農林水産業

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1. 農林水産業における法務リスクと現場での実務課題

農林水産業は、自然環境・地域社会・人材との関わりが密接である一方、多様な法令の適用を受け、目に見えにくい法的リスクが日々の経営に潜んでいます。
特に、土地・資源の利用や取引契約、家族経営の慣習など、曖昧な運用が紛争の火種となる場面も少なくありません。

1-1. 農地法・森林法・漁業法に基づく使用・転用・許可の確認

農地や森林、漁場は、単なる「土地」や「水面」ではなく、それぞれ農地法・森林法・漁業法によって厳格な利用制限が設けられています。
たとえば、農地を他用途に転用する場合は、原則として農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。
許可を得ずに転用した場合、原状回復命令や罰則の対象になる可能性もあります。
林地開発や漁業権の取得・譲渡に関しても、同様に地域や業種に応じた行政手続きが求められます。

1-2. 生産物に関する責任(異物混入・汚染等)と損害賠償リスク

農作物・水産物などの出荷品に異物が混入していた場合や、残留農薬・重金属などの汚染が発覚した場合には、民法や製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償請求のリスクが生じます。
出荷先の販売業者がリコールや返品を余儀なくされるような事案では、損害額も大きくなりがちです。
帳票の管理や生産工程の記録保存といった「証拠を残す体制」の整備が、万一のリスクを軽減する鍵となります。

1-3. 共同経営・家族経営における契約不備とトラブル発生事例

農業・林業・漁業では、親族や地域住民との共同経営を行っていることもよくありますが、明確な契約がないまま「口約束」で運営しているケースも多く、出資割合・収益配分・業務分担が曖昧なまま時間が経過すると、後々大きなトラブルになります。
とくに経営悪化や相続のタイミングで利害が衝突する例が多いため、あらかじめ協定書や業務委託契約などの書面を整備しておくことが、関係性を守るためにも重要です。

1-4. 農協・漁協・組合等との契約・支援スキームの注意点

協同組合との関係は、信用・購買・出荷など経営基盤の一部を担っていますが、その契約内容を十分に確認せずに依存していると、利益配分・脱退等の面で不利な立場に置かれることがあります。
出資金の返還条件や販売手数料の算出方法、契約更新・解除に関する条項は、法的にも経営的にも確認しておくべき重要なポイントです。

2. 労務・人材管理と安全管理体制の整備

2-1. 季節労働者・外国人技能実習生の雇用契約と法令遵守

収穫期や繁忙期に臨時で雇用される労働者に対しても、労働基準法に基づく雇用契約書の作成・労働条件の明示が義務づけられています。
とくに外国人技能実習生については、技能実習法に基づく計画認定、在留資格の確認、労働時間や賃金の適正な管理が求められます。
言語の壁を理由に労働条件や業務内容の説明が不十分な場合、労基署や入管による是正指導の対象となる可能性がありますので、適切な雇用体制づくりが不可欠です。

2-2. 長時間労働・災害・労災保険未加入に関するリスク

自然環境を相手にする業種の特性上、長時間労働や屋外作業中の災害リスクが高いにもかかわらず、労働時間管理や労災保険の整備が遅れている事業者も少なくありません。
とくに法人化していない個人経営では、労働保険加入がなされていないこともあり、事故発生時に重大な賠償責任を問われることがあります。
業種特有の作業工程に応じたリスク評価と、労働保険の適用確認を含めた体制整備が重要です。

3. 農業経営継承と資産管理の法的留意点

3-1. 経営継承に伴う相続・贈与と農地の承継トラブル

農業・林業では、相続人間で農地・機械・借入金などをどう分割するかが大きな問題になります。
農地は相続によって自由に分けられるわけではなく、「農地法上の適格性(農業従事者であるか等)」を満たさない相続人が取得することに制限があります。
贈与税の優遇制度なども含め、承継の手順はあらかじめ設計しておくことが重要です。

3-2. 農業法人化・後継者支援スキームの法務チェックポイント

法人化により、所得分散や補助金対象の拡大などのメリットがありますが、出資比率・役員構成・契約書の整備が不十分だと、内部対立や意思決定の停滞につながります。
また、後継者が役員に入っていながら実質的な権限を持たない「名義貸し」状態では、承継後の混乱の原因になります。
法人定款、株式譲渡契約、役員契約などの整備が必要不可欠です。

4. 当事務所におけるサポート範囲・強み

当事務所では、農林水産業に特化した法務支援として、農地・森林・漁業権の利用契約、補助金申請、法人化・経営承継、労務管理、行政対応まで幅広く対応しています。
弁護士だけでなく、社労士・税理士・行政書士と社内連携し、複雑な制度にも強い体制を構築しております。
顧問契約により、困ったときにすぐ相談できる法務パートナーとして、リスクの早期発見から万が一のトラブル対応まで、継続的な支援を提供しています。
長期的なサポートをご希望される場合は、ぜひ顧問弁護士としてもご活用ください。

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