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専売商品の転売はどこまで規制できるのか?|規制できる範囲と実務対応のポイントを弁護士が解説

2026.01.24

専売商品や限定商品の転売は、正規の販売ルートを阻害し、価格の高騰やブランド価値の低下を招く要因となります。しかし、転売を規制しようとすると、独占禁止法や再販売価格の拘束などの法的リスクが頭をよぎる方も少なくないでしょう。本記事では、専売商品の転売に対してどこまで対応できるのか、その実務的な線引きを弁護士が解説します。

第1章 専売商品の転売問題と独占禁止法の関係

1-1 なぜメーカーの転売規制は独占禁止法に抵触しやすいのか

メーカーやブランドオーナーが「自社の商品を特定のルート以外で販売してほしくない」と考えるのは、ビジネス上の戦略として自然なことです。特に、独自の技術やコンセプトを持つ専売商品であれば、その希少性や品質を維持することはブランドの生命線ともいえます。
しかし、日本の法律体系において、一度販売した商品を誰が、どこで、いくらで売るかは、原則として「買った人の自由」とされています。独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、事業者が自由にかつ公正に競争することを促進するための法律です。メーカーが小売店や購入者に対して「転売してはいけない」「この価格で売らなければならない」と制限をかけることは、この自由な競争を阻害するものとみなされやすいため、慎重な対応が求められるのです。

1-2 転売ヤーの買い占めが企業経営にもたらす深刻なリスク

企業が転売を放置できない背景には、単なる在庫不足を超えた、経営の根幹を揺るがすリスクが存在します。
まずは、品質管理の欠如による事故のリスクです。食品や化粧品など、保管・輸送状態が品質に関わる商品が不適切な環境で転売された場合、健康被害や事故を招くおそれがあります。たとえ転売品であっても、万が一事故が発生すれば、社会的批判の矛先は製造物責任(PL法)やブランドを背負うメーカーに向けられ、法的・社会的な責任を問われる場面もあり得ます。また、中長期的なブランド価値の毀損も懸念されます。買い占めによる供給不足や不当な高額転売が常態化すれば、本来のターゲット層が離反につながる可能性もあります。

第2章 独占禁止法において違法性が問われやすい禁止行為の整理

2-1 再販売価格維持行為の原則禁止

独占禁止法において厳しく制限されているのが、「再販売価格維持行為の禁止」です。これは、メーカーが小売店に対し、販売価格を指定したり、事実上拘束したりする行為を原則として禁止するものです。独占禁止法は、行為の目的よりも、その手段が価格競争を制限していないかを重視します。
そのため、「転売ヤー対策」「ブランド価値の維持」「一般消費者への安定供給」といった正当な経営目的があったとしても、結果として販売店の価格設定の自由を奪っていれば、再販売価格維持行為と評価される可能性があります。独占禁止法は、消費者保護の側面を持ちながらも、価格形成を市場の競争に委ねること自体を重視する法律であり、「高すぎる転売を防ぐ」という事情だけで価格拘束が正当化されるわけではないからです。
極端に高額な転売によって一般消費者の購入機会が事実上奪われているのは、事業者として看過できない問題でしょう。しかし、その是正手段として販売価格を一律に指定したり、価格から外れた販売に対して取引停止などの不利益を課したりすると、たとえ消費者保護を意図した対応であっても、事実上の価格拘束と評価されやすくなるリスクは否めません。

2-2 拘束条件付取引に該当する不当な販売先の制限

次に注意が必要なのが「拘束条件付取引」です。これは、価格以外の取引条件で、相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付すことを指します。例えば、「ネットオークションやフリマアプリへの出品を一切禁止する」という条件を取引先に課すような場合がこれに該当します。
こうした制限が直ちに違法になるわけではありませんが、その制限によって市場の競争が不当に阻害される場合には問題となる可能性があります。

2-3 取引や出荷の停止が違法と判断される基準

転売が発覚した際に、対抗策として検討されるのが「取引の停止(出荷停止)」です。しかし、これも慎重に行う必要があります。
公正取引委員会の指針によれば、単独の事業者が誰と取引するかを選択するのは原則として自由です。しかし、それが販売価格を維持させるための手段として行われる場合や、他の事業者を市場から排除する目的で行われる場合には、違法な取引拒絶とみなされる可能性があります。
例えば、「定価で売らないから出荷を止める」というのは違法と判断されるリスクが高いですが、「契約に定めた保管基準を守らず、商品の安全性が担保できないため取引を継続できない」という正当な理由があれば、適法とされる可能性が出てきます。この理由の立て付けが実務上のポイントといえます。

2-4 優越的地位の濫用とみなされる一方的な規約変更

既に取引がある小売店や代理店に対して、後出しで「今後一切の転売を禁止する。違反したら違約金を取る」といった条件を突きつける場合、「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあります。取引上の立場が強いメーカーが、弱い立場にある取引先に対して、一方的に不利益な条件を押し付けることは禁じられています。規約を変更する際には、十分な周知期間を設けることや、変更の必要性について合理的な説明を行うことが、法的紛争を避けるために不可欠です。

第3章 独占禁止法に抵触しない適正な転売抑制の考え方

3-1 非価格制限の妥当性と合理的な理由の有無

価格以外の制限(非価格制限)については、独占禁止法上、その制限に合理的な理由があるかどうかが焦点となります。例えば、高級化粧品や要指導医薬品や第1類医薬品のように、購入時に情報提供が重視される商品において、それを実施できないチャネル(ネットオークション等)での販売を制限することは、消費者の安全やベネフィットを守るという合理性があるため、比較的認められやすい傾向にあります。

3-2 品質保持や安全性の確保を目的とした流通経路の限定

品質管理は、転売を制限する上で法的根拠の一つになり得ます。例えば、温度管理が必須な食品や、特定の鮮度が求められる商品の場合、メーカーが指定した配送・保管基準を満たさない転売品は、消費者に健康被害を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを回避するために、適切な管理設備を持たない者への販売を制限することは、安全性・品質確保という合理的理由が明確で、かつ必要最小限の範囲にとどまる限り、独占禁止法上も問題となりにくい方向に働きます。

3-3 ブランドイメージ維持のための流通の選択

欧州などでは品質保持やブランドイメージ維持などの目的でメーカーが流通業者を指定する「選択的流通システム」という考え方が普及していますが、日本でもブランドの世界観を守るための流通制限は、一定の条件を満たす限り、独占禁止法上問題となりにくい場合があります。
特定のブランドイメージを持つ商品において、そのイメージを損なうような場所(例えば、乱雑な安売り店や、品質が保証されないCtoCプラットフォーム)での販売を制限する場合、その制限が差別的でなく、すべての取引先に公平に適用されているのであれば、独占禁止法上の問題は少なくなります。
この販売店の選別は、実務上、転売を抑止する対策にもなり得ます。なぜなら、商品を右から左へ流すだけの転売目的の業者は、適切な接客や品質管理体制を整えていないことが多く、メーカーが指定する基準に未達として取引を拒絶できる法的根拠になり得るからです。単に転売を禁止するのではなく、ブランド価値を維持できる環境を取引条件に据えることで、非正規ルートへの流出を防ぐ効果が期待できます。

第4章 法的リスクを抑えながら転売を抑止する具体的スキーム

4-1 販売契約や利用規約における転売禁止条項の作り方

法的根拠を明確にするには、契約書や利用規約の整備が重要です。単に「転売禁止」と書くのではなく、以下のような要素を盛り込むことを検討しましょう。

  • 購入者の属性の限定(自己使用目的に限るなど)
  • 転売が行われた場合の「品質保証の失効」の明記
  • 営利目的の購入と判断された場合の契約解除権の設定
  • 違反時の違約金・損害賠償予定(消費者契約法上、過大な定めは無効となる場合があるため、平均的損害を踏まえた設計が必要)

特にBtoC(消費者向け)の販売であれば、注文確定前にこれらの規約に同意させるプロセスを組み込むことで、契約上の対抗力を持たせることができます。

4-2 商標権や著作権を根拠とした転売抑止の可能性

独占禁止法とは別の切り口として、知的財産権の活用があります。転売サイトで自社商品の公式画像が無断転載されている場合、著作権侵害として削除要請が可能です。また、商標権についても、単なる転売(真正商品の転売)は商標権侵害になりにくいとされますが、転売時に商品が加工されていたり、品質が著しく劣化していたり、あるいは公式ショップと誤認させるような表示があれば、商標権侵害を主張できる可能性があります。

4-3 代理店契約(エージェントモデル)への移行検討

もし独占禁止法のリスクを抜本的に回避したいのであれば、「買い取り形式」の卸売から、在庫リスクをメーカーが持つ「委託販売形式(エージェントモデル)」への移行も一つの選択肢です。委託販売して実態が伴う場合、商品の所有権はメーカーに残ったままであり、メーカーが価格方針を決めやすくなることがあります。ただし、名目だけ委託で実態が買い取りに近い場合は、独占禁止法上の評価が変わらない可能性があるため、契約設計と運用が重要です。

第5章 転売対策を検討する際に見落としがちな注意点

5-1 中古市場(セカンドハンド)への過度な干渉の危険性

転売対策を行う際に注意したいのが、一度消費者の手に渡った後の「中古品」としての流通です。商標法には消尽(しょうじん)という理論があり、中古品の転売に対して商標権を行使できないのが原則です(もっとも、商品の改変や品質差異、公式販売と誤認させる表示などがある場合は別途問題となり得ます)。
また、契約は締結した当事者間でのみ効力を持つため、メーカーと直接の契約関係にない一般消費者がフリマアプリ等で売却する行為を、メーカーが直接的に差し止める法的根拠は見出しにくいのが実情です。
したがって、実務上は「一般消費者による不用品の処分」と「営利目的の反復継続した転売」を明確に区別し、後者の契約違反を追及することが重要といえます。

5-2 ECプラットフォームへの削除要請における法的限界

Amazonや楽天、メルカリといったプラットフォームに対し、転売品の出品を削除するよう求める場面は多いですが、プラットフォーム側は原則として当事者間での解決を求めます。単に「転売だから消してほしい」という理由では動いてくれないことが多いため、前述した著作権侵害や、利用規約違反を根拠とした出品削除要請など、法的な構成を精緻に組み立てた上で要請を行う必要があります。

第6章 まとめ:法務と事業部門が連携して取り組むべき転売対策

専売商品の転売規制は、単に禁止することで解決する問題ではありません。独占禁止法の枠組みを理解し、再販売価格維持や不当な取引制限といったリスクを回避しながら、ブランドを守るための正当な理由を積み上げていく必要があります。
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