飲食業

1. 飲食業における法務リスクと実務上の注意点

1-1. 食品衛生法・風営法・営業許可の法的留意点

食品衛生法に基づく営業許可は、開業時のみならずメニュー変更や施設改装時にも追加手続きが必要な場合があります。
さらに、深夜営業(深夜0時以降の酒類提供)を行う店舗では風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)上の届出義務が生じることもあります。
これらに違反した場合、営業停止・営業許可の取消を受ける可能性もあり、無許可で営業を行うと刑事罰に問われるリスクもあるため、営業実態と法的届出状況の定期的な照合が重要です。

1-2. トラブル・クレーム対応の損害賠償リスク

異物混入や店舗側の落ち度による顧客とのクレームやトラブルは、内容によっては損害賠償の話に発展することもあります。
万が一の際に備えて、事実確認の体制、報告手順、対応マニュアルの整備が必要です。
また、対応を誤るとSNS等での拡散による 評判損害を招くこともあるため、初期対応の質が問われます。

1-3. 食中毒・感染症発生時の行政対応と損害補償義務

食中毒や感染症の発生は、顧客への健康被害とともに、店舗の信用失墜・営業停止という重大リスクを伴います。
保健所への報告義務(食品衛生法第28条)を怠ると、刑事責任や営業許可取消の対象になりかねません。

また、食品衛生責任者の配置は法令上の義務ですが、実際には「配置しているだけで教育や監督が機能していない」ケースも多く、トラブル時には過失責任を否定しきれないリスクがあります。
感染者が発生した場合、症状の重さにかかわらず、記録不備や衛生管理マニュアルの未整備があれば、損害賠償責任を問われる可能性があります。
そのため、責任者を中心とした社内体制の強化が不可欠です。

1-4. フランチャイズ加盟・独立開業における契約トラブル

飲食業におけるフランチャイズ契約では、「ロイヤリティの条件が不明確」「商圏制限が厳しすぎる」「経営支援が機能していない」といったトラブルがしばしば発生します。
中小企業庁のガイドラインや判例上の考え方を踏まえ、契約書のレビュー、解除条項・競業避止義務の有無、情報開示義務の確認など、契約締結前の慎重な検討が必要です。

2. 従業員管理と労務トラブルの予防

2-1. シフト制勤務の労働時間管理と未払残業代リスク

飲食業は人材の出入りが多く、長時間労働が常態化しやすい業界です。
繁忙期や深夜営業を含むシフト勤務では、勤務実態と勤怠管理表が一致しないことが多く、未払残業代請求が発生する原因となります。

特に正社員に対して「固定残業代制度(月給に一定時間分の残業代を含める制度)」を導入している店舗では、制度の適法性(明確な内訳の記載、実残業時間の記録、超過分の支払い)が不十分な場合、制度自体が無効と判断されるリスクがあります。
中小の飲食店では運用が曖昧なまま導入している例も見受けられ、注意が必要です。

労働時間の客観的な把握(タイムカード・打刻アプリ等)の徹底と、36協定の内容との整合性が重要となります。

2-2. 外国人雇用時の注意点

技能実習生や特定技能外国人を雇用する場合は、入管法および出入国在留管理庁の運用指針に従い、適切な在留資格に応じた業務内容と労働条件を提供する必要があります。
不法就労や在留資格外活動が判明すると、罰則対象となりますので要件の遵守が不可欠です。

また、外国人スタッフに対して、業務内容や労働条件を本人が理解できる言語で明示していない場合、雇用契約書の作成義務違反に加え、事故発生時に「業務指示の不備」や「教育義務違反」を問われる可能性があります。
これにより、労災が発生した場合に企業側の過失が重く評価され、損害賠償や行政指導につながるリスクが高まります。

2-3. 安全衛生・ハラスメント対策

従業員の心身の健康保持に対する配慮として、労働安全衛生法に基づく健康診断やストレスチェックの実施だけでなく、パワハラ・セクハラ・顧客クレームによるメンタルヘルス悪化に対応する社内体制も求められています。
職場におけるハラスメントは「事業主の防止措置義務」の対象となっており、実効性ある相談窓口・社内研修・懲戒規程の整備が不可欠です。

3. 店舗運営と日常業務に関わる法的リスク

3-1. 店舗賃貸借契約の注意点と原状回復トラブル

店舗物件を賃借する場合、契約書上の「原状回復」条項が曖昧であると、退去時に高額な工事費を請求されるトラブルが後を絶ちません。
特に内装工事や看板設置の内容が事前に賃貸人と書面で合意されていない場合、「造作はすべて撤去」とされることがあります。
また、解約通知の期限や中途解約違約金の設定も、契約書での確認が必要です。

3-2. 景品表示法とキャンペーン・集客施策の法的規制

「○○定食無料キャンペーン」や「SNS投稿でドリンク一杯サービス」などの集客施策は、内容によっては景品表示法における「不当表示」や「過大な景品類の提供」に該当することがあります。
特に価格表示、割引表示の際には「通常価格」の根拠が明確であることが求められますので、広告物やWebページの表示内容は、法的観点での事前確認を実施することが望ましいでしょう。

4. 当事務所におけるサポート範囲・強み

当事務所では、飲食業に特化した法務支援として、店舗運営に関わる契約管理、クレーム対応、労務問題、フランチャイズ契約、保健所対応までワンストップで対応可能です。
弁護士を中心に、社労士・税理士・行政書士との社内連携により、衛生管理・許認可・労務監査など多面的にサポートを行っております。

顧問契約をご利用いただければ、リスクの早期発見・法改正対応・日常的な相談体制を継続的にご提供いたしますので、長期的なサポートをご希望される場合は、ぜひ顧問弁護士としてもご活用ください。

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