労災保険ってなに?④~通勤災害編 その2~
前回のブログでは通勤災害の「通勤」の定義について解説を行いました。
前回のブログはこちらから:労災保険ってなに?③~通勤災害編 その1~
今回は通勤災害として認定されるための「合理的な経路及び方法」について解説していきたいと思います。
まずは「合理的な経路」です。
それは「社会通念上一般に通行するであろうと考えられる経路」のことを言います。
そのため、無用な回り道をしている場合は認められない可能性が高くなります。
合理的な経路として認められる事例 |
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・乗車定期券に表示されている経路 ・乗車定期券には表示されていない経路でも、代替と考えられる経路 ・会社に届出ている経路 ・タクシー等を利用する場合に、通常利用することが考えられる経路が2.3ある場合のその経路 ・経路の道路工事、デモ行進等、当日の交通事情により迂回して通る経路 ・共稼ぎで子を監護してくれる人がいない者が子供を託児所に連れていく経路 |
合理的な経路に該当しない事例 |
・特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる経路 ・鉄道線路、鉄橋、トンネル等を歩行する場合の経路 |
次は「合理的な方法」です。
それは「社会通念上一般に是認されるであろうと考えられる手段」のことを言います。
合理的な経路として認められる事例 |
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・徒歩の場合 ・鉄道、バス等公共交通機関を利用する場合 ・自転車、自動車を本来の用法に従って利用する場合 |
合理的な経路に該当しない事例 |
・免許を一度も取得したことがない者が自動車を運転する場合 ・自動車、自転車を泥酔して運転する場合 |
(とは言え、事情を勘案し保険給付が全て不支給、あるいは一部支給など制限はされるようです)
詳しく書くと難しく感じますが、会社にいくために、常識的な経路を、常識的な方法で通勤すれば何も問題はないということです。
次に「逸脱」と「中断」です。
通勤経路から「逸脱」したり、通勤を途中で「中断」すると、その後の移動は通勤とみなされないのが原則になります。
ただし、その「逸脱」と「中断」の例外が2つあります。
②「日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うための最小限度の逸脱や中断」
この2つが「逸脱」「中断」の理由となった場合は通勤災害として認められます。
・経路の近くにある公衆便所を利用する場合
・帰途に経路の近くにある公園で短時間休憩する場合
・経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合
・手相見、人相見に立ち寄って極く短時間手相や人相を見てもらう場合
よく考えると、手相をじっくり時間をかけて見てもらう場合は「ささいな行為」にはならないということになりますね!
・独身労働者が通勤途中で食事をする場合
・帰途に夕飯の総菜を購入する場合
・クリーニング店に立ち寄る場合
・公職選挙の投票に寄る場合
注意して欲しいのは、例えば選挙の投票所に立ち寄った後の災害は通勤災害の対象となるのですが、投票所で災害が起こった場合は対象外ということです。
ちなみに、どんなことをすると「逸脱」「中断」に該当するか例をあげますね。
・通勤の途中で映画館に入る場合
・通勤の途中で飲み屋やビヤホール等において長時間にわたって腰を落ちつけるに至った場合
・デートのために長時間にわたってベンチで話し込んだり経路から外れる場合
簡単に整理すると、娯楽や恋愛などが絡んだり、時間が長くなってしまうと、そこからはプライベートの時間となり、例え通勤経路に戻って帰宅しようとしても、それは通勤ではないということになります。
次回のブログで労災保険の保険給付を解説したいと思いますが、労災の場合、一般の医療保険より給付内容がかなり手厚くなっています。
つまり、会社の帰宅途中に遊びにいくために逸脱する場合、逸脱前であれば通勤災害として労災保険、逸脱後であれば医療保険が適用されることになるので、「逸脱前と後、どちらで災害に遭ったほうがトクか?」と聞かれると、労災保険が適用される逸脱前ということになります。
そのため、会社からの帰宅途中に遊びに行くときは、「私は今から逸脱するので事故に遭ったら労災保険ではなく医療保険だわ」という認識をもち、注意深く遊んでもらえればと思います!
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。