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eスポーツ配信で権利侵害をさけるために注意すべきことは?|大会運営側が押さえるべきゲームの利用許諾と契約実務を弁護士が解説

2026.04.22

eスポーツ大会では、競技の実施に加えて、YouTubeなどでのライブ配信やアーカイブ公開まで含めて企画されることが一般的です。ただし、配信を前提とする場合、ゲームの利用条件、選手や実況者の映像・音声の扱い、配信後の二次利用の可否など確認が必要となる範囲が広くなります。本記事では、eスポーツの大会配信において運営側が整理しておきたい権利関係について弁護士が解説します。

もくじ

第1章 eスポーツ配信で権利侵害が問題になりやすい理由

1-1 大会運営と配信実施では求められる権利処理が異なる

eスポーツ大会の運営そのものと、その様子を配信する行為では、法的に整理すべき対象が異なります。大会運営においては、会場の確保や参加者の管理、賞金の支払いといった契約関係が中心となります。
一方、配信では、配信映像に映り込むゲーム画面に関する公衆送信権(インターネットを通じて不特定多数に配信する権利)、選手や実況者の有する送信可能化権(配信できる状態に置くこと自体をコントロールする権利)といった著作権法上の権利処理が必要になります。
例えば、ゲーム会社から大会会場でゲームを使用する許可を得ていたとしても、そのゲーム映像をインターネット上で不特定多数に配信し視聴させる許可までが、そこに当然に含まれているとは限りません。配信は、現実のイベントとは別の著作物の利用として独立して捉える必要があります。

1-2 著作権だけでは足りない、配信で関係する権利の全体像

eスポーツ配信における権利問題は、ゲーム画面の著作権だけに留まりません。
配信映像には、プレイしている選手の容姿(肖像権)、実況者の解説音声(実演家の権利)、会場で流れるBGM(音楽著作権・著作隣接権)など、複数の権利が同時に関係しています。
これらの権利は、それぞれ権利者が異なるため、一つの許可で全てに対応できるとは限りません。特にビジネス(商用利用)として配信を行う場合、これらの権利の一部でも処理が漏れていると、プラットフォーム側からの配信停止措置や、事後の損害賠償請求に発展するリスクを抱えることになります。

第2章 eスポーツ配信におけるゲーム利用許諾の確認ポイント

2-1 個人配信ガイドラインとは異なる大会・商用配信で求められる対応

多くのゲームタイトルでは、個人ユーザー向けに配信ガイドラインが公開されていますが、法人による大会運営や営利性を伴う配信については、これらのガイドラインの適用範囲外とされる場合があります。
実務上は、小規模で非営利性の強い配信について問題とされないケースも見られますが、スポンサーの関与や収益化、企業主体での実施といった要素が加わるほど、ガイドラインだけで対応するのはリスクが高まります。
そのため、大会配信を企画する際には、ガイドラインに従っているかだけでなく、そもそも当該大会がガイドラインの対象なのかという観点から慎重に検討することが重要です。

2-2 個別許諾が必要となる場面の具体例

前記のとおり、すべての商用配信が直ちに個別許諾を要するわけではありませんが、配信の規模や内容によっては、ガイドラインの想定を超える利用と評価される可能性が高くなります。
例えば、以下のような場合には、個別の許諾が求められる場面となりやすいといえます。

賞金付き大会の開催と配信

賞金の設定がある場合、タイトルによっては別途の許諾や、収益に応じたロイヤリティの支払いが求められることがあります。

スポンサーロゴの掲出

配信画面内に特定企業のロゴを表示し、広告的要素を含む配信を行う場合には、個人配信向けガイドラインの範囲を超える利用と評価される可能性があります。

放送権の販売や第三者への提供

大会映像をテレビ局や配信事業者など第三者に提供する場合には、配信とは別の利用として個別の許諾が必要となることがあります。

これらのケースでは、利用範囲、期間、対価、責任分担などを明確にした契約を締結しておくことが、後の紛争を防ぐうえでの有効策といえます。

第3章 大会配信に含まれる人物・音声・素材の権利整理

3-1 選手・出演者の肖像権とパブリシティ権をどう扱うか

配信で選手の顔や姿を映す場合、人格権の一部である肖像権への配慮が求められます。
また、著名なプロ選手の場合、その氏名や肖像自体に経済的価値が認められるため、パブリシティ権の侵害についても検討が必要となります。
実務上は、大会の参加規約において、大会中の様子を撮影し、配信・アーカイブ公開すること、および主催者のプロモーション活動に利用することについて、事前に合意を得ておくことが必要です。また、この際に利用期間や利用媒体を限定しすぎると後の展開がしにくくなることが懸念されるため、将来的な利用を見据えながら合意条項を設計するのが望ましいといえます。

3-2 実況・解説の音声・映像に関する実演家の権利と利用許諾

実況者や解説者の発言やパフォーマンスは、著作権法上の実演として保護されます。そのため、これらを録画したり配信したりするには、本人の許諾の範囲内で利用することが前提となります。
例えば、大会のライブ配信には出演の同意を得ていても、その音声を切り抜いて別の動画として利用してよいかは、また別の問題です。
当日のライブ配信だけでなく、後日のアーカイブ公開やダイジェスト動画の作成を予定している場合は、契約の中でこれらの二次利用についても包括的に合意しておくことが必要となります。

3-3 配信に含まれる音楽・BGMの著作権処理の基本

配信中に流れる音楽についても、権利処理が必要となる点に注意が必要です。
JASRAC等の管理団体への手続きが関係する著作権(楽曲そのものを利用する権利)に加え、音源を制作したレコード会社などが持つ著作隣接権(録音された音源を利用することに関する権利)についても確認が必要となります。
市販の楽曲をBGMとして使用する場合、適切な許諾が得られていないと、プラットフォームの自動検知機能により配信が停止されたり、アーカイブの音声が制限されたりすることがあります。運用上は、ゲーム会社が許可しているゲーム内音楽を利用する方法や、商用利用が認められている音源を使用する方法など、利用条件に応じた対応を検討する必要があります。

第4章 配信映像の二次利用とアーカイブ公開で問題になりやすいポイント

4-1 切り抜き動画やSNS投稿を許容する場合のルール設計

大会の盛り上がりを維持するために、視聴者による切り抜き動画の作成を認めるケースが増えています。しかし、無制限に許可を出すと、不適切な編集がなされたり、スポンサーの競合企業の広告が表示されたりする問題が生じる可能性があります。
運営側としては、あらかじめ二次利用のガイドラインを策定し、非営利目的に限定することや元動画のクレジット表記を求めることなど、許可する範囲や条件を明確にしておくことが有効です。これにより、著作権侵害のリスクを抑えつつ、コミュニティによる拡散を促進することができます。

4-2 アーカイブ公開・再編集・ハイライト動画での利用範囲の整理

ライブ配信後のアーカイブ公開やハイライト動画の作成では、出演者との契約条件との関係に注意が必要です。特に、期間限定で出演を依頼しているゲストがいる場合、契約期間終了後もその出演部分を含む映像を公開し続けてよいのかが問題となります。
例えば、イベント当日の出演のみを前提とした契約であった場合、アーカイブ動画の公開が契約期間を超えて継続されることで、当初想定していない利用と評価される可能性があります。
このような問題を避けるためには、契約書においてアーカイブ公開の期間や、契約終了後の取扱いについてあらかじめ明確に定めておくことが重要です。

4-3 スポンサー表示や広告利用と権利関係の整理

大会配信で制作した映像は、配信後にSNS投稿やプロモーション素材として再利用する場面が想定されます。特に、スポンサーが関与している場合には、こうした映像を広告素材として活用することも検討されるでしょう。
しかし、広告素材としての利用は、配信とは異なる目的での利用にあたる可能性が高く、許諾範囲との関係に注意が必要です。例えば、選手の肖像やゲーム画面をそのまま広告素材として使用する場合には、それぞれの権利者から広告利用に関する承諾が得られていることが前提となります。

第5章 権利侵害を防ぐために契約書・利用規約を整備しておく

5-1 参加規約で定めておきたい権利帰属と利用許諾の範囲

多数の参加者が集まるeスポーツ大会では、一人ひとりと個別に契約書を締結することが現実的でないため、大会参加規約が配信や二次利用に関する権利関係を整理するうえで重要な法的根拠の一つとなります。
規約には、例えば以下のような内容を盛り込むことが考えられます。
・権利の帰属:大会配信映像に関する著作権(映画の著作物の著作権等)が主催者に帰属する旨
・肖像利用の同意:配信、アーカイブ公開、広報活動への利用について包括的に承諾する旨
・免責事項:配信トラブルや第三者との紛争に関する責任の範囲を一定程度限定する旨
これらを適切に記載し、参加申し込み時に同意を取得する仕組みを整えることが、運営側のリスク管理を行ううえで重要となります。

5-2 出演者契約で明確にすべき配信・二次利用の条件

実況者やプロ選手など、個別に依頼を行う出演者については、参加規約とは別に契約書を締結し、配信・二次利用の条件を個別に合意しておくことが重要です。特に、対価と利用範囲の関係を明確にしておくことが、後のトラブルを防ぐうえで不可欠となります。(出演料にはライブ配信だけでなく、アーカイブ公開やSNSでの切り抜き利用まで含まれるのか等)
また、競合する他社大会への出演制限(いわゆる排他条項)を設けることにより、特定の出演者を継続的に起用するような場合、大会のブランディングや集客の安定につながるメリットが見込めますがこのような出演制限を設ける場合には、その期間や対象範囲が過度に広くなると契約の有効性が問題となる可能性もあるため、合理的な範囲に収める判断が必要といえます。

第6章 【FAQ】eスポーツの配信でよくある疑問

Q1. 配信で実際にトラブルになりやすいのは、どのような場面ですか?

A1. 二次利用と権利範囲のズレは特に注意が必要です。

ライブ配信自体は問題なく行えていても、その後のアーカイブ公開や切り抜き動画の利用において、当初の許諾範囲を超えてしまうケースが多く見られます。特に、出演者の音声や映像、スポンサー表示を含んだまま別用途で利用した場合に、後から削除要請や条件変更を求められることがあります。

Q2. スポンサーが入った時点で、配信の扱いはどのように変わると考えるべきですか?

A2. 営利利用として扱われる可能性が高いといえます。

スポンサーのロゴ掲出や広告的な演出が加わることで、配信は単なる実況ではなく商業的な利用と評価されやすくなります。その結果、ゲーム会社のガイドラインの適用範囲外となるようなケースや、追加の許諾が必要となる場面が生じることがあります。

Q3. 複数のゲームタイトルを同じ大会で扱う場合、すべて個別に許諾を取らないといけませんか?

A3. タイトルごとに条件を確認する必要があります。

ゲームごとに利用条件や配信ルールが異なるため、一つのタイトルで問題がなかった運用が、別のタイトルでは許可されていないということもあります。大会として統一的に扱うのではなく、それぞれの条件を個別に確認することが重要です。

第7章 eスポーツ配信は事前の権利整理で結果が大きく変わります

eスポーツ配信では、ゲーム会社の利用条件、出演者の権利、音楽の取扱いなど、複数の要素が重なり合います。どれか一つでも整理が不十分なまま進めてしまうと、配信後の利用制限や想定外の対応が必要になる場面が生じることがあります。
一方で、これらの権利関係をあらかじめ整理し、規約や契約に落とし込んでおくことで、配信後の活用や展開まで見据えた運営が可能になります。実務では、「どこまで許されているのか分からない」「この運用で問題ないのか判断がつかない」といった場面で手が止まるケースも少なくありません。
こうした判断に迷う段階で整理しておくことが、結果としてスムーズな大会運営につながります。eスポーツ配信に関する権利処理や契約実務についてお悩みの際は、Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループまでお気軽にご相談ください。

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