都市部の住宅や収益物件と違い、山林や原野の相続登記は後回しにされがちです。
「どうせ使わない」「売れない」「価値がない」などといった理由で放置されている土地は、実は全国に膨大な数が存在します。
しかし、登記がされないまま放置された山林や原野は、時間の経過とともに権利関係が複雑化し、将来の相続人に大きな負担を残すことになります。
1. 「価値がない土地」は本当に無関係なのか
山林や原野は、固定資産税がほとんどかからないことも多く、売却も難しいため、相続人の意識から抜け落ちやすい財産です。
実際の相続手続きでは、自宅や預金、株式など目に見える財産の分割が優先され、「山の土地があるらしい」という話は最後に回され、結局何も手続きをしないまま放置されるケースが存在します。
ところが、登記名義が被相続人のまま残るということは、法律上の正式な所有者が確定しない状態が続くことともいえます。
これは単なる事務手続きの問題ではなく、権利の所在が曖昧な土地が社会に残り続けることを意味します。
2. 放置が招く「相続人の増殖」
山林の相続登記が厄介になる最大の理由は、時間が経つほど相続人が増えていくことにあります。
例えば、祖父が所有していた山林を父が相続登記しないまま亡くなり、さらにその子世代に相続が発生すると、法定相続人は一気に増えます。兄弟姉妹、その子ども、配偶者などが絡み、10人以上になることも珍しくありません。
登記をしないまま世代が進むと、「そもそも相続人が誰なのか」を調べるだけで膨大な作業が必要になります。
さらに、相続人の中に行方不明者や海外在住者がいる場合、話し合いすら困難になります。
3. 「価値がない」は「処分できない」に変わる
山林や原野は、相続人にとって魅力的な財産でないことが多い一方で、いざ処分しようとすると意外な壁にぶつかります。
売ろうとしても、名義が祖父や曽祖父のままでは売買契約を結ぶことができません。
また、寄付や権利の放棄がしたくても、簡単には手放せません。その結果、「価値がないから放置した土地」が、「手続きをしないと何もできない土地」に変わってしまいます。
4. 相続登記義務化との関係
2024年から、相続登記は法律上の義務となりました。
しかし、義務化によってすぐに山林の問題が解消されるわけではありません。すでに何十年も放置されている土地については、相続関係の整理自体が困難になっているためです。
過去の放置が、現在の相続人に大きな負担としてのしかかる構造は、山林や原野で特に顕著に現れています。
5. 最後に
山林や原野は、日常的に利用されることが少ないため、相続の際にも後回しにされやすい傾向があります。
しかし、土地の状況や権利関係が整理されないまま時間が経過すると、後になって確認や手続に手間がかかることもあります。
早い段階で現状を把握し、どのような状態にあるのかを整理しておくことで、将来の相続や管理をよりスムーズに進めることができます。
