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【不動産業】建替えを進めたいのに…立ち退きに応じない賃借人への対応

2025.06.13
業種 不動産業
企業規模 従業員10名以下
カテゴリ 企業間紛争
担当弁護士 所属弁護士
ご契約方法 スポット

ご相談時のご状況

本件は、築年数が50年以上で、耐震性に問題があると診断された建物について、建替えを予定されていたオーナー様からのご相談でした。
建物には4室のテナント及び複数の個人が入居していましたが、3 室のテナントは定期借家契約のため契約終了時期が決まっており、個人入居者とは順次契約終了の合意ができている状況で、1室のテナント(普通賃貸借契約)のみが法外な立退料を応じて譲らず、建替え工事全体のスケジュールへの影響が懸念される状況でした。
当初、オーナー様は、管理会社の担当者を代理人として当該テナントと交渉を進めていましたが、法外な立退料が要求された際、管理会社は減額交渉することなく、知り合いの弁護士から「その金額でもおかしくはない」との見解を得たとして、オーナー様に対し、法外な立退料を支払う前提での合意を迫っていました。
オーナー様としては、当該テナントから要求されている立退料は高いと思っておられましたが、弁護士から妥当と言われたので合意するしかないと諦めかけていたそうです。
しかし、オーナー様は、管理会社とは別の不動産会社に相談した上で、建替工事のスケジュールに合わせて当該テナントを退去させつつ、立退料を減額させることができるなら、とのことで、当事務所にご相談いただきました。

解決・改善に向けた当事務所のアドバイス・対応

ご依頼後、オーナー様のご意向をふまえ、まずは任意での解決を図ることとし、オーナー様の理解を得て、オーナー様提示の立退料を増額した上で、当該テナント側に接触し、丁寧に説明し、交渉を進めました。しかし、当該テナント側は、「自分たちの生活を保障してほしい」と言って、自らが提示した法外な立退料に固執するばかりか、その立退料の算定根拠の提出を求めても、「忙しい」などと言って資料を提示することなく、こちらへの接触を避けるなど、時間稼ぎとしか思えない対応を続けていました。そのため、建替工事のスケジュールをにらみつつ、オーナー様と協議し、訴訟提起することにしました。
訴訟提起直前になって、当該テナントは、オーナー様の同意なく、契約書上の賃借人本人ではなく賃借人本人の息子が実質的に物件を使用している状態であることが判明したことから、訴訟では、契約上の義務違反及び信頼関係の破壊を主張するとともに、建物の老朽化・耐震性不足に基づく建替えの必要性等を主張し、契約解除の正当性を立証していきました。
訴訟において、相手方代理人は、高額な立退き条件を提示してきたほか、裁判所から何度注意されても書面の提出期限を守らず、時間稼ぎのような行為を繰り返していました。オーナー様は、建替工事のスケジュールに支障をきたさないよう、早急な建物明渡しを強く希望しておられましたので、当事務所としては、裁判所に対して、相手方代理人の訴訟態度を問題視すべきであること、訴訟の早期進行を図るべきであることを主張して、裁判所が介入する形での和解を模索するとともに、これと並行して相手方代理人と直接交渉することで、早期解決を目指しました。
最終的には、訴訟外で相手方代理人と直接交渉していたことが功を奏し、オーナー様が依頼しているデベロッパーとすりあわせた上で、建替工事のスケジュールに間に合うよう、相手方との賃貸借契約を合意解除して建物を明け渡す旨の裁判上の和解を成立させることができました。
最終的に、オーナー様のご負担額は、当該テナントが当初希望していた立退料と比較すると、弁護士費用等のご負担を考慮しても、約750万円削減することができました。
当事務所では、和解成立後も、明渡し予定日の調整、立退料の振込手続の確認などをサポートし、依頼者が安心して解決まで進められるよう継続的に対応しました。

適正な事業運営にあたってのポイント

建物の建替えや再開発を検討する際、たった1室の退去が進まないことで、全体の工事スケジュールに大きな影響を及ぼすことがあります。
もちろん、立退料を積めば、明渡しは早くできますが、そこはバランスの問題となります。仲介業者やデベロッパー等の中には、工事スケジュールを重視するあまり、オーナー様が負担する立退料が高額になってもやむを得ないというスタンスで、立退き交渉をまとめるようアドバイスしてくる業者もいないとはいえません。立退料の算定が妥当かどうかは、判例及び経験に精通した弁護士によるアドバイスが有効です。
また、今回のように、実は契約書上の賃借人本人が建物を使用していないとか、あるいは、賃借人が契約条件とは異なる使い方をしていたといった事案では、契約終了・明渡し請求において有利な条件で合意できる場合もありますので、弁護士によるアドバイスが有効です。
そして、今回のように、法的手続を見据えたうえで早期に方向性を定め、必要に応じて訴訟提起を進めることが、結果としてスムーズな解決につながるケースもあります。
当事務所では、事業用不動産に関するトラブル対応はもちろん、契約・交渉段階でのアドバイスから、直接交渉・訴訟・明渡し履行支援に至るまで、一貫して対応が可能です。建物の立退事案でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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