経営理念ってなに?①
さて、今回からのテーマは「経営理念ってなに?」です。
壮大なテーマなので何回の執筆で終わるのか予測できませんが、楽しんでいただけるような内容にしていきたいと思います。
よく「経営理念って大事だ」という言葉を聞きます。
一方で「経営理念で飯が食えるか!」という言葉も聞きます。
果たしてどうなのでしょうか?
結論として、私は「経営理念って大事だ」と思っています。
なぜなのか?
それは、経営理念が経営の全ての行動の起点となるからです。
「今までにないサービスを作り、それを当たり前の世の中にしたい」という理念があれば、新サービスの開発に力を入れるでしょう。
「お客様に最高のおもてなしをしたい」という理念であれば、笑顔と気配りを重視した接客をするでしょう。
もちろん私が属するKOMODALAWOFFICEにも「全ての人・企業の人生を豊かにする」という経営理念がありますので、その実現に向けて日々みんなで頑張っています。
そのような経営理念を実現するためには、もちろんお金がかかるので金融機関からお金を借りたり、自分一人では実現までに時間がかかってしまうので社員を採用したりして、会社を拡大させていくことになります。
その中において、社員にも同じ経営理念を共有してもらい、行動して欲しいと思うのが経営者の正直な気持ちだと思います。
ただ、実際に多くの経営者が社員に伝えていることと言えば「集中して取り組みなさい」「笑顔で接しなさい」「訪問してきなさい」「話を聞いてきなさい」という「やらなければならないこと」ではないでしょうか?
「何のためにやるのか?」「何を実現したいのか?」という経営理念の共有を疎かにしていることがほとんどです。
では「やらなければいけないこと」だけを伝えて社員は動くのでしょうか?
社員が100人いれば100人のパーソナリティが存在します。
つまり、社員には感情があり、ロボットのように忠実に動く存在ではありません。
それぞれの生活があり、それぞれに家族があり、それぞれに歩んできた道があるので価値観が違います。
それを無視して一方的に「やらなければいけないこと」だけを伝えて行動させようとしても、その行動に目的や意味を感じなければ社員はなかなか動いてくれません。
目的や意味を感じないまま行動を強制されると、人はモチベーションが下がります。
モチベーションが下がると何かにつけ不満を感じるようになるため
「搾取されないように、せめてお金だけでもしっかりもらわなきゃ」
「自分の不満を共有する仲間を作らなきゃ」
「なんとしてでも俺の命令に従わせるぞ」
というように、ネガティブな思考に繋がりやすくなるため、労働トラブルやいじめ、パワハラなどが起こりやすくなります。
そこには「何のためにやるのか?」「何を実現したいのか?」というような思考はないのです。
そのため、経営理念を社員と共有することは大事になってきます。
経営理念は経営者が社員や世の中に伝えたいことが凝縮されたものであり、仕事の目的や意味もその中に込められていますので、伝えて共有をしていくことが社員に自立的に動いてもらうための第一歩となるのです。
ただ、伝え方の工夫は必要です。
例えば「誠実」のように漢字2文字の道徳的な一言だけだったらどうでしょう?
大事な価値観であることは理解できますが、だからと言ってどう捉えてどう行動すればいいのかを受け取った人に委ねているような気がしますので、伝わりやすいとは言えないですよね。
経営理念が伝わるには、
「会社が何を実現しようとしているのか?」
「どんな価値をお客様に与えようとしているのか?」
「どんなことを大切にしていきたいのか?」
これらが言葉として表現されているかを意識して作る必要があります。
ちなみに、人は目的や意味のないことを強制させられることほど苦痛なことはないということがよくわかるお話しがあります。
昔のヨーロッパにおいて、囚人に穴を掘らせては看守が埋め、また掘らせては埋めるということを延々と続ける刑罰があったそうです。
せっかく穴を掘っても、それを否定されるかのように穴を埋められる、つまり意味のないことを延々とさせられるということなのですが、これをやられると気が狂ってしまうそうで精神的苦痛を与える刑罰としては効果が絶大だったようです。
もしかしたら、仕事の目的や意味が社員に伝わっていない会社は、これと似たようなことが社内で起こっているのかも知れません。
では、この穴を掘る作業に目的があるならばどうでしょう?
「穴を掘ることで古代の遺跡が見つかり、歴史的な発見の瞬間に立ち会えるかもしれない」
という目的があれば、穴を掘る作業は歴史を塗り替える瞬間に立ち会えることを意味するので、
「頑張ってみよう」
という気持ちになりませんか?
つまり、穴を掘ることを名誉なこととして捉えることができれば穴を掘る意欲も増すということです。
このように、仕事をやることの目的や意味がきちんと会社から社員に伝わって共感されている状態であれば、その会社は活気のある会社と言えます。
そして、そのような活気のある会社であればネガティブなことが起こりにくくなるため、労働トラブルなども自ずと減っていくということが言えるのです。
今回は経営理念がなぜ大事かということをお話ししてみました。
次回から、
「じゃあ経営理念って具体的にどんなものなの?」
ということについてお話しをしたいと思います。
社会保険労務士法人菰田総合コンサルティングでは、企業向けに社員面談や管理職研修、経営者向けに理念策定と浸透のサポート等の人事コンサルティング業務も行っております。
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