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外食業で特定技能人材を受け入れるなら?|特定技能「外食」における協議会加入の要件と加入申請の流れを解説

2025.05.16

外食業界では慢性的な人手不足を背景に、海外人材を活用する企業が急速に増えています。ところが在留資格認定をクリアした後でも、「外食業特定技能協議会への加入が間に合わなかった」「年次報告書の不備を放置してしまった」というような協議会に関するご相談も増えています。

協議会は単なる“名簿登録”ではなく、加入要件を満たしていなければ在留資格そのものが取り消されてしまう可能性もあります。本コラムでは、協議会加入の要件から申請フローまで弁護士が解説していますので、協議会加入について不安な点がある企業様はぜひ最後までご覧ください。

もくじ

1. 外食業分野の「特定技能協議会」とは?一制度設計と国のねらい

特定技能協議会は、外食業分野で外国人を受け入れる企業(所属機関)や登録支援機関が加入し、①情報共有、②遵法監視、③業界課題の行政提言を行うための枠組みです。農林水産省・出入国在留管理庁が所管し、「受入れ企業の自助努力だけでは把握しづらい法令違反を横断的に摘発する」ことが制度創設の目的です。加入企業の一覧は省庁HPで公開され、取引先のコンプラ指標にも使われています。

2. 協議会加入は義務?免除?—法令・通達で定める対象範囲

協議会への加入は「すべての受入れ企業が無条件で義務」というわけではありません。外食業分野運用要領は、①所属機関が直接受入れを行う場合は原則加入を必須としつつ、②支援業務を登録支援機関や監理団体へ全委託する場合には加入義務を免除できる、という二段構えのルールを採用しています。以下で、具体的に整理します。

2-1. 在留資格認定後4か月以内に加入が必要となるケース

外食業で特定技能1号を受け入れる企業は、原則として在留資格認定証明書交付日から4か月以内に協議会へ加入しなければなりません(外食業分野運用要領第5章)。加入が遅れると受入れ停止命令や在留資格の取消し事由になり得ます。

2-2. 登録支援機関・監理団体が代替できる例外パターン

自社ではなく「登録支援機関」が協議会会員であれば加入義務を免除される場合があります。ただし、支援を丸ごと委託していない“自社支援+外部一部委託”のハイブリッド形態では、所属機関側も加入が必要になるため要注意です。運用要領上の解釈が複雑なため、事前に弁護士へ相談し、義務有無の確認をしておくと安全です。

3. 外食業特定技能協議会の加入要件とは?

3-1. 「外食業特定技能協議会」加入要件(抜粋)

以下は 農林水産省が公表している ①「外食業分野 特定技能運用要領」 ②「食品産業特定技能協議会 FAQ」 に記載された公式要件の主なポイントです。

加入を義務づけられる主体
  • 特定技能所属機関(=受入れ企業・店舗)
  • 当該外国人の支援を全面受託する登録支援機関

    ※いずれも協議会に未加入のままでは「特定技能外国人を受入れられない」と明示(農林水産省)

加入タイミング
  • 令和6年6月15日以降は 出入国在留管理庁への在留諸申請を行う前 に協議会構成員になることが必須(告示改正)
  • 既存在留資格を持つ外国人を雇用中の企業は、在留許可日から4か月以内に加入する経過措置あり。
加入申請時に求められる書類・情報(農林水産省オンライン申請フォーム)
  • 営業許可証の写し
  • 直近2期の決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 受入れ予定人数・事業所一覧・日本標準産業分類コード
  • 誓約書(法令遵守・暴排排除・個人情報保護等)
  • 登録支援機関と委託契約を締結している場合は支援委託契約書
遵守事項(加入後の義務)
  • 協議会・農林水産省の要請に対する「必要な協力」義務(情報提供・報告・立入検査への対応等)
  • 年1回の定期報告書・実績報告書提出(受入れ状況・賃金台帳写し等)
  • 外国人労働者の引き抜き自粛など協議会申し合わせを順守
  • 費用
    • FAQによれば「当面の間、入会金・年会費等は徴収しない」ことが公表されています。
    • このように、協議会は“任意団体”ではなく受入れ資格の前提条件になっています。書類不備や加入遅延は在留資格取消し・受入れ停止命令の直接要因となるため、公的要件を満たしているか早期にチェックし、余裕をもって加入申請を行うことが不可欠です。

      3-2. 外食業の協議会が求める「所属機関」の適格基準

      加入申請書で最も差戻しが多いのが財務・労務要件です。

      • 資本金500万円以上/常勤従業員5人以上(目安)
      • 過去3期の決算で債務超過・税滞納がない
      • 健康保険・厚⽣年金・雇用保険の適用事業所
      • 暴排条項:役員・株主・主要取引先が反社でない

    上記のような財務・労務要件を満たさない場合は加入ができないため注意しておきましょう。

    なお、農林水産省・出入管のガイドラインには 「直近期末に債務超過がある場合は、中小企業診断士や公認会計士など第三者による“経営改善の見通し評価書”や追加の納税証明書を提出すれば審査対象になり得る」 と定められていますので、債務超過になってしまった場合でも財務的な裏付書類の準備ができれば加入が認められることもあります。

    4. 協議会加入申請フロー(外食業特定技能)

    農林水産省サイトに掲載されている「入会の流れ」を要約すると、手続きは次の5ステップです。

    STEP 1 オンライン申請フォームを送信

    協議会トップページの「加入申請フォーム:特定技能所属機関(受入れ機関)」から、事業者情報・受入れ人数計画などを入力して送信します。

    STEP 2 事務局から受付メール受領

    数日以内に協議会事務局から自動ではなく担当者名義の受付メールが届きます。以降のやり取りはこのメールに返信する形で進めるのが公式フローと明示されています。

    STEP 3 必要書類(PDF)をメール添付で提出

    受付メールに記載された一覧に従い、

    • 誓約書(法令遵守・暴排排除・個人情報保護の3種)
    • 営業許可証の写し
    • 直近2期の決算書(貸借対照表・損益計算書)
    • 支援委託契約書(登録支援機関を利用する場合)

    などを PDF 化して返信します。

    STEP 4 協議会による審査(1〜2 か月)

    提出書類に不備がなければ 3〜4 週間、追加照会が入ると最長で2か月程度要すると FAQ に明記されています。照会メールは「5営業日以内に回答」を求める運用です。

    STEP 5 「構成員証」発行・名簿掲載

    審査完了後、事務局から加入承認メールと PDF の「構成員証」が送付され、翌月の協議会名簿に社名が掲載されます。名簿掲載をもって正式加入となり、出入国在留管理庁の在留諸申請が可能になります。加入審査には余裕をもって取り組むよう同 FAQ で注意喚起されています。

    5. 協議会加入後に求められる年次報告と遵守事項

    協議会構成員になると「定期報告書(年1回)」と「実績報告書(事業年度終了後3か月以内)」をオンライン提出する義務が生じます。

    報告内容は以下の項目となります。

    ①受入れ人数と在留資格の内訳

    ②賃金台帳写しと最低賃金遵守状況

    ③日本語教育・生活支援の実施記録

    ④離職者の有無と理由

    提出遅延や虚偽記載があると、まず協議会から是正勧告が発出され、従わない場合は農林水産省を経由して出入管に通報されることもありますので正しく報告を行いましょう。

    6. コスト最適化のヒント

    農林水産省 FAQ では「当面の間、協議会への入会金・年会費は徴収しない」と明記されていますので、協議会へ支払う会費は現行制度ではゼロです。

    ただし登録支援機関への委託料や書類翻訳費用など、周辺コストは別途発生するため、留意が必要となります。

    6-1. 実務で発生する3つの周辺コスト

    協議会加入に関連する周辺コストについて、以下おおよその相場について整理します。

    1.登録支援機関への委託料
    • 完全委託型:月額1万〜2万円/人が相場(生活支援・日本語教育・24時間相談窓口を含む)
      • 部分委託(住居支援のみ等):月額5,000円前後/人
      • 2.書類翻訳・電子申請サポート費
        • 雇用契約書・誓約書のベトナム語/インドネシア語翻訳 1案件3万〜5万円
        • gBizID 取得・オンラインフォーム入力代行 1回あたり5万円前後
        • 3.年次報告・監査対応コスト
          • 社労士の定期監査(四半期レビュー) 月額2万〜3万円/店舗
          • 外国人台帳クラウドシステム利用料 月額1,000円/人程度
          • 6-2. コスト最適化についての具体例

            自社支援+一部委託で固定費圧縮

            カウンセリングや24時間緊急対応のみ外部委託し、生活オリエンテーション・入管書類は社内で実施する。

            グループ会社で複数店舗を束ねる形で監査費を圧縮

            ホールディングス本社1社が協議会に加入し、子会社店舗を「関連事業所」として登録する。

            その他、勤怠や賃金データをクラウド化することで、社内の事務担当者の集計工数を圧縮することでの人件費削減もコスト最適化の手段の一つです。

            自社の状況を踏まえて、最適な方法を検討してみられてください。

            7. よくある質問(FAQ)—協議会加入と外国人雇用の実務

            Q 協議会に加入せずに特定技能人材を雇い続けたらどうなる?

            A 在留資格認定証明書交付日から4か月以内に協議会へ加入しない、または令和6年6月15日以降に構成員証を提出せず在留諸申請を行った場合、出入国在留管理庁は「受入れ停止命令」や在留資格取消し(入管法第19条の16)を発出することがあります。行政処分が出ると以後5年間は受入れ申請自体が認められないリスクがあります。

            Q 協議会の年次報告で提出する「賃金台帳写し」は何を満たす必要がある?

            A  ①最低賃金を下回らない額であること、②深夜・時間外割増が計算されていること、③社会保険料控除が適切であること——の3点を協議会・出入管が確認しますので正確な給与計算が必要です。勤怠システム、給与計算ソフトのデータをそのまま出力するなどの方法をとると誤転記を防げるほか、事務担当者の工数削減にもつながります。

            Q 登録支援機関へ一部業務を委託する場合も協議会加入は必要?

            A 「生活相談だけ外部委託」「夜間緊急対応のみ委託」といった部分委託では、所属機関(受入れ企業)自身が協議会へ加入しなければなりません。加入免除が認められるのは〈支援計画20項目をすべて登録支援機関が実施〉する場合に限られます。

            Q 外国人の個人情報を協議会へ提出する際、個人情報保護法上の留意点は?

            A 受入れ企業は「利用目的を限定し第三者提供に同意を得る」義務があります。協議会提出用の台帳には①在留カード番号のマスキング、②氏名カナのみの記載で足りるため、原則として本人同意は不要です。

            Q 未成年(18歳未満)の特定技能人材を雇う場合の追加手続きは?

            A 外食業の特定技能1号は18歳以上を対象としているため、新卒採用等で18歳未満を受け入れることはできません(入管法施行規則第1条の4)。仮に「留学生アルバイト」から在留資格変更を予定する場合でも、特定技能に移行する時点で18歳に達している必要があるため、進路計画の段階で年齢要件を確認してください。

            8. 本コラムのまとめ ─ 安全かつ効果的に協議会加入と特定技能受入れを進めるために

            協議会加入は「入管審査の単なる書類手続き」と軽視すると、在留資格取消しや受入れ停止命令に繋がりかねません。本記事で解説した①加入要件チェック、②申請フローの正確な理解、③費用最適化、④年次報告と監査体制——の4ポイントを押さえ、専門家と連携して進めることが最短かつ安全な道です。当事務所は弁護士・社労士・行政書士が社内で連携の上、協議会加入前の要件確認から実際の申請手続、その後のフォローまで一貫してサポートを行っております。

            特定技能実習生の受け入れについて不安がある企業様や協議会の加入について疑問がある企業様は、まずは初回無料相談をご活用ください。

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