相続登記が完了していれば、名義の問題はすべて解決しているように思われがちですが、実際には登記簿には表れにくい“見えない問題”が原因で、売却や手続に支障が出てしまうことがあります。
「相続登記はきちんと済ませたはずなのに、不動産を売ろうとしたら話が進まない」
このようなケースに備えて、今回はポイントを解説します。
目 次
1. 相続登記=売却準備完了、ではない
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続です。確かに、売却の前提として相続登記は不可欠ですが、それだけで必ずしも「売れる状態」になるとは限りません。
1-1. よくある「見えない問題」① 住所の不一致
相続登記の際、相続人の住所は住民票などをもとに登記されます。しかしその後、引っ越しをして住所変更登記をしていない場合、
- 登記簿上の住所
- 現在の住所
が一致しない状態になります。
このズレは日常生活では問題にならなくても、売買による所有権移転登記の場面では支障となることがあります。このような場合は、前提として住所変更登記が必要です。
1-2. よくある「見えない問題」② 相続人が複数いる共有状態
相続登記をした際に、不動産が相続人全員の共有名義になっているケースです。
共有名義自体は違法ではありませんが、不動産を売却するには共有者全員の協力が必要です。
- 連絡が取れない相続人がいる
- 意思がまとまらない
- すでに亡くなっていてさらに相続が発生している
こうした事情があると、登記簿上は問題がなくても、実際には売却が困難になります。
1-3. よくある「見えない問題」③ 古い抵当権や記載の残存
相続登記とは別に、登記簿には完済した過去の住宅ローンの抵当権や、すでに意味を失っている登記が残っていることがあります。
長年放置されていた不動産ほど、「完済したはずの抵当権が抹消されていない」「原因が分からない登記が残っている」といった事例が見られます。
これらは日常的には気づきにくいものの、売却時には必ず確認され、整理が必要になることがあります。
2. まとめ:登記は「点」ではなく「状態」で見る
相続登記が完了しているかどうかは重要ですが、それだけで不動産がスムーズに動かせるとは限りません。
登記簿の記載内容、住所の履歴、共有関係、過去の権利関係などが現在の状況と整合しているか――この「状態」を確認することが、不動産を売却・活用するうえで欠かせません。
相続登記後、長期間そのままになっている不動産については、一度登記簿を見直してみることで、思わぬ問題に早めに気づけることもあります。
「名義は変えたから大丈夫」と思っている不動産こそ、実は注意が必要なのかもしれません。
