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【不動産会社・管理会社向け】貸主都合で立ち退きをお願いする場合の進め方|立ち退き料の交渉と弁護士への相談ポイント

2026.07.14

管理物件の建て替えや売却、再開発、用途変更などにより、借主に落ち度がないにもかかわらず、貸主側から立ち退きをお願いしなければならない場面があります。この場合、管理会社が通常の入居者対応の延長で進めると、正当事由や非弁行為の問題が生じることがあります。本記事では、不動産会社・管理会社向けに、貸主都合の立ち退き交渉の注意点と弁護士に相談すべきポイントを解説します。

もくじ

第1章 立ち退き料の交渉で管理会社が押さえるべき考え方

1-1 立ち退き料は、一律の相場ではなく正当事由を補う事情として考える

立ち退き料に法律上の定額や一律の計算式はありません。立ち退き料は、貸主側の正当事由を補う事情として検討されるものですので、貸主側の必要性がどの程度あるのか、借主側にどのような不利益が生じるのか、その不利益を金銭的な条件でどこまで調整できるのか、という視点で考える必要があります。

1-2 居住用物件では、転居に必要な実費と生活上の負担を整理する

立ち退きを求める対象が、住居であるか、事業用(店舗やオフィス)であるかによって、立ち退き料として検討すべき項目や金額感は大きく変わります。

まず、居住用物件の場合、立ち退き料の交渉では、次の物件へ移転するための実費が重要な検討要素になります。
具体的には、新居の契約に要する初期費用(礼金、仲介手数料、保証会社費用など)、現在の家賃と新居の家賃の差額(数か月〜数年分)、引越し業者への実費、インターネットなどの移転工事費用などが検討対象になります。
また、高齢者世帯や子育て世帯、通学・通勤への影響が大きい世帯では、転居先を探す負担や生活環境の変化も交渉上考慮されやすくなります。

管理会社としては、借主から見積書や転居先候補の資料を提出してもらい、オーナーへ説明できる形で整理しましょう。見積書は総額で判断するのではなく、補償項目ごとに分けて、実際に発生する費用か、相当な範囲といえるか、といった視点で確認することが大切です。

1-3 事業用物件では、営業への影響を資料に基づいて確認する

一方、店舗やオフィスなどの事業用物件の場合は、居住用とは異なる検討が必要です。借主にとって、単なる移転費用だけでなく、営業活動そのものに影響が出る可能性があるためです。

例えば、移転実費に加え、次のようなものが立ち退き料を検討するうえで問題になることがあります。

休業期間中の売上減少や利益減少に関する主張

移転に伴い一定期間営業が休止することによる影響

造作・設置費用

移転先で内装や特殊な設備を再度施工するための費用

顧客離れによる売上減少に関する主張

移転によって既存の顧客が離れてしまうことによる影響

クリニックや美容サロンなどの場合、業態によっては、許認可や保健所への届出・確認、顧客・患者への移転告知、予約管理への影響も考慮が必要になる場合があります。

もっとも、これらは当然に全額が立ち退き料として認められるというものではありません。事業用物件では、借主側から高額な請求が出ることもありますが、その場合には売上資料や決算書、内装工事の見積書、移転先候補、休業期間の根拠などを確認し、具体的な資料に基づいて、オーナーや弁護士と協議方針を整理することが重要です。

1-4 金額の上乗せだけで解決しにくい場合は、正当事由の見通しを見直す

立ち退き料は重要な交渉条件ですが、金額を上げれば必ず退去に応じてもらえるわけではありません。借主側の居住継続の必要性が高い場合や、事業用テナントにとって移転が営業上大きな負担になる場合には、立ち退き料を提示しても交渉が進まないことがあります。

また、貸主側の建て替えや売却の必要性を十分に説明できない場合には、裁判になっても明け渡しが認められるとは限りません。
立ち退き料は正当事由を補う要素ではありますが、正当事由そのものに不安がある場合、立ち退き料の増額交渉だけでは解決を図れない可能性もあります。

このような場面では、管理会社が金額調整を続けるのではなく、貸主側の事情、借主側の不利益を踏まえ、弁護士を交えて交渉の進め方を再確認することが望ましいといえます。

第2章 立ち退き交渉の実務フローと管理会社として対応できる法的限界

2-1 定期借家契約と普通借家契約における実務手続きの違い

管理物件の立ち退きを進めるにあたり、最初に行うべきは該当する賃貸借契約の種類の確認です。

定期借家契約の場合、契約期間の満了により契約が終了するのが原則です。ただし、契約期間が1年以上の場合には、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により契約が終了する旨の通知(終了通知)を借主へ行う必要があります。

一方、普通借家契約の場合は、期間満了による自動終了は原則として認められません。貸主から更新拒絶や解約申入れを行う場合は、前述の正当事由が問題となるため、立ち退き料の検討を含めた交渉計画を立てる必要があるでしょう。

2-2 更新拒絶・解約申入れの通知と書面に残すべき文言

普通借家契約で契約期間満了に合わせて更新拒絶をする場合、原則として、期間満了の1年前から6か月前までの間に、更新しない旨を通知する必要があります。
この通知は、後に裁判に発展した際に、「いつ、どのような内容を伝えたか」を証明する重要な証拠となるため、内容証明郵便(配達証明付き)で送付することも検討します。

更新拒絶又は解約申入れの通知を送付するに当たっては、書面に記載する文言にも注意が必要です。
建物の老朽化や建替え計画など、正当事由を基礎づける具体的事実がなければ、更新拒絶又は解約は法的には認められないため、通知書には「貸主の諸事情で退去を求めたい」などと記載するだけでは通常不十分であり、正当事由を基礎づける具体的事実についても一定程度記載する方が良いと考えられます。

この段階で具体的な立ち退き料の金額を記載する必要はありませんが、「明け渡しに伴う諸費用等については、誠意を持って協議させていただきたい」といった姿勢を書き添えておくことで、借主側の過度な反発を和らげられる可能性があります。

2-3 管理会社による交渉はどこまで許されるか|非弁行為の禁止

実務上、入居者との交渉において管理会社が注意すべきなのが、弁護士法第72条に関係する非弁行為の問題です。
弁護士でないものが報酬を得る目的で、法律事件に関して代理、和解その他の法律事務を取り扱うことは禁止されていることから、管理会社側での対応についてもここに抵触しない範囲で実施する必要があります。

管理会社が、オーナーの意向を借主へ伝える、説明会の日程を調整する、建物状況に関する資料を渡す、借主の要望を聞き取ってオーナーへ報告する、といった対応を行うことは、通常の管理業務や事務連絡の範囲として非弁行為としての問題にはなりにくいといえるでしょう。

一方で、借主が立ち退きを拒否している、立ち退き料の増額を求めている、正当事由や契約終了の有効性を争っているといった段階では、単なる連絡調整を超えて法的な権利義務に関する交渉になりやすいです。
そのため、このような場面で、管理会社がオーナーの代理人として交渉を行ったり、合意を取り付けたりする行為は、非弁行為に該当すると評価されるリスクがあるため注意が必要です。立ち退き事案ではどの段階で弁護士の介入を検討するか、その判断も重要なポイントです。

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2-4 立ち退き合意書に盛り込むべき必須条項

借主との間で退去の合意が得られた場合は、必ず「立ち退き合意書(賃貸借契約解約合意書)」を書面で作成します。口頭の合意だけで進めると、後に認識の相違が生じた際に、トラブルが生じる可能性があるためです。

立ち退き合意書には、事案に応じて、次のような事項を明記します。

  1. 退去日(明け渡し期日)
  2. 立ち退き料の金額
  3. 立ち退き料の支払時期と方法
  4. 原状回復義務の免除や敷金返還の有無
  5. 本合意書に記載された内容以外には、互いに金銭等の請求を一切行わないことを定める清算条項

特に、清算条項がないと、退去後に引越し費用、原状回復費用、営業損失などをめぐって再度紛争になる可能性があります。
立ち退き合意書は、交渉で決まった内容を、後日の紛争を防げる形で具体的に書面化することが不可欠です。

第3章 【FAQ】立ち退き交渉でよくあるトラブルと対処法

Q1. 交渉の申し入れを無視し続ける借主にはどう対応すべきですか?

A1. 内容証明での催告や調停・訴訟などの手続きを検討します。

借主が話し合いを拒否する場合、何度も訪問したり、執拗に電話をかけ続けたりすることは避けてください。借主から逆に不法行為責任を追及されるリスクがあるためです。実務的な対応としては「期限までに連絡がない場合は、法的な手続き(調停や裁判)に移行せざるを得ない」旨を伝える催告書を、再度内容証明郵便で送付します。それでも反応がない場合は自社対応の限界と判断し、弁護士に相談したうえで、民事調停や明渡訴訟など、裁判所を介した手続への移行を検討します。

Q2. 想定を大きく超える高額な立ち退き料を請求されたら?

A2. 根拠の提示を求め、条件交渉が必要な場合は弁護士への引き継ぎを検討します。

まずは、請求に対する客観的な根拠の提出を求めます。ただし、借主が立ち退き料の金額や退去条件を争っている場面で、管理会社が自ら減額案や妥協案を提示して説得を試みる行為は、非弁行為に抵触するおそれがあります。そのため、それ以上の交渉が必要な場合は、弁護士へ窓口を引き継ぐことを検討すべきです。

Q3. 合意後に「次の物件がない」と退去を拒まれるのを防ぐには?

A3. 代替物件の情報提供や移転準備の進捗を踏まえた合意書作成を検討します。

退去期日の直前になって、高齢であることや収入状況などから次の賃貸物件の審査に通らず、引っ越し先が見つからないと退去を拒まれる可能性があります。このトラブルを防ぐには、交渉の段階から、可能な範囲で代替物件の情報提供を行い、借主の移転準備の進捗を確認しておくことが有効です。また、立ち退き合意書を作成する際、「移転先が内定したことを確認した上で、立ち退き料の一部を先行して支払う」といった条件を組み込み、立ち退き料の支払と借主の引っ越しを連動させておく方法も有用です。

第4章 まとめ

管理物件における貸主都合の立ち退き対応は、借地借家法上の正当事由の見通しの整理、非弁行為のリスク回避など、不動産管理会社にとって慎重な判断が求められる業務です。通常の管理実務の枠組みだけで進めようとすると、オーナーのリスクを高めるだけでなく、自社が法的なトラブルに巻き込まれる危険性もはらんでいます。そのため、初期の段階で法的なリスクマネジメントを行える弁護士への相談をおすすめします。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士法人をはじめ、税理士法人、社会保険労務士法人、司法書士法人、行政書士法人が連携したワンストップ体制を整えています。管理物件の立ち退き対応や、それに伴うオーナー様へのご提案でお悩みの不動産会社・管理会社様は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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