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療養担当規則違反にあたるケースとは?医療機関が直面するリスクを弁護士が解説

2026.01.19

療養担当規則は、健康保険法に基づいて厚生労働省が定めた省令であり、その違反は単なる手続きミスでは済まされない経営リスクをはらんでいます。違反と見なされれば、個別指導や監査、最悪の場合は保険指定の取り消しにもつながりかねません。本記事では、実務上陥りやすい違反の例や、違反時に生じる具体的なリスクを整理して解説します。

※「療養担当規則」について詳しく知りたい方は以下の記事からご参照いただけます
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「療養担当規則とは?保険診療の基本ルールをわかりやすく整理|クリニック実務の考え方を弁護士が解説」

第1章 療養担当規則違反が医療機関にもたらす経営リスク

1-1 行政指導(個別指導)・監査へと至るプロセス

診療報酬請求の内容や運用状況に着目され、地方厚生局による個別指導の対象となることがあります。個別指導は、診療報酬の請求内容の妥当性はもちろん、患者への適切な説明や掲示、帳簿の整備といった療養担当規則に定められたルールが現場で遵守されているかを対面で確認する手続きです。
この指導において、改善が見られない場合や、著しい不当事項、あるいは故意による不正の疑いが濃厚であると判断された場合には、さらに厳格な「監査」へ移行する流れとなります。監査はより厳格な手続のもとで事実関係を確認する調査であり、その結果は医療機関の今後に大きな影響を及ぼす可能性があるといえます。

1-2 保険医療機関の指定取り消し・保険医の登録取り消し

監査の結果、悪質な違反が認められた場合、最も重い処分として「保険医療機関の指定取り消し」が行われます。これは事実上、その医療機関で保険診療ができなくなることを意味しています。また、医師個人に対しても「保険医の登録取り消し」が行われることがあり、そうなれば他の病院でも保険医として働くことができなくなります。
一度取り消しがなされた場合、健康保険法の規定により、原則として5年間は再指定・再登録を受けることができません。

1-3 診療報酬の返還請求による経済的損失と社会的信用の失墜

療養担当規則に違反した診療や事務運営が行われていたと判断された場合、その違反に関連して支払われた診療報酬は「不適切な受け取り」と見なされ、遡って返還を命じられることがあります。これは実務上、医療機関にとって大きな経済的ダメージといえます。
悪質性が高いと判断された場合には、返還金に利息や加算金(最大40%)が付されることもあります。加えて、行政処分(指定取り消し等)を受けた事実は実名で公表されるため、地域住民や連携医療機関からの信頼の失墜は避けられないでしょう。

第2章 【事例別】療養担当規則違反に該当しやすいケース

2-1 診療報酬請求に関する違反:不正請求と不当請求の違い

診療報酬の請求違反には大きく分けて「不正請求」と「不当請求」があります。
不正請求とは、実際には行っていない診療を架空請求したり、診療日を付け替えたりする意図的な欺瞞行為をさします。一方、不当請求は、算定ルールを誤解によるミスのほか、医学的根拠が乏しい過剰な診療に対する請求なども含まれます。たとえ悪意がなくても、ルールの逸脱があれば返還の対象となります。

2-2 患者への説明・同意に関する違反:自費診療の強要や不適切な請求

法律上認められた例外(保険外併用療養費制度)を除き、保険診療を行う条件として自費診療の受診を強要したり、両者を明確に区分せず一体的に案内したりすることは、療養担当規則に抵触するおそれがあります。また、本来保険診療に含まれるべき事務手数料や予約料を、名目を変えて別途徴収することも「不当な費用徴収」と見なされる可能性があります。こうした説明不足や同意のない費用徴収は、当事者である患者から行政への通報のきっかけになりやすいポイントともいえます。

2-3 掲示義務・報告義務の怠慢:ルールに基づいた情報開示がなされているか

院内に掲示すべき事項(点数表、保険外負担の料金など)が最新ではない、あるいは見にくい場所にしかないといったケースも、規則違反にあたります。また、医療機関の名称や管理者の変更、病床数の変更などを適切に届け出ていない場合も報告義務違反となります。これらの形式的な不備は、「管理体制がずさんである」という印象を行政に与え、個別指導の際に厳しい追及を受ける要因にもなり得ます。

第3章 療養担当規則違反を防ぎ、強固な社内体制を構築するための対策

3-1 定期的な内部監査・自主点検の実施フロー

月に一度、無作為にカルテを抽出し、レセプトの内容と完全に一致しているかを点検する自主点検の時間を設けましょう。その際、第三者の視点で「この記録だけで、この検査が必要だったと厚生局に説明できるか」という基準で確認することが重要です。

3-2 コンプライアンス意識を高める院内研修の重要性

スタッフ全員が「なぜこのルールを守らなければならないのか」という背景を理解するための研修を行うのも有効といえます。単に作業手順を教えるだけでなく、療養担当規則違反がクリニックに与える影響を共有することで、現場での自発的なチェック機能が働くようになるはずです。

3-3 法務・労務・税務を統合した多角的なリスク管理

療養担当規則への対応には、診療報酬(税務・財務)やスタッフの教育(労務)、そして法令遵守(法務)という多様な要素が組み合わさっています。例えば、無理な残業が続く現場ではカルテの記載ミスが増える、人員不足による業務過多で丁寧な説明や適切な掲示管理まで行き届かないなど、労務環境の悪化が法務リスクにつながることもよくあります。健全な体制の構築には、これらをそれぞれ切り離して考えるのではなく、一体として管理する視点が不可欠といえます。

第4章 療養担当規則違反を未然に防ぎ、持続可能な医療経営を目指す

療養担当規則違反は、返還金や加算金といった経済的損失だけでなく、保険指定取り消しという重大なリスクもはらんでいます。「うちは大丈夫だろう」と過信せず、まずは現在の運用が最新のルールに適合しているかを、一度専門的な視点で客観的に棚卸しすることをおすすめします。
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