「事業承継は専門家に任せましょう」と言われても、弁護士・税理士・中小企業診断士・M&A仲介など、誰に相談をすればいいのかに悩まれる方も多いかと思います。
どの専門家に相談すべきか?という点も含めて、事業承継のケースに応じた専門家選定のポイントを弁護士が解説します。
もくじ
1. 事業承継で“専門家”が不可欠になる場面とは?
事業承継は「株をどう渡すか」だけでは終わりません。株価や税金、金融機関との保証交渉、親族・従業員・買い手との調整まで、法務・税務・財務のそれぞれの範囲で対応すべきことが発生するため、専門家が介在しないまま進めるのは現実的には難しいといえます。
1-1 具体的に専門家の力が求められる主な場面
- 株価算定と税負担予測 (自社株の評価方法を誤ると贈与税が数千万円単位で跳ね上がります。税理士が複数方式で試算し、事業承継税制や退職金を組み合わせることで、実質負担を圧縮できます。)
- 個人保証・担保の解除交渉 (金融機関との条件交渉が難航した場合、弁護士が代理人として交渉)
- 会社分割による不採算事業切り離し (債務超過の場合の改善計画の一環として実施することで、赤字部門を分離し黒字部門だけを後継者や買い手に引き継ぐ)
- 経営権分散・親族間トラブルの防止 (相続による事業承継の場合、経営権が分散しないような形での遺産分割を弁護士が実施)
- 補助金・優遇税制の活用 (事業承継税制や補助金などの活用を専門家主導で実施)
その他、事業承継に伴う従業員対応や、社会保険・税務署手続など、実務上の手続に関しても専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいでしょう。
2. 事業承継の相談先として代表的な専門家とは?
2-1 弁護士
主に法務面を全般的にカバーする専門家として、事業承継にかかる各種契約書作成(株式譲渡、会社分割など)、リーガルチェック・法的リスクチェック、相続時の対応などまで幅広く対応可能。万が一の交渉や訴訟対応も代理できる唯一の資格者です。
2-2 税理士・公認会計士
主に税務面を全般的にカバーする専門家として、税務面のシミュレーションや株価評価、各種税制の適用検討などを行うほか、財務デューデリジェンスの実施も請け負います。
2-3 中小企業診断士・承継コンサル
事業性評価と経営計画づくりを専門とする中小企業診断士は、現経営者・後継者双方のヒアリングを通じて事業計画書を作成し、補助金申請や後継者育成プログラムを支援します。各都道府県の承継支援センターなどで相談をすることができます。
2-4 M&A仲介会社・ファイナンシャルアドバイザー(FA)
第三者承継を検討する場合、仲介会社は売り手と買い手をマッチングし、条件交渉からクロージングまで一括サポートします。一方 FA は売り手側または買い手側の “片側代理”として戦略立案・企業価値算定・入札管理を行い、利益相反リスクを抑えられるのが特徴です。
3. ケース別:どの専門家に最初に相談すべきか?
3-1 親族承継で株価と税負担が重いケース
①内部留保や含み益不動産を抱えて株式時価そのものが高い、②兄弟姉妹に株数が分散し後継者が過半数取得するのに多額の買付資金が要る、③上場準備や優先株が絡みスキーム選択肢が限られるといった、評価額・税額・取得資金の面でハードルが存在する状態での場合、優先的に相談したいのは税理士・公認会計士です。
まずは税務面についての検討を行ったうえで、場合によっては弁護士が株式設計等を含めて法律面からのサポートに入ります。
3-2 第三者M&Aで買い手探しから着手したいケース
事業承継先を自身だけで見つけられないような場合は、M&A仲介やFAに相談の上でM&A候補先の選定から条件交渉・クロージングまでをサポートしてもらうことを優先するのが望ましいです。正式に事業承継先が決まった段階で、弁護士による法務デューデリジェンス、税理士による財務デューデリジェンスを実施し、適切な会社評価を実施し、それに基づき最終的な事業譲渡額を決めるような進め方がよいでしょう。
3-3 債務超過企業を再生しながら承継するケース
債務超過の状態から事業再生を行いながら事業承継を進めるような場合は、まずは弁護士に相談の上で事業再生手続きを含めた法的対応をメインに進めます。
債務超過の度合いによっては事業継続が極めて困難という場合もあるため、そうなると事業を閉じる(法人破産)というようなケースも想定せざるを得ないかもしれませんので、方針検討の観点からも弁護士に優先的に相談をするのが望ましいです。
事業承継を進めるうえで、どの専門家に相談をすべきかが分からないとお悩みの方は多いです。
法務・税務・金融など多岐にわたる課題を整理し、複数の専門家に横断的にサポートを受けることが事業承継をスムーズに実行するためには重要といえます。
当事務所では、弁護士だけでなく税理士・社労士など複数の士業が在籍し社内連携できる体制を取っており、複数分野にまたがる事業承継の業務を一貫してご対応可能です。
事業承継の方法や税務面での対策も含めて、ご状況に応じた最適な事業承継スキームを構築しご提案をさせていただきますので、まずは一度ご相談ください。