お役立ちコラム

会社を閉じたいと思ったらどうする?|解散・破産・休眠の違いと状況別の手続きを弁護士が解説

2026.05.07

売上の低下や資金繰りの悪化、後継者不在などをきっかけに、会社を閉じることを考えるのも経営者の重要な役目です。しかし、実際に会社を閉じる手続きを進めようとすると、解散・破産・休眠といった複数の選択肢があり、それぞれ進め方も異なります。この記事では、会社を閉じる場面で整理したい考え方と、状況別にどの手続を検討すべきかを弁護士がわかりやすく解説します。

もくじ

第1章 会社を閉じるための4つの選択肢と判断の軸

選択すべき手法は、現在の資産状況や将来の見通しによって分かれます。まずは、自社がどの立ち位置にいるのかを確認するための4つの選択肢を整理します。

1-1 資産が負債を上回る場合の「通常解散・清算」

会社の資産(現預金、不動産、売掛金など)ですべての負債(銀行借入、買掛金、未払税金など)を完済できる場合に選択されるのが「通常解散・清算」です。
債務の弁済がすべて完了した後に残った財産(残余財産)は、株主の持株比率に応じて分配されます。実務上は、売掛金の回収や資産の売却によって現金化したうえで分配するのが一般的ですが、不動産や車両などの資産が残る場合には、現物のまま分配することもあります。
債務をすべて支払うことが前提となるため、債権者との紛争が生じにくく、比較的平穏に会社を消滅させられる手法です。
もっとも、帳簿上は資産が上回っているように見えても、実際の換価価値で評価すると不足が生じるケースもあるため、時価ベースでの確認は不可欠です。

1-2 債務超過で支払いが困難な場合の「法人破産」

負債が資産を上回っており、すべての債務を支払うことができない場合に選択されるのが「法人破産」です。
裁判所に破産手続の申立てを行い、選任された破産管財人が会社の財産を調査・換価したうえで、債権者に対して法律上のルールに従って配当を行います。最終的に会社は消滅し、残った債務については破産手続の中で整理され、会社としての支払義務はなくなります。これが、法人破産の大きなメリットの一つといえます。
しかし、法人破産によって会社としての支払義務がなくなった場合も、経営者が会社の債務の連帯保証人となっている場合には、保証債務として経営者個人に請求が及ぶ点には注意が必要です。

1-3 事業を一時的にストップさせる「休眠」

会社という法人格は残したまま、事業活動だけを長期間停止させるのが「休眠」です。将来的に事業を再開する可能性がある場合や、直ちに解散・清算の判断が難しい場合に検討される選択肢です。
実務上は、税務署や自治体に対して異動届出書等を提出し、売上が発生せず、従業員もいない状態を前提に運営していくことになります。もっとも、会社自体は存続しているため、毎期の税務申告や、法人住民税の均等割など一定の負担は継続します。また、役員の任期満了に伴う登記や各種届出義務も残るため、単に放置しておけばよいというものではありません。さらに、長期間にわたり登記の更新が行われない場合には、法務局により「みなし解散」として扱われる可能性もあります。
そのため、休眠はあくまで一時的な措置として位置付け、将来的に再開するのか解散するのかを見据えて判断することが重要です。

1-4 会社を消滅させずに第三者へ引き継ぐ「M&A・事業承継」

会社を解散・清算するのではなく、株式や事業を第三者に譲渡することで、会社や事業を引き継ぐ方法が「M&A・事業承継」です。事業に一定の収益性や顧客基盤がある場合には、会社を閉じる以外の選択肢として検討されることがあります。
実務上は、買い手候補の探索、条件交渉、基本合意、デューデリジェンス(企業調査)、最終契約の締結といったプロセスを経て進められます。譲渡の方法としては、株式譲渡や事業譲渡などがあり、スキームによって手続や税務上の取扱いも異なります。
会社を存続させたまま経営から退くことができるため、従業員の雇用や取引先との関係を維持できる可能性がある点がメリットですが、必ずしも希望どおりの条件で買い手が見つかるとは限りません。そのため、一定の時間と準備を要する手続であることを踏まえ、資金繰りに余裕がある段階から検討を始めることが重要です。

第2章 会社を閉じる手続はどのように選ぶべきか

2-1 まず確認すべきは「すべての債務を支払えるかどうか」

会社を閉じる手続を選択するにあたって、まず整理すべきなのは、自社の資産と負債の関係です。すべての債務を現実的に支払い切ることができるかどうかが重要な判断基準となります。

2-2 支払いが可能な場合は通常解散・清算を検討する

現預金や売却可能な資産をもとに、銀行借入、買掛金、未払給与、未払税金などを含めたすべての債務を過不足なく支払える見込みがある場合には、通常解散・清算によって会社を整理することが可能です。
注意が必要なのは、解散・清算を前提に手続を進めていたものの、途中で、債務を支払い切れないことが判明するケースです。この場合、清算を続けることはできず、途中で破産手続に切り替える必要が生じます。その結果、これまで進めてきた清算手続が実質的にやり直しとなり、追加で費用や時間がかかる可能性があります。そのため、最初の段階で資産と負債の状況をある程度正確に把握の上で、清算手続きに進むという判断をすることが重要です。

2-3 資金不足で債務を支払えない場合は法人破産などの手続を検討する

試算の結果、債務超過(資産より債務の方が多い状態)や、支払不能(債務を支払えない状態)にある場合には、通常解散の前提を満たさないため、法人破産などの法的手続を検討することになります。

2-4 帳簿ではなく実態ベースで資産状況を把握する

資産と負債のバランスは、帳簿上の数字だけで判断するのではなく、売掛金が実際に回収できるか、不動産や設備を売却した場合にいくらで換金できるかといった点まで踏まえて確認する必要があります。帳簿上は資産が上回っているように見えても、実際に現金化できる金額で評価すると不足が生じることも少なくありません。

第3章 手続ごとに見る会社の閉じ方と進め方

3-1 通常解散・清算を選んだ場合の進め方

すべての債務を支払うことができると判断した場合には、通常解散・清算によって会社を整理することになります。手続は以下のような流れで進みます。

  1. 株主総会での解散決議と清算人の選任
  2. 解散登記および債権者への官報公告
  3. 資産の換価と債務の弁済
  4. 残余財産の確定と株主への分配
  5. 清算結了登記

官報公告には一定期間が必要であり、すぐに手続が完了するわけではありません。
また、先に触れた通り、途中で債務を支払い切れないことが判明した場合には、清算を継続することはできず、途中で破産手続に切り替える必要が生じます。

3-2 法人破産を選んだ場合の進め方

すべての債務を支払うことができないと判断した場合には、法人破産の手続によって会社を整理することになります。手続は以下のような流れで進みます。

  1. 弁護士による受任通知の送付(督促の停止)
  2. 裁判所への破産手続の申立て
  3. 破産手続開始決定および破産管財人の選任
  4. 管財人による財産の調査・換価
  5. 債権者集会の実施および配当
  6. 手続終結(会社の消滅)

破産手続の進行中は会社の財産を自由に処分することはできず、すべて破産管財人の管理下に置かれます。また、裁判所への予納金や弁護士費用が必要となるため、資金が完全に枯渇する前の段階で準備を行う必要があります。

3-3 休眠を選んだ場合の進め方

直ちに解散・清算や破産の判断を行わず、事業の停止にとどめる場合には、休眠という対応を取ることになります。実務上の対応は次のとおりです。
①税務署・都道府県・市区町村への異動届出書の提出
②売上・従業員が発生しない状態での管理
※従業員が残る場合は社会保険・労働保険の手続が必要ですが、休眠の場合、事業活動を停止状態にするため、実務上、従業員は残さないのが一般的です。

もっとも、新たな取引や契約を行わず、請求・支払といった事業活動は停止していても会社自体は存続しているため、毎期の決算や税務申告を行う必要がある点には注意が必要です。また、役員の任期満了に伴う登記(重任登記)や、各種届出義務も継続します。これらを怠ると、過料が科される可能性があります。加えて、長期間にわたり登記の更新が行われない場合には、法務局によりみなし解散として扱われることがあります。
みなし解散となった場合には、登記上も解散した会社として扱われるため、再開時には対外的な評価の面で影響が生じる可能性があります。

3-4 M&A・事業承継を選んだ場合の進め方

会社や事業を第三者に引き継ぐ場合には、M&Aや事業承継の手続を進めることになります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 買い手候補の探索
  2. 条件交渉および基本合意
  3. デューデリジェンス(企業調査)
  4. 最終契約の締結
  5. 引渡しおよび対価の受領

もっとも、買い手が必ず見つかるわけではなく、交渉にも一定の期間を要します。そのため、資金繰りが厳しくなってから動き始めると、途中で事業継続が困難になり、希望する条件での譲渡が難しくなることがあります。
また、M&Aを進める際には、財務資料や契約書類の整理、取引先や従業員への影響の確認、引継ぎの範囲の調整などを並行して進める必要があります。特に、買い手候補からは、売上の状況、主要な契約関係、労務上の問題の有無などについて確認を求められることが多いため、事前に整理しておくことが重要です。
このようにM&A・事業承継は、譲渡に向けた準備を含めて進める必要があります。資金繰りに一定の余裕がある段階から検討を始め、並行して社内資料や契約関係を整えておくことが、円滑な進行につながります。

第4章 法人と個人事業主では何が違うのか

第2章および第3章で見てきたとおり、会社(※会社以外の法人についても基本的には同様です。以下、簡略化のために全て「会社」と記述します。)を閉じる方法は資産や負債の状況によって選択されますが、その影響は法人か個人事業主かによっても異なります。特に重要なのは、債務に対する責任の範囲です。

4-1 会社と個人事業主では債務責任の仕組みが異なる

個人事業主の場合、事業上の負債はすべて事業主個人の負債として扱われます。そのため、事業を廃業しても借入や未払金がなくなることはなく、個人の資産から引き続き支払っていく必要があります。
一方で、会社の場合、原則として会社の負債は法人が負うものであり、会社と経営者個人は別の主体として扱われます。そのため、会社を清算または破産によって終了させた場合でも、直ちに経営者個人がすべての負債を負担することにはなりません。

4-2 会社の場合でも連帯保証があれば個人に債務責任が及ぶ

もっとも、中小企業の実務では、金融機関からの借入に限らず、リース契約や賃貸借契約などを含め、会社の債務について経営者が連帯保証人となっているケースが多く見られます。その場合、会社の債務が破産や清算によって消滅したとしても、保証債務は残り、経営者個人に対して返済が求められます。
そのため、会社の手続を検討する際には、経営者個人としても返済が可能かをあわせて確認し、支払いが難しい場合には、自己破産などの個人の債務整理を同時に検討する必要があります。

4-3 個人事業主・個人連帯保証の場合に必要な債務対応

個人事業主の場合、また会社の代表者として法人債務の連帯保証人となっている場合において、破産での廃業を選ばざるを得ないときは個人としても債務への対応が必要になります。
まず、個人資産で債務をすべて返済できる場合は返済を行うことになり、それ以上の対応は不要です。
個人での返済が難しい場合は、自己破産や債務整理といった手続きを行い、現実的に可能な返済計画を設定してもらう、もしくは債務を免除してもらう方向となります。
自己破産を行うと債務自体は無くなりますが、一度自己破産を行うとその後数年間は新たな融資やローンが組めない、クレジットカードが作れないなどの制約もありますのでその点は留意が必要です。

第5章 会社を閉じる際に付随する手続:従業員・取引先・テナントや設備関連

会社を閉じる手続は、法的な流れだけで完結するものではありません。現場の整理を適切に行わなければ、後から紛争や追加費用が発生するおそれもあります。

5-1 会社を閉じる際の従業員対応

解散や破産を理由とする場合であっても、労働契約の終了にあたっては労働基準法が適用されます。そのため、原則として30日前の解雇予告、または解雇予告手当の支払いが必要です。

解散・破産、休眠の場合

解散や破産の場合には、原則として全従業員の雇用が終了するため、突然に通知することや雇用終了に関する説明が足りないとなると、労使紛争につながる恐れがあります。
いつどのように解雇を伝えるか、必要に応じて顧問弁護士や顧問社労士にも相談の上で進めるのが望ましいでしょう。
また、休眠の場合も事業活動が停止するため、解散・破産と同様に、従業員は原則として整理される(解雇する)のが一般的です。

M&Aの場合

事業が引き継がれる場合には、従業員の雇用も維持されるケースが多く、必ずしも解雇が前提となるわけではありません。ただし、労働条件の変更や配置転換が行われる場合もあるため、事前の説明は同様に必要となります。

従業員との契約関係が終了する場合は、離職票の発行や社会保険の資格喪失手続といった事務対応が必要になりますが、これまで社内の手続を担当していた事務担当者も退職対象となるため、手続が滞りやすくなる傾向があります。そのため、最終出社日から逆算してスケジュールを組み、対応方法を決めておくことが重要です。

5-2 会社を閉じる際の取引先対応

取引先との関係整理では、契約内容の確認と支払いの進め方が重要になります。特に、資金が限られている状況での対応を誤ると、後に問題となる可能性があります。

解散・破産、休眠の場合

会社を閉じる場合は、原則として既存の取引関係を終了させることとなりますが、契約内容によっては一方的に取引を停止することで違約金や損害賠償が発生する可能性があるため、契約書内の解約条項や通知期限を踏まえて対応する必要があります。
また、破産を前提とする場合においては、一部の取引先にのみ取引代金を支払う等の行為は後の破産手続き上問題になる場合がある(偏波弁済)ため、取引先への未払いがある場合は支払う前に弁護士に相談してください。

M&Aの場合

M&Aを行い、既存事業がそのまま引き継がれる場合には、取引先との関係もそのまま継続できるケースが多くあります。ただし、契約主体の変更を行う必要があるほか、それに伴う取引条件の見直しを実施する場合もあるため、事前に取引先への説明を行ったうえで、取引継続についての同意を取得しておけると望ましいです。

取引関係を終了または継続するいずれの場合であっても、契約内容を確認しないまま対応を進めると、後から想定外の請求が発生するおそれがあります。通知のタイミングや支払いの進め方を含め、契約ごとに整理して対応することが重要です。

5-3 会社を閉じる際のテナント・設備関連対応

事務所や店舗などの物件、ならびに設備や車両といった資産の整理は、費用とスケジュールの両面に影響します。契約内容や解約条件を把握せずに進めると、想定外の負担が生じる可能性があるため注意が必要です。

解散・破産、休眠の場合

解散や破産の場合には、会社を閉じることに伴い、テナントの明け渡しや設備の処分が必要になります。
賃貸借契約では、解約予告期間が定められていることが多く、通知のタイミングによっては数か月分の賃料負担が発生します。また、原状回復義務の範囲によっては、まとまった費用が必要となることもあります。設備や車両がリース契約となっている場合には、契約に基づいた返還や精算が必要となり、途中解約に伴う違約金が発生することもあります。

休眠の場合も事業活動を停止する以上、物件や設備を維持し続けるのか、整理するのかを判断する必要があります。事業再開の目途が立っている場合は、テナントや設備を手放さないという方針でもよいですが、維持する場合には賃料や保管費用が継続的に発生するため、事業活動が無い状態でその費用をどう捻出するかという点は必ず試算の上で、費用負担を踏まえた検討が必要です。

M&Aの場合

事業が引き継がれる場合には、物件や設備もそのまま承継されるケースがあります。ただし、賃貸借契約については貸主の承諾が必要となる場合があり、契約の引継ぎができないケースもあります。また、設備についても資産の評価や引渡し条件を明確にしておく必要があります。

第6章 納得のいく形で会社を閉じるために

会社を閉じるという決断は、一つの事業を全うし、新しい人生や事業へ向かうための一つの区切りとなります。
しかし、廃業を決めるタイミングによっては資金面などの問題からスムーズに閉じることができず、場合によっては経営者個人の生活にまで影響が出ることもあります。
債務超過の場合は、ある程度のキャッシュが残っている間でないと従業員への解雇予告手当が払えない、破産にかかる費用が足りないなどの問題も出てきますので、できるだけ早く方針を固めることも重要になってきます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士法人、社会保険労務士法人、税理士法人、司法書士法人、行政書士法人が連携するワンストップ体制を整えています。どのような形で会社を閉じるのが最善なのか、まずは現状をご相談ください。専門的な視点から、経営者様と従業員、そして関係者全員にとって納得のいく解決策を共に検討いたします。

050-5799-4475 受付時間:9:00~18:00
Web予約 24時間受付