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医療法人の持分を離婚時の財産分与で主張された場合|持分の評価基準と財産分与割合の考え方を弁護士が解説

2026.06.10

持分あり医療法人を経営されている先生が離婚する場合、相手方から医療法人の持分を財産分与の対象として主張されることがあります。特に、医療法人の純資産が大きい場合、「法人の純資産に出資割合を掛けた金額の半分」を支払うべきだと主張されると、財産分与の額が億を超えてくるようなことも想定されます。
本記事では、医療法人の持分を財産分与として主張された場合に、持分の評価額をどのように考えるのか、財産分与割合について医師側の寄与を主張できるのかについて、弁護士が解説します。

 

第1章 離婚時の財産分与における医療法人の持分の考え方

1-1 医療法人の持分は離婚時の財産分与の対象となる可能性がある

持分あり医療法人の場合、医師本人が保有している医療法人の持分は、退職時や解散時に一定の財産的価値を主張し得るものとして扱われます。
そのため、離婚時には、相手方から「医療法人の持分にも経済的価値がある以上、夫婦で築いた財産として分与対象に含めるべきだ」と主張されることがあります。
特に、婚姻後に開業し、その後に医療法人化したケースや、婚姻期間中に医療法人の内部留保が大きく増加したケースでは、医療法人の価値形成に婚姻期間中の夫婦の協力があったとして、財産分与の対象性が争われやすくなります。
もっとも、医療法人の持分が財産分与で問題になるとしても、相手方が主張する評価額や分与割合がそのまま認められるとは限りません。

1-2 配偶者が持分をもっているかどうかは財産分与の対象の有無に関係するのか?

医療法人の持分が財産分与の対象になるかどうかは、相手方配偶者自身が医療法人の持分を保有しているかどうかとは別の問題です。
財産分与で問題になるのは、医師本人が保有する持分について、その持分価値が婚姻中の夫婦の協力によって形成・維持された財産といえるかどうかです。そのため、相手方配偶者が医療法人の持分を持っていない場合でも、医師本人の持分が財産分与の対象として主張される可能性はあります。

反対に、相手方配偶者が医療法人の持分を持っているからといって、医師本人の持分を当然に半分ずつ分けるということにもなりません。医師本人の持分と配偶者側の持分は、それぞれ取得経緯、出資割合、婚姻前後の価値形成、法人運営への関与状況などを踏まえて整理する必要があります。
なお、配偶者も医療法人の持分を保有している場合には、配偶者側の持分自体も離婚時の財産関係の中で評価・清算の対象になり得ます。また、配偶者が社員や出資者として医療法人に関与している場合には、離婚条件だけでなく、離婚後の法人運営や持分払戻しリスクについても別途検討が必要になります。

1-3 持分の取得時期や取得理由によっては夫婦の共有財産から除外される可能性もある

医療法人の持分が財産分与で問題になる場合でも、持分価値のすべてが当然に夫婦共有財産になるわけではありません。
たとえば、婚姻前から医師本人が持分を保有していた場合には、少なくとも婚姻時点におけるその持分価値は、特有財産として財産分与の対象から除外すべきだと主張できる余地があります。また、婚姻後であっても、親族から相続・贈与などによって持分を取得した場合には、少なくとも取得時点におけるその持分価値については、夫婦の協力によって形成された財産ではないとして、こちらも財産分与の対象から除外すべきだと主張できる可能性はあります。

 

第2章 財産分与における医療法人の持分の清算方法

2-1 財産分与時は持分を金銭評価の上で清算するのが一般的

医療法人の持分が財産分与の対象になる場合でも、相手方に医療法人の持分そのものを移転する形で分与するのは通常想定しにくいです。
医療法人は診療を継続するための法人であり、経営権は診療体制とも密接に結びついていることから、実務上は、医師本人が持分を保有し続けることを前提に、持分の経済的価値を評価し、その評価額を踏まえて金銭で清算する形が中心になります。
なお、相手方配偶者がすでに医療法人の持分を保有している場合には、その持分をどう取り扱うかは財産分与を進める中で別途取り決める必要があります。

2-2 相手方も医療法人の持分を保有している場合の財産分与の考え方

相手方配偶者が医療法人の持分を保有している場合には、医師本人の持分だけでなく、配偶者側の持分についても、離婚時の財産分与の中で考慮する必要があります。
配偶者側の持分が婚姻中に取得されたものであれば、その持分価値も財産分与上の清算対象として考慮される可能性がありますが、たとえば、医療法人の設立時に社員構成を整える目的で配偶者名義の持分が設けられていた場合や、実際の出資原資が医師本人側・親族側から出ていた場合には、名義どおりに配偶者の持分価値として評価してよいかが問題になります。そのため、名義だけで判断せず、取得経緯や出資原資、法人運営への実質的な関与状況を踏まえて、財産分与上の評価を検討することが重要です。

また、配偶者が持分を保有している場合には、財産分与上の評価だけでなく、離婚後にその持分をどう取り扱うかも併せて検討が必要になります。
離婚条件を決める際には、配偶者の持分を医師本人が買い取る、配偶者が退社して払い戻しを受けるなど、持分の取り扱いを決めたうえで、離婚協議書に加えて、持分移転に関する合意書等の書類整備を行っておきましょう。
なお、離婚後も配偶者が持分を保有し続ける場合は、双方の持分の割合によっては医療法人の意思決定や運営に支障が生じる可能性がありますので、この選択肢を取る場合は将来的なリスクの部分も踏まえての判断をされてください。

 

第3章 実際の財産分与におけるポイント(分与割合と持分の持分評価額の算定)

3-1 医療法人の持分の財産分与割合は5:5から修正の余地はある

医療法人の持分を財産分与で主張された場合、「持分評価額がいくらか」という問題と、「その評価額のうち何割を相手方に分与するか」という問題は分けて考える必要があります。
たとえば、医療法人の持分評価額が10億円と算定されたとしても、当然にその半額である5億円を相手方に支払うと決まるわけではありません。
医療法人の持分価値には、医師本人の専門性や診療技術など、医師本人に強く結びついた要素が反映されていることがあるため、医療法人の持分価値の形成における医師本人の寄与が大きいとして、財産分与割合を修正すべきだと主張できる可能性はあります。

もっとも、医師であることだけを理由に、当然に分与割合を大きく下げられるわけではありません。
裁判所は、夫婦の一方が外で収入を得て、他方が家事や育児を担っていた場合でも、家事・育児による間接的な貢献を財産形成への寄与として評価します。そのため、相手方が医療法人の経営に直接関与していなかったとしても、それだけで相手方の寄与が否定されるわけではありません。
医師側として分与割合の修正を主張するのであれば、医療法人の価値形成が一般的な夫婦の協力関係を超えて、医師本人の特殊な専門性や経営努力に強く依存していたことを具体的に説明する必要があります。
なお、相手方である配偶者がクリニックの経理や事務作業などで医療法人の運営に関与していた場合には、財産分与割合の判断時に考慮されることがあるため留意が必要です。

3-2 持分評価額は純資産額のみを基準にするのではなく現実に即した形で算定をする

また、財産分与割合を検討する前提として、医療法人の持分評価額自体が適正に算定されているかも重要な観点です。

医療法人の持分評価では、医療法人の純資産価額に医師本人の出資割合を掛けた金額が、評価の起点とされることがありますが、医療法人の資産には、現預金だけでなく、クリニックの土地建物や医療機器、リース資産など、医師個人が自由に処分できる類の財産ではないものも含まれています。
さらに、現預金についても、診療を継続するための運転資金やスタッフの給与原資・退職金原資などを含んでいますし、医療機器や不動産についても、帳簿価額と時価が一致するとは限りません。
こういった点を一切考慮せずに決算書上の純資産額をそのまま持分評価のベースとして扱うと、実際には換価できない資産や、診療継続のために法人内に留保すべき資金まで、分与対象の持分価値に含まれてしまい、実際の評価額と大きく乖離してしまうおそれがあります。

そのため、医療法人の持分評価額を算定するにあたっては、単に純資産額や簿価のみを前提にするのではなく、資産の実際の価値、換価可能性、診療継続に必要な資金、将来支出の見込みなどを踏まえ、医療法人の実情に即した現実的な算定根拠を示したうえで、財産分与額を検討していく必要があります。

 

まとめ

医療法人の持分をめぐる離婚問題では、離婚法務だけでなく、医療法人の会計、税務、経営実態を踏まえた検討が求められます。相手方から高額な財産分与を請求されている場合や、提示された持分評価額に疑問がある場合には、早い段階で専門家に相談し、資料整理と反論方針を準備することが大切です。

Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士等が連携し、医師・医療法人の離婚問題について、法務・税務・法人経営の観点からサポートしています。医療法人の持分を財産分与で主張されている場合や、離婚条件の妥当性に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

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