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飲食店が真空パック・レトルト食品を販売するには?密封包装食品製造業の許可・表示義務、OEMの法的ポイントを弁護士が整理

2026.03.30

飲食店の人気メニューを真空パックやレトルト食品として商品化し、インターネット通販や物販として販売する動きが広がっています。店舗の味を家庭で再現できる商品は、新たな収益源として魅力的に見える一方で、法的には通常のテイクアウト商品とは異なる規制が適用される可能性があります。本記事では、飲食店が真空パック・レトルト食品の製造販売を検討する際に押さえておくべき営業許可、衛生管理、表示義務、OEM活用時の責任関係などを整理します。

第1章 真空パック・レトルト食品に関係する営業許可

1-1 飲食店営業許可の範囲では通販はできない

まず留意すべき点は、店舗で取得している「飲食店営業許可」は、原則として店舗内で調理した食品をその場で提供することを前提とした許可であるという点です。
これに対し、真空パック食品やレトルト食品を製造して通販で販売する場合、食品は調理直後に消費されるのではなく、流通や保管の過程を経て消費者の手元に届くことになります。このようにあらかじめ販売を目的として食品を包装し、店舗外で流通させる行為は、食品衛生法上の「製造」に該当すると判断されることがあります。
調理ではなく製造とみなされる場合、事業者は飲食店営業許可とは別に、製造品目に応じた営業許可を取得し、必要な施設基準や設備基準を満たさなければなりません。
本格的な販売を開始する前に、自社の商品がどの製造業区分に該当するのかを正確に特定し、必要な施設基準をクリアする手続きが不可欠となります。

1-2 食品衛生法の「密封包装食品製造業」とは

令和3年6月に施行された改正食品衛生法において、新たに「密封包装食品製造業」という許可区分が設けられました。密封された食品は、保存性が高まる一方で、微生物が増殖した場合に外部から異常を認識しにくいという特性があります。特に、酸素の少ない環境で増殖する細菌による食中毒リスクが指摘されていることから、一般的な調理や簡易な包装とは異なる衛生管理が求められます。

1-3 レトルト食品と加圧加熱殺菌食品の規格基準

真空パック食品の中でも、常温で長期間保存できる商品として流通しているものが、一般に「レトルト食品」と呼ばれています。食品衛生法上、このような食品は「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」に該当する場合があり、特有の規格基準が設けられています。
この規格では、気密性のある容器に食品を充填したうえで、加圧状態での加熱殺菌を行い、食中毒の原因となる微生物を十分に死滅させることが求められます。そのような条件を満たした食品が、保存料に依存せず常温流通を前提とした商品として販売されます。
真空包装とレトルト加工は同じものとして理解されることもありますが、法的には求められる安全基準が大きく異なります。
商品企画の段階で、どの保存方法を前提とするのかを明確にし、それに応じた製造設備や衛生管理体制を設計することが重要となります。

第2章 密封包装食品の安全基準と法的リスク

2-1 密封包装食品で問題となる食中毒リスク

真空パックなどの密封包装食品において特に問題となるのが、酸素の少ない環境で増殖する細菌による食中毒リスクです。
密封包装は食品の保存性を高める一方で、包装内部の状態を外部から確認しにくいという特性があります。そのため、衛生管理が不十分なまま製造・流通させた場合、食品内部で微生物が増殖していても外見上は異常が分かりにくく、重大な健康被害につながるおそれがあります。
このようなリスクがあるため、食品衛生法では密封包装食品に関して特有の規格や衛生管理基準を設けています。事業者は製造工程の管理を通じて、流通過程を含めた食品の安全性を確保する責任を負うことになります。万が一、製造工程の管理不備が原因で事故が発生した場合には、行政処分だけでなく、民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。

2-2 pH・水分活性・加熱条件による安全性の管理

密封包装食品の安全性は、食品の性質や製造工程に基づいて判断されます。
代表的な指標として、食品の酸性度を示すpHや、水分の利用可能性を示す指標である水分活性(Aw)、そして加熱殺菌の条件などが挙げられます。これらの要素は、微生物の増殖を抑制できるかどうかを判断する重要な基準となります。
事業者が常温保存可能な食品を販売する場合には、これらの条件が安全基準を満たしていることを確認しなければなりません。保存試験や検査結果などを通じて食品の安全性を客観的に説明できる体制を整えておくことは、法令遵守の観点だけでなく、事故発生時の責任判断においても重要な意味を持ちます。

2-3 HACCPに基づく製造工程の管理

現在、すべての食品事業者にはHACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理が義務付けられています。密封包装食品を製造する場合には、特に加熱工程や冷却工程、包装工程などが重要管理点となることが多く、これらの工程が適切に管理されているかを継続的に確認する必要があります。
具体的には、加熱温度や加熱時間、包装工程の管理状況などを記録として残し、製造工程が適切に実施されていることを証明できる体制を整えることが求められます。こうした記録は単なる衛生管理のためのものではなく、事故発生時に事業者が適切な管理を行っていたかを判断する重要な資料となります。

第3章 常温流通・冷蔵流通の法的整理

3-1 レトルト食品が常温流通できる理由

レトルト食品が常温で流通できるのは、容器を密封した状態で加圧加熱殺菌を行い、微生物の増殖を防止するための十分な処理が行われていることが前提となっているためです。加圧加熱殺菌の規格を満たした食品は、保存料を使用せずとも常温での長期保存が可能とされ、一般的な流通経路で販売することが認められています。
もっとも、常温保存が可能であるという表示を行う以上、事業者はその安全性を客観的に説明できる状態を維持しなければなりません。保存試験の結果や製造工程の管理記録などを通じて、製品の安全性を合理的に説明できる体制を整えておくことは、食品事故が発生した際の責任判断にも影響する重要な要素となります。

3-2 真空包装食品が冷蔵保存となるケース

一方、一般的な真空パック食品の多くは、レトルト食品のような高温加圧殺菌を行っていないため、常温保存を前提とした商品として扱うことはできません。このような食品は、通常「要冷蔵」などの保存条件を付したうえで流通させることになります。
真空包装によって空気を遮断していても、食品内部で微生物の増殖が完全に抑えられるとは限りません。したがって、製造工程だけでなく、保存温度や流通過程を含めた管理が必要になります。
保存条件を誤って設定した場合には、食品表示法や食品衛生法上の問題となる可能性があり、商品回収などの対応が求められることもあります。

3-3 通販販売で注意すべき温度管理

通販で密封包装食品を販売する場合には、製造工程だけでなく、配送過程を含めた品質管理が問題となります。特に冷蔵保存を前提とした商品では、配送中の温度管理が適切に行われているかが重要なポイントとなります。
例えば、冷蔵品として販売している商品について常温配送を行えば、保存条件の表示と実際の流通条件が一致しないことになります。このような場合、品質事故が発生した際に事業者の管理責任が問われる可能性があります。
そのため、冷蔵配送の利用や、配送時間を踏まえた消費期限の設定など、物流を含めた品質管理体制を整備しておくことが重要です。通販ビジネスでは、製造だけでなく流通過程を含めた安全管理が事業者の責任として評価される点を理解しておく必要があります。

第4章 OEM製造という選択肢

4-1 自社製造とOEMの違い

真空パック食品やレトルト食品を販売する場合、自社で製造設備を整えて製造業許可を取得する方法のほか、既に許可を取得している食品工場へ製造を委託する「OEM(相手先ブランド製造)」という選択肢があります。
自社製造の場合は、製造工程や品質管理を直接コントロールできるという利点がありますが、専用設備の導入や施設改修など、一定の初期投資が必要になります。これに対し、OEMを利用する場合には設備投資を抑えて商品化できる反面、製造工程の管理を委託先に依存することになるため、契約を通じて品質管理の体制を確保する必要があります。

4-2 製造委託契約で確認しておくべき条項

OEMによって商品を製造する場合、製造委託契約を締結して責任関係を整理しておくことが重要です。特に密封包装食品の場合、製造工程の管理が食品の安全性に直結するため、契約上も製造方法や品質基準を具体的に定めておく必要があります。
例えば、真空パック食品であれば、加熱条件や冷却工程、保存温度の設定などが品質に大きく影響します。また、レトルト食品の場合には、加圧加熱殺菌の工程や設備の管理が安全性を担保する重要な要素となります。
このような工程について、どのような基準で製造するのかを契約上明確にしておかなければ、品質事故が発生した際に責任の所在が不明確になるおそれがあります。原材料の仕様、製造工程の管理方法、検査体制、事故発生時の報告義務などを契約条項として整理しておくことが実務上重要です。

4-3 品質事故・リコール発生時の責任

OEMによって製造された商品であっても、消費者に対して販売している主体は飲食店側であることが多く、事故が発生した場合には販売者としての責任を問われる可能性があります。
例えば、真空パック食品で保存温度の管理が不十分であった場合や、レトルト食品で加圧加熱殺菌の工程に問題があった場合には、食品事故につながるおそれがあります。このような場合、消費者からの問い合わせや損害賠償請求は、通常パッケージに表示された販売者に向けられることになります。
そのため、製造委託契約では、品質事故が発生した場合の費用負担やリコール対応の分担、原因調査への協力義務などをあらかじめ定めておくことが重要です。特に通販で販売する商品は流通範囲が広くなるため、事故発生時の回収対応や情報公表による影響も大きくなります。契約段階で責任関係を整理しておくことが、事業リスクを管理するうえで重要な対応となります。

第5章 真空パック・レトルト食品の表示義務

5-1 密封包装食品に求められる表示事項

真空パック食品やレトルト食品を販売する場合には、食品表示法に基づく表示義務を遵守する必要があります。一般的には、名称、原材料名、アレルゲン、内容量、賞味期限または消費期限、保存方法、製造者または販売者の名称および所在地などを表示することが求められます。
特に密封包装食品の場合、保存方法の表示は安全性と密接に関係する重要な情報です。例えば、真空パック食品で本来は冷蔵保存を前提とする商品について「常温保存可能」と表示してしまうと、消費者が誤った保存方法で食品を保管し、品質劣化や健康被害につながるおそれがあります。
このような表示は結果として食品表示法上の不適切表示と判断される可能性があります。表示内容は単なる商品説明ではなく、消費者が安全に食品を取り扱うための情報であるという点を理解しておく必要があります。

5-2 OEM製造の場合、製造者表示は誰になるのか

真空パック食品やレトルト食品を自社で製造している場合には、通常、製造者として自社の名称および所在地を表示します。一方、OEMによって製造を委託している場合には、委託先工場を製造所として表示し、飲食店側は販売者として表示されることが一般的です。
このような表示形式で販売される場合、消費者からの問い合わせや苦情は販売者に向けられることが多くなります。
製造工程を委託している場合であっても、販売者として商品を流通させている以上、品質管理や事故対応について一定の責任を負うことになる点を理解しておきましょう。

5-3 表示ミスが発覚した場合のリコールと行政対応

表示内容に誤りがあった場合には、食品表示法や食品衛生法に基づき、自主回収(リコール)の報告が求められることがあります。特に、保存方法の誤表示やアレルゲン表示の漏れなどは、消費者の健康に影響を及ぼす可能性があるため、行政による公表や業務改善指導の対象となる場合があります。
通販は全国を対象とする場合が多いため、一度市場に出た商品を回収する場合には、物流コストやブランド価値への影響も大きくなりがちです。表示ミスの発生を防ぐには、表示内容の確認体制を整え、製造工程や原材料情報と整合した表示を作成することが重要といえます。

第6章 食品製造ビジネスの展開に向けて

飲食店の人気メニューを真空パックやレトルト食品として商品化し、通販で販売することは、事業の収益源を広げる有力な手段となり得ます。一方で、その実態はテイクアウトの延長ではなく、「食品の製造業」としての責任を伴うビジネスである点を理解しておく必要があるといえます。
本記事で見てきたとおり、通販販売を行う場合には、飲食店営業許可だけでは対応できないケースが多く、密封包装食品製造業などの製造業許可が必要となることがあります。また、HACCPに基づく工程管理や温度管理、適切な表示の整備など、複数の法令への対応が求められます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・行政書士・税理士・社会保険労務士が連携し、食品ビジネスに関する許認可の整理から契約書作成、労務・税務対応までワンストップでサポートする体制を整えています。制度や契約面などで不安がある場合には、どうぞお気軽にご相談ください。

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