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【飲食業向け】フランチャイズ展開を検討する際の法的ポイント|本部構築に必要な契約設計と加盟店トラブル予防を弁護士が解説

2026.03.27

自社店舗の売上が安定してくると、次なる成長戦略としてフランチャイズ化が視野に入ります。フランチャイズ展開は単に加盟店を募集すれば成立するものではなく、本部としての事業モデル設計や加盟契約の整備、ブランド管理のルールづくりが欠かせません。本記事では、飲食業がフランチャイズ展開を検討する際に押さえておきたい法的ポイントを、実務の観点から整理して解説します。

もくじ

第1章 飲食業のフランチャイズ展開における本部の法的立ち位置

1-1 直営店での多店舗展開とフランチャイズ展開で異なる責任の範囲

直営店を増やす場合、全ての店舗は同一の経営主体(法人または個人事業主)に属します。従業員は自社の雇用であり、店舗で発生したトラブルの責任はすべて自社に帰属します。
一方、フランチャイズ展開は、独立した事業者同士の契約です。加盟店は本部の看板を掲げますが、法的には別個の経営体です。
この違いは、例えば労働問題が発生した際などに顕著に現れます。
直営店であれば自社が直接解決すべき問題ですが、フランチャイズ店の場合、基本的には加盟店オーナーが使用者としての責任を負います。しかし、本部が過度に現場へ介入していると、実態として共同使用者とみなされ、思わぬ法的責任を連鎖的に負わされるリスクがあります。

1-2 ノウハウの提供と対価(ロイヤリティ)を法的に定義する重要性

フランチャイズ契約の核は、本部が持つ商標・商号の使用権や経営ノウハウを加盟店に提供し、その対価としてロイヤリティを受け取ることにあります。実務でよくあるトラブルは、このノウハウの中身が曖昧なケースです。
料理のレシピや手順を共有している=ノウハウを提供しているという単純なものではなく、食材の仕入れルート、接客マニュアル、店舗デザイン、さらには独自のPOSシステムや販促手法など、何をパッケージとして提供し、何に対してロイヤリティが発生しているのかを契約書上で明確に定義する必要があります。
定義が不十分だと、加盟店から「十分な指導やノウハウ提供が行われていないにもかかわらずロイヤリティを支払うのは合理性を欠くのではないか」といった問題提起を受ける可能性があるため、ここは可能な限り定義を細かく定めておきましょう。

1-3 本部構築にあたって経営者が負うべき「指導・援助」の法的義務

フランチャイズ契約では、本部がブランドやノウハウを提供する代わりに、加盟店に対して継続的な経営指導や支援を行うことが通常の契約構造となっています。そのため、契約内容に応じて本部が加盟店に対し、契約期間中、継続的に経営の指導や援助を行う義務を負う場合があり、これを怠ると債務不履行として損害賠償を請求される可能性があります。
特に飲食店の場合、オープン前後の研修だけでなく、オープン後の定期的なスーパーバイジング(SV活動)が重要です。実務上は、どの程度の頻度で訪問し、どのような項目をチェック・指導するのかをルール化しておく必要があります。
また、指導内容を記録に残しておくことは、後に「本部の指導が不適切だったために売上が上がらなかった」と主張された際の防御策にもなり得ます。

第2章 展開前に整備すべきブランド資産

2-1 看板を守るために不可欠な商標権の確認と使用許諾の範囲

フランチャイズ展開を始める前に、必ず確認すべきなのが自社ブランドに関する商標権の状況です。
フランチャイズ契約では、本部が保有する商標や商号の使用を加盟店に許諾することが基本構造となります。そのため、商標権が適切に確保されていない状態で加盟店を募集すると、将来ブランドを巡るトラブルが発生した際に本部自身が十分な権利を主張できなくなるおそれがあります。
また、商標登録の内容についても注意が必要です。
例えば、現在は店舗での飲食提供のみを想定して登録している場合でも、将来的にテイクアウト商品の販売や通販事業などを展開する可能性があるのであれば、指定商品・役務の範囲がそれらをカバーしているかを確認しておくことが望ましいでしょう。
ブランドを加盟店に展開する以上、本部自身がそのブランドを確実にコントロールできる状態を整えておくことが前提となります。

2-2 マニュアル化されたノウハウを営業秘密として保護する体制

フランチャイズ展開では、本部が長年の店舗運営の中で蓄積してきたノウハウを加盟店に提供することになります。しかし、レシピや調理工程、店舗運営マニュアルなどの情報は、一度外部の事業者に開示されると流出のリスクが生じます。
こうした情報を法的に保護するためには、不正競争防止法上の「営業秘密」として管理されている状態を整えておくことが重要です。
営業秘密として保護されるためには、一般に次の3つの要件が必要とされています。

① 秘密として管理されていること

秘密管理性

② 事業活動に有用な情報であること

有用性

③ 公然と知られていないこと

非公知性

実務上は、マニュアルを誰でも閲覧できる状態にするのではなく、アクセス権限を制限し、さらに契約書に秘密保持義務を明記することなどの管理体制が考えられます。
また、加盟店が契約終了後に類似の業態を近隣で始めることを制限する競業避止義務についても、期間や地域を合理的な範囲で設定し、ノウハウの流出を防ぐ手立てを講じる必要があるでしょう。

第3章 加盟店との紛争を回避するための契約書の条項設計

3-1 近隣エリアへの出店を巡るトラブルを防ぐテリトリー条項の設計

フランチャイズ契約で紛争になりやすい論点の一つが、出店エリアを巡る問題です。
加盟店にとっては、自店舗の近隣に同じブランドの店舗が出店されることは大きな経営リスクになります。
この点について、契約書でテリトリー権(独占的営業権)を認める場合には、その範囲を具体的に定めておく必要があります。例えば、次のような定め方が考えられます。

  • 特定の市区町村単位で出店を制限する
  • 店舗を中心とした半径○km以内をテリトリーとする
  • 大型商業施設内の出店を例外とする

しかし、本部としては将来の出店戦略を過度に制約されないよう慎重な検討が必要といえます。テリトリー権を広く設定しすぎると、新規出店の自由度が大きく制限される可能性が考えられるためです。
そのため実務では、「原則として一定範囲内への出店は行わない」「ただし特定の条件では例外的に出店を認める」といった形で、一定の柔軟性を残した条項設計が採用されることも少なくありません。

3-2 ブランドの品質を維持するための仕入先指定と独占禁止法への配慮

飲食店のフランチャイズでは、味や品質を統一するために、特定の食材や調味料の仕入先を本部が指定することが一般的です。
しかし、このような仕入先指定の方法によっては、独占禁止法上の問題が生じる可能性があります。
例えば、本部が加盟店に対して特定の業者からのみ商品を購入させる場合、それが加盟店の事業活動を不当に制約するものと評価されれば、拘束条件付取引として問題となる可能性があります。また、本部と加盟店の関係性によっては、優越的地位の濫用と評価されるリスクが生じ得ます。
もっとも、品質の統一やブランド価値の維持といった合理的な目的がある場合には、一定の範囲で仕入先を指定すること自体が直ちに違法となるわけではありません。重要なのはその指定に、品質維持や衛生管理といった観点から合理的な理由があるかどうか、という点です。

3-3 中途解約や契約更新拒絶に関する違約金条項の設計

フランチャイズ契約は数年単位の長期契約となることが多く、契約期間の途中で加盟店が撤退を希望するケースも想定されます。
このような場合に備えて、中途解約の条件や違約金の取り扱いを契約書で明確にしておくことが望ましいといえます。
違約金条項を定める際には、その金額が本部に生じる平均的な損害を大きく超えるものになっていないかを検討する必要があります。過度に高額な違約金が設定されている場合、公序良俗に反するとして無効と判断される可能性もあります。
例えば、契約の残存期間に対応するロイヤリティ相当額をすべて違約金として請求するような設計は、個別の事情によっては問題となる場合があります。
そのため、違約金の算定方法も具体的に整理しておくことが望ましいでしょう。
契約の締結時だけでなく、契約終了時のルールを明確にしておくことが、長期的に安定したフランチャイズ運営につながるといえます。

第4章 契約締結前に求められる開示義務と説明責任

4-1 中小小売商業振興法に基づく法定開示書面の交付義務

フランチャイズ本部には、契約を締結する前に、加盟希望者に対して一定の事項を記載した書面を交付し、説明する義務があります。この義務は中小小売商業振興法および同法に基づく指針によって定められており、飲食業のフランチャイズでも事案により対象となり得ます。
法定開示書面には、例えば次のような事項を記載することが求められています。

法定開示書面に記載する事項の例
  • 本部事業者の概要
  • 直近数年間の事業実績
  • 加盟店の店舗数の推移
  • ロイヤリティの計算方法
  • 契約期間や契約終了の条件

これらの情報は、加盟希望者が事業リスクを判断するための重要な材料となります。
そのため、書面の交付を怠った場合や、記載内容に重要な誤りがある場合には、行政上の問題だけでなく、後に加盟店との紛争につながる可能性があります。

4-2 売上実績や収益モデルの提示における情報提供の留意点

加盟店募集の場面では、本部が提示する売上見込みや収益モデルが、後の紛争の原因となることがあります。
特に注意が必要なのは、直営店の中でも最も好調な店舗のデータのみを強調して提示するようなケースです。加盟希望者にとって収益性に関する情報は契約判断の重要な要素となるため、提示する数値には客観的な根拠があることが望ましいといえます。
例えば、売上や利益に関する情報を提示する場合には、次のような前提条件を踏まえて説明することが重要になります。

収益モデルを説明する際に整理しておくべき要素の例
  • 立地条件
  • 店舗規模
  • 席数
  • 客単価
  • 原価率
  • 人件費率

これらの条件によって店舗の収益性は大きく変わります。そのため、将来の売上や利益を断定的に示すのではなく、直営店の実績値や平均値、複数店舗のデータなどを参考情報として提示し、その数値がどのような条件のもとで得られたものかを併せて説明しておくことが望ましいといえます。

4-3 勧誘段階での発言が招く不実告知のリスク

契約書や開示書面が整備されていても、加盟勧誘の過程で不適切な説明が行われた場合には、後に問題となる可能性があります。
例えば、「必ず利益が出る」や「短期間で投資回収が可能である」といった断定的な説明が行われた場合、実際の経営状況との乖離が生じた際に、勧誘の適法性が争点となることがあります。
このようなリスクを抑えるためには、契約書や開示書面に基づいた説明を行うなど加盟募集のプロセスを一定程度ルール化しておくことが推奨されます。
また、契約書の内容が最終的な合意内容であることを確認する条項(いわゆる完全合意条項)を設けることも、紛争予防の観点から検討されることがあります。

第5章 多店舗展開後に直面する実務上のリスク管理

5-1 加盟店で発生した不祥事とブランド毀損リスクへの対応

フランチャイズ展開では、加盟店は独立した事業者として店舗を運営します。しかし、消費者の目線から見ると、加盟店であっても同じブランドの店舗として認識されます。
そのため、加盟店で不祥事が発生した場合、ブランド全体の信用に影響が及ぶことがあります。
例えば、従業員による不適切なSNS投稿や食品衛生に関する問題が発生すると、個別店舗の問題にとどまらず、ブランド全体の評判に影響する可能性があります。
こうしたリスクに備えるためには、加盟店契約の中で、ブランド価値を毀損する行為に対する是正措置の手続を明確にしておくことが重要です。
例えば、契約書に以下のような事項を定めておくことでトラブル発生時の対応を一定程度整理することができます。

トラブル対応についての記載事項の例
  • ブランドを毀損する行為が発生した場合の是正勧告権
  • 改善が見られない場合の契約解除の条件
  • 本部への報告義務

また、契約条項だけでなく、加盟店向けの運営ガイドラインや従業員教育の指針を整備しておくことも、ブランド管理の観点から重要といえます。

5-2 加盟店の労務問題がブランドに与える影響への備え

加盟店は独立した事業者であるため、従業員の雇用や労務管理は原則として加盟店オーナーの責任で行われます。しかし、加盟店でハラスメント問題や長時間労働といった労務トラブルが発生した場合、その情報がインターネットやSNSを通じて拡散されると、ブランド全体のイメージや採用力などに影響することも考えられます。
もっとも、本部が加盟店の労務管理に過度に関与すると、加盟店の独立性との関係で問題となる可能性もあります。そのため、本部としては直接的な管理を行うのではなく、コンプライアンスの観点から一定のガイドラインを示すなどの方法が検討されます。
例えば、労務管理に関するセルフチェックシートの導入や、労働法令に関する基本的な注意事項を共有するといった形で、加盟店の自主的な管理を促す仕組みを整えておく方法が考えられます。

5-3 契約違反を繰り返す加盟店への勧告と契約解除を有効に行う手順

ロイヤリティの滞納や、マニュアルを無視した勝手なメニューの提供など、契約違反を行う加盟店への対応は、本部にとって大きな負担となる業務の一つです。
このような場合、いきなり契約解除を行うと、加盟店から不当な解除であるとして争われる可能性があります。そのため、まずは書面による是正勧告を行い、契約違反の内容を明確にしたうえで、加盟店に改善の機会を与えることが重要になります。
実務上は、是正勧告において改善すべき事項と期限を具体的に示し、一定期間内に是正が行われない場合には契約解除を検討するという段階的な対応が採られることが一般的です。このような手順は、民法上の解除に関する考え方とも整合するものであり、後に紛争となった場合に加盟店に履行の機会を与えた事実を示す意味でも重要といえます。
それでも改善が見られない場合には、契約書で定めた手続に従って解除通知を行うことになります。これらのプロセスを経ずに契約解除を行った場合、裁判において解除が無効と判断される可能性もあり、場合によっては加盟店の営業損失の補填を求められる事態につながることも考えられます。

第6章 【FAQ】フランチャイズ展開に関するよくある質問

Q1. フランチャイズ展開を始めるために、必ず法人化しておく必要はありますか?

A1. 必ずしも法人化は必要ありません。

フランチャイズ本部になるために、法律上必ず法人である必要はありません。個人事業主のままフランチャイズ契約を締結すること自体は可能です。ただし、加盟店との契約関係が増えていくことや、ブランド管理・ロイヤリティ収入の管理といった観点を踏まえると、事業の信用力やリスク管理の面から法人化を検討するケースは少なくありません。

Q2. フランチャイズ本部になるために、店舗数や営業年数の基準はありますか?

A2. 法律上の明確な基準はありません。

フランチャイズ本部になるための店舗数や営業年数について、法律上の明確な基準は定められていません。もっとも、加盟店に対して経営ノウハウを提供する以上、一定の店舗運営実績や再現性のある運営モデルがあることは重要です。実務上は、直営店舗の運営経験をもとにマニュアル化されたノウハウを整備したうえで展開を検討することが多いといえます。

Q3. フランチャイズ契約書はインターネットの雛形を使っても問題ないのでしょうか?

A3. 一度リーガルチェックを行ってから使用するのが推奨されます。

インターネット上にはフランチャイズ契約書の雛形が公開されていますが、そのまま使用することには注意が必要です。フランチャイズ契約では、ブランドの使用条件、ロイヤリティの計算方法、加盟店への指導体制、契約終了時の取り扱いなど、多くの事項を具体的に定める必要があります。これらの内容は業態や事業モデルによって大きく異なるため、一般的な雛形では実際の運営に適合しない場合があります。契約書の内容が実際の運営実態と一致していないと、後に加盟店との紛争につながる可能性もあるため、契約内容は事業内容に合わせて整合性を確認しておくことと、可能であれば弁護士のリーガルチェックを受けたうえで使用することを推奨します。

Q4. 加盟店が経営不振になった場合、本部が責任を問われることはありますか?

A4. 本部の関与内容によっては問題となる場合があります。

加盟店は独立した事業者として店舗を運営するため、通常は加盟店の経営結果について本部が直接責任を負うわけではありません。しかし、加盟募集の段階で不正確な情報を提供していた場合や、本部の指導内容に問題があった場合などには、加盟店から責任を問われる可能性が生じることがあります。

第7章 フランチャイズ展開を検討している経営者の皆さまへ

本記事では、飲食業がフランチャイズ展開を検討する際に、まず押さえておきたい法的ポイントについて整理しました。
フランチャイズ展開は、事業を拡大する有効な手段の一つですが、その前提となるのは適切な契約設計と運営体制です。契約内容の不備や加盟募集時の説明不足などが、後に大きなトラブルにつながるケースも見られます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士によるフランチャイズ契約書の作成やリーガルチェック、加盟店とのトラブル対応に加え、社会保険労務士・税理士など各専門家が連携したワンストップ体制で企業法務をサポートしています。
フランチャイズ展開を具体的に検討する段階で、契約内容や本部体制について専門的な確認が必要な場合にはお気軽にご相談ください。

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