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1. 倉庫業における法務リスクと留意すべき規制
倉庫業は、荷主との契約、物流事業者との連携、施設の安全管理、労務管理など、多岐にわたる業務を担う一方で、それぞれに法的リスクが存在します。
とりわけ、貨物の保管を中心とした業務は、トラブルが発生した際に「保管責任の所在があいまい」なまま損害賠償請求に発展するケースが多く、あらかじめ契約書や社内体制を整えておくことが重要です。
1-1. 倉庫業法・貨物自動車運送事業法との関係
営業倉庫業として国土交通省への登録が必要な事業者は、倉庫業法の適用を受けます。
また、輸送・配送を含む業務を兼ねて行う場合には、貨物自動車運送事業法の遵守も求められます。
これらの法令に基づく許認可・届出手続きが適切に行われていないと、行政処分や業務停止のリスクがあります。
さらに、実態として運送と保管が一体化している場合には、どちらの法規制にも対応した契約・運用体制が必要です。
1-2. 保管契約・寄託契約に基づく責任とトラブル防止策
多くの倉庫業者は、荷主との間で「保管契約」や「寄託契約」を締結しています。民法上、寄託契約は受寄者に善管注意義務を課し、故意過失がある場合には損害賠償責任を負う可能性があります。
火災・盗難・劣化などの事故が発生した際、倉庫側の過失が問われると、数百万円〜数千万円単位の損害賠償を請求されることもあります。
こうした事態に備えて、契約書には「免責条項」「損害賠償の上限」「保険の付保」などを明記し、責任の所在を明確化しておくことが不可欠です。
1-3. 施設管理上の安全配慮義務と事故発生時の責任
施設管理者として、倉庫業者には民法上の安全配慮義務が求められます。
棚の倒壊、フォークリフト事故、漏水・火災といったリスクに備え、ハード面の点検とソフト面(作業マニュアル・指導記録)の整備を同時に進めることが重要です。
2. 荷主・運送事業者との契約実務と注意点
倉庫業では、荷主企業や運送業者との取引が日常的に発生しますが、契約上の責任分界点があいまいなまま業務を行っているケースも多く、リスクが顕在化しやすい分野です。
2-1. 保管料・損害賠償条項の設計と交渉のポイント
保管料の支払い方法や損害賠償条項をあいまいにしたまま契約してしまうと、荷主との間で後々のトラブルに発展します。
たとえば「指定期間超過後の保管料発生条件」「誤出荷時の損害額の算定基準」「遅延損害金の取り扱い」などを明文化し、双方の合意形成を図ることが重要です。
2-2. 荷主との共同責任リスクと限定責任の明示
入出庫データのミスや在庫管理トラブルなど、双方に過失のあるケースでは、損害の分担割合を巡って紛争になることがあります。
これを防ぐためには、契約書の中で「責任の限定条項」を設け、保管対象物の種類や価値に応じた責任範囲を調整することが有効です。
2-3. 運送委託・配送業者との関係整理と再委託リスク
倉庫業者が運送も含めて請け負う場合、配送業者との契約関係も明確にしておく必要があります。
とくに、再委託先で事故や紛失が発生した場合に、元請けとして責任を負わされないよう、「責任免除条項」「保険加入義務」「トラブル報告義務」などを契約に盛り込んでおくことが重要です。
3. 労務管理と安全衛生:倉庫業特有の人材管理リスク
倉庫業では、正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣労働者など様々な雇用形態の人材が多いため、労務トラブルや労災のリスクが相対的に高い業種です。
3-1. 労働時間・シフト制度と残業代管理の注意点
早朝・深夜の荷受け、繁忙期のシフト過密などにより、労働時間管理が煩雑になりがちです。
打刻漏れや休憩時間の未取得があると、未払い残業代を請求されるおそれがあるため、正確な勤怠管理および残業時間管理体制の整備が求められます。
3-2. フォークリフト等の特定作業における安全教育義務
倉庫内でフォークリフトやリーチ車などを扱う場合、特別教育や技能講習の受講が義務付けられています。
また、作業中の事故が発生した場合の対応マニュアルや報告体制も整備しておくべきです。
3-3. 外部作業者・派遣労働者との契約と法的管理責任
外部委託業者や派遣社員についても、安全管理の責任は原則として受け入れ側(倉庫側)にあります。
契約段階で「責任分担」「指揮命令の範囲」などを明記し、法的責任を限定・明確化することが必要です。
4. 当事務所におけるサポート
当事務所では、社労士資格も保有した弁護士を中心に企業法務・労務に特化したサポートを行っております。
契約書作成・リーガルチェックや荷主とのトラブル対応等の法務面だけでなく、安全衛生マニュアルの作成、労務体制の整備支援などの労務面までワンストップで対応いたします。
顧問弁護士としてご活用いただくことで万が一のトラブル発生時の初動対応についても弁護士が迅速に動くことができますので、継続的なフォローをご希望の場合は顧問弁護士契約もぜひご検討ください。
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