実現するための支援を行います。
問題社員対応に関する初回の法律相談は無料です。貴社の状況に応じた最適なアドバイスを提供いたしますので、お気軽にご相談ください。