休眠担保権とは、長期間にわたり権利行使されることなく、現在まで放置された担保権(主に抵当権)のことを指します。
例えば、不動産を相続した際に、登記簿に古い抵当権が残っていることに気づくことがあります。
このように、昔に付けられた抵当権などの担保権が現在も登記簿に残っているケースについて、今回は概説します。
1.古い抵当権の問題点
まず、抵当権の基本について触れておきます。
抵当権は、不動産を担保として債権者に設定される権利であり、債務が履行されない場合に、その不動産を売却して優先的に弁済を受けることができます。
明治時代の抵当権は、当時の法制度に基づいて設定されたものであり、現在もその効力を有している場合があります。
このように、抵当権などの担保権は、債務不履行が発生した際に債権者が優先的に弁済を受けるための権利ですが、その権利が長期間行使されないまま残っていると、取引の安全性や不動産の流動性に影響を与える可能性があります。
原則として、借金を既に返済済みであれば、抵当権が実行されることはありません。
しかしながら、土地の売却や新たな借り入れによって抵当権を設定する際は、抵当権が付いたままだとスムーズに取引することができなくなってしまいます。
2.抹消手続き
借金を全額返済するだけでは、抵当権が登記簿から抹消されることはありません。
原則として、不動産所有者と抵当権者が共同で抵当権抹消登記を法務局に申請する必要があります。
例えば、明治時代に設定された抵当権を抹消したい場合に、抵当権者と連絡が取れないケースがあります。
例として、下記の条件をクリアしていれば、土地所有者が単独で抵当権の抹消登記を申請することができます。
- ①担保権者の所在が知れないこと
- ②弁済期から20年経過していること
- ③被担保債権、利息、遅延損害金の全額を供託したこと
具体的には、次の手順となります。
- ① 抵当権者へ配達証明付き郵便を送付
- ② 閉鎖登記簿謄本を取得
- ③ 弁済金他を供託
- ④ 登記申請
登記申請には、「登記義務者(抵当権者)の所在が知れないことを証する情報」を添付します。
登記簿に記載された抵当権者の住所へ配達証明付き郵便を送付し、「あて所に尋ねあたりません」として戻ってきた場合、その封筒が法務局への添付書類となります。
そして、閉鎖登記簿謄本を取得し、被担保債権に係る元本、利息、遅延損害金の計算を行い、その全額を供託します。
その後、必要書類を添付して法務局に登記申請を行います。
3.最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は古い抵当権の抹消について概説しました。
一定期間行使されない担保権を自動的に抹消する制度は現在のところ存在しません。
お困りの際は、身近な司法書士にご相談ください。
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