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M&Aに弁護士は必要?専門性・費用・活用メリットを徹底解説

2025.04.01

M&Aを検討する際、「弁護士に依頼すべきなのか、それとも仲介会社だけで十分なのか」と悩まれる経営者の方は多いのではないでしょうか。
法務面をカバーできないまま契約を進めてしまい、後々重大なリスクが顕在化してしまう例も決して少なくありません。
また、弁護士に依頼した場合の費用や報酬体系も気になるところでしょう。
本記事では、M&Aを進めるうえで弁護士を活用するメリット・費用・依頼方法などを整理し、専門家の視点からわかりやすく解説します。

1.M&Aに弁護士を依頼する必要性とは

M&Aを検討する際、多くの経営者や実務担当者は「法務面をどこまでカバーしなければならないのか」について悩むことが少なくありません。
一般的にM&A仲介会社やアドバイザリー会社は、企業同士のマッチングや条件交渉の進行などを得意としますが、法的なアドバイスを包括的に行うには限界があります。
特に、大型のM&Aや、複雑な労務・税務問題が絡むケースでは、弁護士をはじめとする専門家を交えて総合的な検証を行うことが不可欠です。
弁護士に依頼せずにM&Aを進めてしまうと、デューデリジェンス(DD)で見落とされたリスク要素が後になって顕在化し、買収後の紛争や追加コストが発生する可能性があります。
また、表明保証条項の不備や契約書の条項が曖昧なままクロージングしたため、想定外のトラブルが買収後に起こる事例もしばしば散見されます。
弁護士であれば、M&Aにおける契約リスクをはじめ、紛争が起きた場合の対応策、労務や税務にまで及ぶ法的問題などを網羅的にチェックできます。
こうした広範なリスクヘッジを行うことで、M&Aの安全性や成功率を飛躍的に高めることが可能なのです。

2. M&Aにおける弁護士と仲介会社の違い

M&Aを進めるにあたり「弁護士」と「仲介会社(FA(ファイナンシャルアドバイザー)含む)」のどちらに依頼すればいいのかは、多くの経営者が抱く疑問です。
両者はそれぞれ役割が異なり、カバーする範囲にも明確な違いがあります。

  • 仲介会社(FA(ファイナンシャルアドバイザー)含む)
  • 一般的には、買い手候補や売り手候補の企業を探し出し、両者をマッチングしたうえで譲渡価額やスケジュールなどの条件交渉を主導します。
    企業価値の算定や、希望条件の調整などに強みをもち、市場動向を踏まえたアドバイスを行います。
    ただし、専門的な法律相談や紛争対応は業務範囲外とされることがほとんどです。

  • 弁護士
  • 契約書の作成やレビュー、法的リスクの評価、労務・税務を含む幅広い分野でのリスク管理などを担います。
    M&Aに関連するトラブルが顕在化した場合の紛争解決も主要な業務領域とします。
    特に雇用問題や税務問題など、企業活動全般にわたる紛争リスクを事前に防ぐためには、弁護士の知見が役立ちます。

仲介会社は「合意に向けて関係者を調整する役割」、弁護士は「法的視点から安全な取引に導く役割」というふうに捉えるとわかりやすいでしょう。
大規模で複雑な案件ほど、弁護士と仲介会社それぞれをうまく使い分ける必要が生じます。

3. 弁護士が果たす具体的な役割

3-1. リスク分析と契約面でのリーガルチェック

M&Aは多種多様な契約書類によって構成されます。
秘密保持契約(NDA)や基本合意書(LOI)、最終契約書などが典型例ですが、これらの作成・レビューを誤ると、買い手・売り手いずれにも深刻なリスクが残ってしまいます。
弁護士は法的観点から契約書の条項を精査し、表明保証や補償条項などが適切に盛り込まれているかどうかをチェックします。
特に表面化していない潜在的債務や雇用上の問題などは、後から訴訟トラブルに発展するケースもあるため、細部まで確認が必要です。

3-2. 交渉戦略の立案・実行サポート

M&Aの価格や契約条件について、相手企業と交渉を重ねる過程で、法的知識が求められる場面は少なくありません。
たとえば、買い手としては潜在リスクを加味したい一方で、売り手は企業価値を最大化したいと考えます。
この調整プロセスで法的な観点から交渉をサポートするのが弁護士の役割です。
リスクが顕在化した場合の対応策や、各条項が訴訟リスクにどう影響するかなどを踏まえ、適切な助言を行います。

4. 費用と報酬形態:弁護士へ依頼する際の目安

弁護士にM&Aを依頼する際、どのような費用や報酬形態になるかは、多くの経営者が気にするポイントです。
代表的な報酬形態を以下に挙げます。

4-1. 着手金・成功報酬の概要

  • 着手金:案件に着手する段階で支払う固定費用です。案件規模や内容の複雑さによって変動します。
  • 成功報酬:M&Aが完了(クロージング)した際に支払われる報酬です。

ただし、弁護士事務所ごとに報酬体系は異なるため、必ず契約前に見積もりや方針を確認しましょう。

4-2. 時間制報酬(タイムチャージ)の活用

最近では、タイムチャージという形態も増えています。
具体的には、弁護士がM&A関連の業務に費やした時間に応じて報酬を支払う方式です。
交渉や契約書レビューなど、長引く可能性がある作業については、タイムチャージが妥当なこともあります。
ただし、業務の内容によっては費用が膨らむ可能性もあるため、事前に使用時間の概算を確認するのが望ましいでしょう。

4-3. 契約書作成やデューデリジェンスなどの費用感

  • 契約書作成・レビュー:数万~数十万円程度
  • デューデリジェンス(法務DDなど):規模にもよりますが、100万円~数百万円以上になる場合も多いです

5.仲介会社だけで十分?弁護士が必要な理由とケース

多くのM&Aは仲介会社やアドバイザリー会社を利用して進められます。
しかし、以下のようなケースでは弁護士に依頼する価値が高いでしょう。

5-1. 法的リスクが高い複雑な案件

企業合併や買収に際し、訴訟リスクや規制当局との関係などが複雑に絡んでいる案件は、仲介会社だけでは十分に対応しきれないことがあります。
弁護士が契約書面を徹底的に検証し、違法リスクや許認可に関する問題を洗い出す必要があります。

5-2. 大型案件や労務・税務問題が絡む案件

取引規模が大きいほど、リスク要素や検討項目も増大します。
また、雇用契約や税金に関する問題は、後から多額の追加費用や罰則などの形で表面化することもあるため、法務・労務・税務の観点を含めて弁護士がしっかりチェックすることが重要です。

5-3. 相手企業との交渉が難航している場合

条件面で折り合いがつかずに行き詰っているなど交渉が難航している場合は、客観的かつ法的観点からの落としどころを判断し交渉を進められる弁護士の介入が有効です。
交渉戦略においても、相手の主張に対してどう反論するのか、どの程度歩み寄るのかといった判断をサポートしてくれます。

6. 労務・税務面までカバーする専門性:当事務所の強み

M&Aでは、単に法務リスクをチェックするだけでなく、労務や税務の問題も重要です。
当事務所グループは、弁護士法人に加えて社労士法人・税理士法人を併設しており、下記のようなトータルサービスが提供できます。

6-1. 労働問題の知見で雇用リスクを軽減

買収対象の会社において、就業規則や労働契約の不備、未払残業代の問題などがあった場合、M&A後に大きなトラブルに発展することがあります。
労働条件や社会保険関連を総合的にチェックすることで、潜在的な労務リスクを可視化し、買収価格や契約条件への反映を正しく行えるのです。

6-2. 適切な税務対策を実現

株式譲渡や事業譲渡、それぞれのスキームにおける税金の扱いは大きく異なり、会社形態や案件の内容によって最適な方法も変わります。
M&Aでネックとなりがちな税務面の検討も、一貫してスムーズに対応します。

法務・労務・税務を一体的に扱える体制は、ワンストップで経営者の不安を解消できるという大きなメリットがあります。
特に、日本の中小企業で多い「オーナー個人と法人の資産区分が曖昧」「就業規則の整備不十分」といった課題に柔軟に対応できる点は大きな強みです。

7. M&A全体の流れと弁護士の関わり方

M&Aは大きく分けると「初期相談・基本合意」「デューデリジェンス」「最終契約・クロージング」の流れを経て進行します。
各段階で弁護士がどのように関わるか、代表的な業務を見てみましょう。

7-1. 初期相談・基本合意(LOI)段階

  • 秘密保持契約(NDA)の作成・レビュー
  • 情報漏洩を防ぐため、先にNDAを結ぶのが通常です。

  • 基本合意書(LOI)のドラフト
  • 大まかな取引条件を文書化します。
    弁護士は、後の契約条項に影響する重要事項がないかをチェック。

7-2. デューデリジェンス(買収監査)段階

  • 資料開示・分析
  • 弁護士は法務チェックリストをもとに契約書類を精査。
    加えて、労務や税務リスクは社労士・税理士などの専門家と連携して確認。

  • 面談・交渉戦略策定
  • 必要に応じて経営陣へのヒアリングや追加資料の請求を行い、リスクや問題点を整理する。

7-3. 最終契約・クロージング後のサポート

  • 最終契約書の作成・リーガルレビュー
  • 過去のデューデリジェンス結果を踏まえ、表明保証や補償条項を盛り込む。

  • 譲渡後の紛争・労務対応
  • クロージング後に発生した問題があれば、必要に応じて弁護士が交渉・調停・訴訟対応を行う。

8. 本コラムのまとめ:弁護士の専門性を活かし、安全かつ戦略的なM&Aを

M&Aは企業の将来を大きく左右する重大な意思決定です。
仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)が買い手と売り手を橋渡しして条件交渉をスムーズに進める一方、法務面・労務面・税務面については専門家の知識を活用することが重要となります。
特に、労務・税務問題が絡む複雑な案件や、中長期的な事業計画に影響を与え得るリスクを抱えている場合には、弁護士による法的サポートが欠かせません。

当事務所では、弁護士・社労士・税理士による一貫した対応が可能です。
労務・税務を含むすべてのリスクを分析し、安心してM&Aを行えるようサポートいたします。
M&Aの進め方でお悩みの方は、ぜひ当事務所をご活用ください。

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