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飲食店が営業停止処分になるケースとは?食中毒や衛生管理の不備から店を守るための初動対応を弁護士が解説

2026.01.20

飲食店にとって、営業停止処分は売上の断絶だけでなく、信用の失墜を招く重大な問題です。しかし、焦って不適切な対応をすれば、事態はさらに悪化しかねません。本記事では、飲食店が営業停止になる具体的なケースや処分の流れ、初動対応を実務的に解説します。

第1章 飲食店が「営業停止処分」を受ける主な原因

飲食店を経営するうえで、行政から下されるもっとも重いペナルティの一つが「営業停止処分」です。これは食品衛生法などの法律に基づき、知事や保健所長が、その店舗の営業を一定期間禁じる行政処分を指します。

1-1 最も多い原因、食中毒の発生

飲食店が営業停止処分を受ける原因として多いのが食中毒の発生です。
利用者から「店で食事をした後に腹痛や下痢になった」という連絡が保健所に入ると、保健所は調査を開始します。調査では、患者の共通食の確認、検便の結果確認、そして店内のふき取り検査などが行われます。
これらの結果から、店が提供した食事が原因であると判断され、食品衛生法第6条(不潔な食品等の販売禁止)に違反すると認められた場合には、同法第60条に基づき営業停止処分が下されることがあります。

1-2 施設設備や調理工程が基準に達していない衛生管理の不備

実際に食中毒が発生していなくても、営業停止処分になることもあります。それは、保健所の定期検査や抜き打ち検査で、衛生管理の不備が指摘された場合です。例えば、冷蔵庫の温度管理がなされていない、ネズミや害虫の駆除が放置されている、調理場の設備が許可基準を大きく下回るほど老朽・汚損しているケースなどが該当します。
まずは改善命令が出されることが一般的ですが、その命令に従わない場合や、放置すれば食中毒発生のリスクが極めて高いと判断された場合には、営業停止を命じられることもあります。

1-3 深夜営業のルールや無許可営業などその他の法令違反

食中毒や衛生管理の不備に限らず、営業形態や営業時間に関する法令違反が問題となるケースもあります。
代表的なものが無許可営業です。たとえば、飲食店営業許可の更新を失念したまま営業を継続していた場合や、許可を受けた業態と異なる実態で営業している場合には処分の対象となります。
また、食品衛生法ではありませんが、店内で接待行為を伴う営業実態があるにもかかわらず、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の許可を得ていない場合や、深夜0時以降に酒類を主として提供するにもかかわらず、風営法に基づく深夜酒類提供飲食店営業の届出をしないまま営業を続けている場合なども、公安委員会より風営法に基づく営業停止処分を受ける可能性があります。

第2章 営業停止処分が下されるまでの流れと処分の期間

2-1 立ち入り検査から行政処分決定までの流れ

食中毒の疑いが生じた場合、保健所による「立ち入り検査」が当日または翌日に行われます。立ち入り調査は、一般的に以下のような流れで実施されます。

① 調査

食材、調理器具、従業員の手指などの検査資料を回収。

② 事情聴取

調理手順や当日の献立、従業員の体調管理記録を確認。

③ 行政処分

検査結果が出るまでの間、自主休業を促されることが多く、原因が店にあると特定された段階で正式に「営業停止命令書」が交付される。

食中毒の場合、調査開始から処分決定までわずか数日ということも珍しくありません。

2-2 営業停止は何日間?処分の重さを左右する「過去の違反歴」

営業停止の期間は、自治体の処分基準にもよりますが、実務上は3日間〜7日間程度とされるケースが多く見られます。この期間は機械的に決まるわけではなく、以下のような要素によって加重されることがあります。

  • 食中毒の原因となった菌やウイルスの種類(毒性が強いものなど)
  • 被害者の数(重症者がいるか、広範囲に及んでいるか)
  • 過去の違反歴(以前にも同様の処分を受けていると期間が長くなる)

初めての違反で、かつ誠実な対応が評価要素の一つとなり、結果として処分期間が比較的短くなるケースもあります。反対に、過去に何度も指導を受けているような場合は、1ヶ月以上の長期停止や、最悪の場合は営業許可の取り消しに至ることもあります。

2-3 「営業停止」と「営業禁止」の違い

混同されやすいのが「営業停止」と「営業禁止」です。
この記事で解説している営業停止は、営業禁止よりも処分の度合いが軽く、営業ができない期間も数日間に定められ、その期間が過ぎれば原則として営業を再開することができます。一方、営業禁止は、処分の原因が除去され、安全性が確認されるまで営業を再開できない、営業停止よりも重い処分です。
営業停止と営業禁止のどちらの処分になるかは、保健所による原因究明や、施設設備の危険性の判断によって決まりますが、立ち入り検査後の行政判断を待つまで分かりません。

第3章 【緊急】処分を最小限にするための正しい初動対応

3-1 保健所の調査には誠実かつ迅速に対応し、事実を隠さない

調査に入られた際に、最もしてはいけないのが、事実の隠蔽や嘘の報告です。
たとえば、鮮度が疑われる物を提供したり、清掃記録を改ざんしたりする行為は、すぐに露呈します。不誠実な対応は反省の色がないとみなされ、行政処分の期間が長くなるだけでなく、悪質なケースとして公表される際の文言が厳しくなるリスクもあります。聞かれたことには正直に答え、求められた資料は迅速に提出するのが得策といえます。

3-2 被害者(食中毒患者等)への謝罪と、被害拡大を防ぐための協力

飲食店の利用者から食中毒について直接連絡があった場合は、まずは体調を気遣い、誠実にお詫びを伝えましょう。ここで「まだ保健所から断定されていないから」と突っぱねるような対応をすると、被害者の感情を逆なでし、SNSでの拡散や訴訟問題へと発展するリスクが高まるといえます。また、同じ時間帯に来店した他のお客様へ注意喚起が必要な場合は、保健所の指示に従い迅速に連絡を取るなど、二次被害の防止に協力する姿勢を見せることも大切です。

3-3 原因究明と再発防止策を書面で整理し、保健所に提示する

保健所が処分を検討する際、重視するのは反省と再発防止の姿勢です。
口頭での説明だけでなく、以下のような内容を書面にまとめて提示しましょう。

発生の原因

例:冷蔵庫の故障、従業員の手洗い不足など

直後に行った応急処置

例:食材の廃棄、専門業者による消毒

今後の恒久的な対策

例:チェックリストの刷新、検便頻度の増加などの具体策

自ら改善に動く姿勢を見せることで、処分の軽減やスムーズな営業再開に向けた信頼を得やすくなるといえます。

第4章 営業再開に向けて準備すべき改善報告書と体制整備

営業停止期間が終われば自動的に元通り、というわけではありません。保健所から「改善された」と認められるための具体的な準備が必要です。

4-1 改善報告書の書き方と必須項目

営業再開にあたって保健所に提出を求められる「改善報告書」は、店舗の安全性を証明し、営業許可の継続を認めてもらうための極めて重要な書類です。
以下のような要素を記し、店の安全性を客観的に証明しなければなりません。「がんばります」といった抽象的な言葉ではなく、「いつ、誰が、どのように」チェックするかという具体的な仕組みを記述する必要があります。

改善報告書の記載内容の例
  • 指摘された事項に対する具体的な改善内容
  • 改善後の写真(清掃後や新設備の導入など)
  • 新しいオペレーションの運用ルール

4-2 HACCP(ハサップ)に基づいた衛生管理計画の抜本的な見直し

現在は、すべての食品事業者に「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」が義務付けられています。もし、管理計画が実行性を失っていたのであれば、この機会に抜本的に見直しましょう。重要管理点(CCP)の特定や、加熱温度の記録方法など、実態に即した計画の再構築が重要です。この「計画の見直し」がなされていることは、保健所に対する信頼回復策の一つとなり得ます。

4-3 従業員の再教育と、二度と違反を起こさないためのルール作り

衛生管理を日常的に担うのは、現場で働くスタッフの皆さんです。再発を防ぐために新たなルールを定めた場合は、その内容を形式的に伝えるだけでなく、なぜ必要なのかという必要性まで含めて丁寧に共有することが重要です。
営業停止処分に至った原因や背景を全員が正しく理解することで、現場の意識が変わり、同様の違反を繰り返すリスクを抑えることができます。加えて、スタッフ全員が危機意識を持ち、改善に取り組んでいる姿勢を保健所に示すことは、営業再開に向けた評価においても重要といえます。

第5章 営業停止を防ぎ、信頼される店であるために

営業停止のリスクは、衛生管理の問題にとどまらず、従業員の離職や資金繰りの不安定化、ブランドイメージの低下など、経営全体への連鎖的な影響を否めません。違反や指摘を受けてから対処するのではなく、まだ起きていない今こそが対策のタイミングといえます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士・社会保険労務士・税理士・行政書士などが連携したワンストップ体制により、企業経営の多角的なサポートを行っています。「この運営で本当に問題ないのか」「一度、専門家の視点でチェックしておきたい」と感じられた段階でご相談いただくことが、結果的に店と経営者自身を守ることにつながります。ぜひお気軽にご相談ください。

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