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オープンワークの口コミを削除するには?|削除手続から再発防止策まで弁護士が解説

2025.06.25

社員口コミサイトの評価は採用応募や取引先の信頼を左右します。誤情報や誹謗中傷を放置すれば、ブランド毀損や人材流出に直結しかねません。本コラムでは、オープンワークのネガティブ投稿をどこまで削除できるのか、削除不成立時に取れる法的・実務的対策、再発防止の施策について、弁護士がわかりやすく解説します。

1. オープンワークとは? ― 仕組みと企業リスク

オープンワーク(OpenWork)は、元従業員・現従業員が匿名で投稿できる口コミサイトです。ベンチャーから上場企業まで1,000万件超の口コミが掲載され、待遇面の満足度・社員の士気・風通しの良さなど8項目で数値評価が公開されています。投稿には一定のハードル(回答者が在職中か退職済みである、500文字以上の回答が必要など)がありますが、投稿された内容の真偽は同社が網羅的に確認しているわけではありません。
このサイト内の口コミが企業にとってのリスクとなり得るケースとして、以下のような点があげられます。

  1. 採用面 ―求人媒体や転職エージェント等と連携しており、ネガティブ投稿が応募数を減らす可能性がある。
  2. IR 面 ― 上場企業は ESG 指標として従業員エンゲージメントを評価される時代で、低スコアが株価に波及するリスクがある。
  3. 取引先信用 ― 大口顧客が「炎上企業」との継続取引を敬遠する場合がある。

2. オープンワークに投稿された回答は削除できるのか?

オープンワークの利用規約には、「投稿をしたユーザー本人からの要望であっても、訂正および削除はできない」と明記されています。
そのため、一度投稿された回答について、企業側が削除を求める場合は運営会社への違反報告か、仮処分・発信者情報開示請求など法的手段をとる必要があります。
ただ、違反報告や法的手段での削除請求を求めた場合でも必ずしもすべてのケースで投稿の削除が認められるわけではありません。
オープンワークのサイトによると、下記に該当する掲載であると判断された場合は投稿内容を非掲載とする対応を行うと記載されています。

  1. 申請内容から掲載情報が明らかに投稿時の「事実と異なる」と判断できる場合
  2. 申請内容から掲載情報が明らかに「誹謗中傷に該当する表現を含む」と判断できる場合
  3. その他掲載内容が公序良俗に反すると判断できる場合

掲載された投稿が上記に該当する場合は、オープンワークの削除申請窓口から削除依頼を実施することで投稿の削除ができる可能性がありますが、その場合でも法的な権利侵害を具体的に主張・立証ができなければなりません。

上記に該当しない内容であれば、企業側にとってネガティブな投稿であっても原則として削除は難しくなります。

関連:オープンワークに対する削除申請の方法

オープンワークでは電話や対面等での削除申請は受け付けていないため、すべてメールで申請するようになっています。
削除申請を行う際は、

  • 申請者情報(企業名、役職、氏名、アドレスなど)
  • 該当の投稿URLと投稿内容
  • 権利侵害の内容と侵害されたとする理由
  • 発信者に対しての氏名開示の可否

を必須で記載する必要があります。

加えて、申請時は添付書類として以下の添付が必須となっています。

  • 事実と異なることを証明する証拠書類(申請理由が「事実と異なる情報」の場合に必須)
  • 印鑑登録証明書
  • 登記簿謄本
  • 委任状(第三者が申請を代行する場合のみ)

申請先を含めて、最新の情報はオープンワークのWebサイトにて確認をされてください。

3. オープンワークに対して削除申請をしたけど削除されなかったら?

オープンワークの削除申請窓口より削除申請を行ったものの、「ガイドライン違反に該当しない」「証拠が不足している」などの理由で削除が認められないケースもあります。
その場合は、以下のような裁判所での法的措置を検討し、投稿削除や投稿者に対する賠償請求を試みることとなります。

  • 誰が書いたものかを特定する(発信者情報開示請求)
  • 早急に投稿の削除を実施する(削除の仮処分)

3-1 発信者情報開示請求とは

匿名投稿の“書き込み主”を特定するための手続です。従来は「サイト運営者(コンテンツプロバイダ)へ IP アドレス・投稿日時を開示請求→取得したIPを手がかりに通信事業者(プロバイダ・携帯会社)へ氏名・住所を開示請求」という2段階での手続きが必要でしたが、法改正にて1回の手続でサイト運営者からIP・タイムスタンプを、通信事業者から氏名・住所・連絡先を同じ手続の中で取得できるようになりました。
開示請求を申立てたら裁判所が運営者・通信事業者双方に開示命令を出し、異議がなければ2〜3 か月程度で投稿者の情報が開示されます。
接続・投稿のログが消える前に請求を行わなければならないため、投稿から時間をあけずに請求をしなければならない点には注意しましょう。

3-2 削除の仮処分とは

投稿の拡散を防ぐ目的等で、正式な裁判手続きによらずに投稿を削除する保全措置です。仮処分命令がでると、一般的なサイト運営者は投稿の削除に応じることが多いため、それ以降の正式な裁判までは必要ないケースがほとんどです。
仮処分の申し立てを行う際は、裁判所に権利侵害を具体的に立証するための疎明資料をもとに、投稿で被った具体的損害を主張する必要がありますので、該当箇所のスクリーンショットやURL、具体的損害の根拠資料などの準備も重要となります。
裁判所での審理を経て、違法性と緊急性が認められれば早くて1〜2週間で仮処分決定が出ることがあります。

いずれの手続についても、立証部分を含めて法的主張が重要となるため、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

4. オープンワークでのネガティブ投稿を防ぐために社内で取れる対策は?

前述したような手段で一度投稿が削除されたとしても、根本的な解決ができていなければ再度同じような投稿をされてしまうことも予想されますので、再発防止の対策も必要です。
以下、具体的な対策の一例をあげています。

  • 匿名ホットラインや内部通報制度の整備
  • 社外専門窓口を設置し、パワハラ・労務違反・不正行為の通報ルートを明確化。社内で声を上げられる環境があれば外部サイトに告発が流れにくくなります。

  • SNSや投稿のモニタリング体制の整備
  • OpenWorkをはじめとして、Google検索やX(旧Twitter)などでネガティブワードや投稿がされていないかを定期的にモニタリングすることで、早期発見と対応が望めます。

  • ポジティブ情報の積極発信
  • 自社の制度や働き方を採用サイト・公式SNSで定期発信。従業員の声や社内での取り組みを紹介することで、第三者の評価より先に自社の“生の声”を届けます。

  • 労務・福利厚生の継続改善

残業時間の上限設定、フレックス制度、メンタルヘルス相談窓口など、実質的な働きやすさを高める施策を充実させることでネガティブ要素を減らします。

ネガティブ投稿の大半は「伝える場がない」「改善されない」という従業員のフラストレーションから生じます。声を吸い上げ、改善状況を可視化し、建設的な社内コミュニケーションとガバナンスを整えることが最大の予防策です。

5. オープンワークの投稿削除についてのよくある質問

Q. 投稿者本人が訂正・削除はできないの?

A. OpenWorkの利用規約で「投稿者自身による訂正・削除は不可」と定められています。事実誤認を正す場合は追加投稿で補足するか、企業側から削除申請を出すしかありません。

Q. 投稿を削除しても検索結果のネガティブ情報は消えない?

A. 検索エンジンのキャッシュは1〜2週間残存することがあります。削除完了後はGoogleの「古いコンテンツ削除ツール」で早期キャッシュ削除を申請し、同時に公式サイトのポジティブ情報を発信して検索上位を押し下げるのが効果的です。

Q. 元従業員が事実に基づく厳しい評価を書いた場合も削除できますか?

A. 真実性が高い意見・論評は原則削除が困難です。ただし表現が過度に侮辱的である場合など、何らかの権利侵害に値するものであれば削除余地はあります。

Q. 削除を依頼したことが社内外に漏れるリスクは?

A. 違反報告は非公開で行われ、運営会社が企業名を公表することはありません。ただし裁判に進むと訴訟記録が公開され得るため、広報計画を先に用意すると安心です。

Q. 複数の投稿URLをまとめて仮処分を申し立てることはできますか?

A. 可能です。申立書に対象となる投稿をすべて列挙し、権利侵害の共通性を示せば一件の手続で包括的に削除命令を得られます。

Q. 海外在住の投稿者でも開示・賠償請求はできますか?

A. はい。IPアドレスから海外プロバイダが判明した場合でも開示請求は可能で、本人特定後は国際送達手続を経て損害賠償訴訟を提起できます。

オープンワークのネガティブな投稿は放置すると採用だけでなくIR・取引信用にまで連鎖的ダメージを与えるリスクがあります。明らかな権利侵害の場合は、法的手段を含めて早急に対応をすることが企業のブランド毀損を防ぐことにつながります。
まずは一度ご相談ください。

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