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外食業で特定技能外国人を受け入れる際の要件と申請時のポイントを弁護士が解説

2025.05.20

人手不足が深刻化する外食業界において、特定技能1号制度は即戦力を安定的に確保できる有効な手段です。しかし、複雑な在留資格要件や受入れ後の支援体制構築、法令遵守への不安から、導入を躊躇する企業も少なくありません。本コラムでは、外食業における特定技能1号の導入要件から手続きフロー、受入れ後の実務管理、リスク対策までを詳細に解説します。初めて制度を利用される企業様は、ぜひ最後までご覧ください。

もくじ

1. 特定技能「外食業」とは︖

1-1. 制度の概要と対象業務

特定技能制度は、2019年4月に創設された新しい外国人材受入れ制度で、外国人材を「特定技能1号」として最長5年間、日本国内で就労させることができます。外食業では「調理」や「接客補助」「仕込み作業」「調理器具の洗浄」など計14業務が対象とされており、技能試験と日本語試験(N4以上)の合格者が受入れ対象となります。試験合格後は「在留資格認定証明書交付申請」を経て、入国管理局から在留資格を取得し、営業店舗での就労が可能となります。

1-2. 外食業が特定技能制度を導入した背景

深刻化する少子高齢化に伴い、外食業は慢性的な人手不足と高い離職率に直面しています。従来の技能実習制度では、研修期間を含めた経験年数や言語要件がネックとなり、即戦力化に時間がかかっていましたが、特定技能1号制度の導入により、東南アジアなどからの受入れが加速したこと、また、日本語能力要件が比較的緩やかなことから、短期間での戦力化が可能となりました。加えて、最長5年の在留が認められるため、長期的な人才確保と定着を図ることができます。

2. 特定技能1号を受け入れるメリット

2-1. 深刻化する人手不足への即戦力確保

特定技能1号は、外食業における調理補助や接客など、必要なスキルと日本語能力を備えています。外国人アルバイトや留学生雇用と異なり、雇用契約の締結時点で技能チェックが完了するため、入店直後から即戦力として活躍可能です。特に繁忙期における人材不足を補いながら、顧客サービス品質を維持できる点はメリットといえるでしょう。

2-2. 長期定着につながる支援体制の特長

特定技能1号は原則通算5年間在留が可能で、その間は同一企業での継続就労が認められています。法定支援計画に基づき、生活オリエンテーション、住居確保支援、日本語学習支援などを実施することで、職場環境への適応と生活基盤の安定化を図り、離職率を低減できます。

3. 外食業で特定技能外国人を受け入れる際の要件と手順

3-1. 外国人本人側の要件

  • 外食業特定技能1号技能測定試験の合格
  • 日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストの合格
  • 技能実習2号を良好修了している場合は技能試験免除

3-2. 受入れ企業(雇用主)側の適格要件

特定技能1号を受け入れる外食事業者は、入管法・外食業分野運用要領に基づき次のような要件を満たす必要があります。

  • 労務コンプライアンス:社会保険・雇用保険の適用事業所であること、過去5年以内に労基法重大違反がないこと。
  • 支援体制要件:自社実施の場合は支援責任者(常勤社員)と支援担当者を置くか、登録支援機関と委託契約を結ぶこと。

3-3. 「在留資格認定証明書交付申請」を企業側が提出

在留資格認定証明書交付申請は、外国人本人ではなく受入れ企業(または企業に委任された行政書士)が地方出入国在留管理局へ提出する手続です。申請書の「申請人欄」には外国人本人の氏名・生年月日等を記載しますが、提出主体・添付書類準備・電子申請操作は日本側が担います。添付書類は下記が基本セットです。

  • 雇用契約書:労働条件通知書式。賃金・就業場所・業務内容を日本語で明示し、翻訳文を添付。
  • 支援計画書:生活オリエンテーション、住居確保、日本語学習支援など 20 項目すべてを記載。自社実施か登録支援機関委託かを明示。
  • 企業の財務書類:直近2期分の貸借対照表・損益計算書(税理士の押印済推奨)。
  • 定款・登記事項証明書:法務局発行3か月以内の原本。
  • 事業概要説明資料:会社案内、店舗写真、メニュー表など。

書類を不備なく整え電子申請システムにアップロードすると、標準約1〜2か月で認定証明書が交付されます。交付後、企業は原本を本人へ DHL 等で送り、本人が自国の日本大使館・領事館でビザを取得→入国となります。

3-4. 財務・社会保険・雇用契約のチェックポイント

  • 財務健全性:自己資本比率がマイナス、または2期連続赤字の場合は補足説明書類(親会社保証や資金繰り表)が必要です。
  • 社会保険適用:健康保険・厚生年金・雇用保険の加入証明書(適用事業所通知書など)を添付して未加入リスクを払拭します。
  • 雇用契約条件:地域別最低賃金以上で、同種業務を行う日本人従業員と同等報酬であることが必須。深夜・休日割増率、日本語学習時間の扱いも契約書に明示すると審査がスムーズです。

上記をクリアして初めて在留資格認定証明書が交付されます。不備・不足があると再提出で数か月遅れるため、専門家に相談の上で漏れなく手続きを進めることが望ましいでしょう。

4. 受入れまでの手続きフロー

4-1. 人材募集から面接・面接ガイドライン

特定技能1号希望者は、オンラインプラットフォームや人材紹介会社を通じて募集します。面接時には、技能試験合格証と日本語能力試験結果(JLPT N4以上)を確認し、業務習熟度チェックリストを活用して即戦力性を評価します。

4-2. 在留資格申請手順と申請機関とのやり取り

在留資格認定証明書交付申請は、受入れ企業自身が gBizID で e-Gov を利用して行う方法と、行政書士に申請代理を委託する方法のいずれでも手続きできます。

自社申請の場合
  1. gBizID を取得し、電子申請システムから申請書様式をダウンロード
  2. 雇用契約書・支援計画書・財務書類等を PDF 化してアップロード
  3. 入管局からの照会(追加資料提出・電話ヒアリング)に社内担当が日本語で即応
    コストを抑えられる半面、様式改訂や翻訳ミスによる差し戻しリスクが高いため、初めての企業は申請予定日から2〜3か月の余裕を見込むと安全です。
行政書士に委託する場合
  1. 企業側で原案を準備し、行政書士が要件チェック・加筆修正
  2. e-Gov への入力・添付・提出を行政書士が代理
  3. 入管局からの追加照会にも行政書士が一次対応し、企業には内容確認のみ依頼
    専門家のノウハウで不備を最小化できるため、標準1〜2か月で認定証明書が交付されるケースが多く、申請期限が迫っている企業や社内リソースが限られる中小規模店に向いています。

4-3. 在留資格認定証明書の交付・ビザ取得までの流れ

交付後、本人は自国の日本大使館・領事館でビザを申請し、来日後に在留カード申請を行います。

5.受入に関連する事項(協議会・登録支援機関)

5-1. 協議会の役割と加入メリット

各都道府県に設置される外国人雇用協議会では、制度説明会や最新法令の共有を行っています。加入することで、行政とのパイプを活かした情報収集や、同業他社とのノウハウ交換が可能になります。

5-2. 登録支援機関との契約交渉で押さえるべき項目

支援機関を選定する際は、送迎回数、生活オリエンテーション、緊急連絡体制、日本語教育回数など具体的支援内容と費用を明示してもらったうえで、実際の支援範囲と内容を契約書に明記の上で双方の共通認識を作っておく必要があります。

6. 受入後の実務管理と支援計画の策定

6-1. 支援計画の実行・モニタリング体制構築

支援計画は5年間継続して実施・報告が求められます。月次面談、四半期ごとの生活・職場状況調査、年次アンケートを実施し、支援履歴をデータベースで一元管理しておくことで、法務省への定期報告書作成の効率化が可能です。

6-2. 労務管理・労災保険・社会保険の手続き留意点

外国人も正社員同様に労働時間管理システムに打刻が必要なほか、労災・雇用保険・健康保険の資格取得・喪失手続、社会保険算定基礎届などの必要な社会保険手続についても漏れなく速やかに行うことが必要です。

7. 導入時に注意すべき法的リスクと対策

7-1. 同一労働同一賃金・最低賃金遵守のチェック

特定技能1号は地域別最低賃金を下回らない賃金設定が必須です。また、同一労働同一賃金ガイドラインに基づき、正社員との待遇差に合理性があることを明示できるようにしておきましょう。

7-2. 不適切な業務範囲超過・違法就労リスクの回避

支援計画に記載した業務範囲外の作業を命じると在留資格違反となります。厨房での重機操作や清掃スタッフ業務など、計画外の業務は厳禁です。

8. よくある質問(FAQ)

Q. 受入可能な業務内容は?

A. 外食業では調理補助、ホール業務、仕込み、洗い場が可能です。ただし、技能試験範囲内かつ支援計画に記載された業務のみとなりますので、支援計画に記載されていない業務は受入不可となります。

Q. 支援計画は自社で作成できるか?

A. 一定規模以上の企業や技能実習生の受け入れに慣れている会社など、自社での支援計画の作成・実行は可能ですが、初めての受け入れの場合はできるだけ登録支援機関のサポートを受けた方がスムーズに進みます。

Q. 在留期間の更新・変更手続きのタイミングは?

A. 在留期間更新は在留期限の3か月前から申請可能です。支援計画変更・終了報告は変更発生後14日以内に届出が必要となりますので、期限内に必ず更新・変更の実施を行いましょう。

9. 本コラムのまとめ

特定技能1号制度を上手に活用すれば、外食業の人手不足を解消し、人材の長期定着を図ることも可能となります。しかし、特定技能実習生の受入を行うためには必要な要件を満たす必要があり、要件確認・手続き・実務管理を誤ると技能実習生本人の在留資格取消や受入企業側の行政処分のリスクがあります。

当事務所は弁護士と社労士・行政書士が社内連携の上で、外食業の特定技能1号の導入から受入後の運用までワンストップでの支援を行っております。

特定技能実習生の受け入れをご検討中の企業様は、まずは無料相談をご利用ください。

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