4つの上場市場と特徴
日本の株式市場は複数の市場に区分されており、市場ごとに異なる上場基準・審査の考え方が設けられています。そのため、企業が上場を検討する際には、上場をするかどうかだけでなく、どの市場を目指すのかという市場区分の選択が極めて重要になります。
上場準備においては、監査法人をはじめとして税理士、弁護士、社会保険労務士など複数の専門家が関与し、それぞれの役割を担いながら進めていくこととなります。
上場区分については、大きく分けて4つの上場区分があります。上場基準を整理したうえで、自社での上場準備を進めることをおすすめします。
プライム市場
プライム市場は、東証の中でも最も高い水準の企業統治と市場流動性が求められる市場です。主に、国内外の機関投資家からの投資を前提とし、中長期的な企業価値向上を継続的に実現できる企業が対象となります。
単に企業規模が大きいというだけでなく、経営判断の透明性、リスク管理能力、説明責任を果たせる体制が整っているかが重視されます。
上場基準
プライム市場を検討するにあたっての財務基準としては、上場時点で流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上、株主数800人以上といった要件が設けられており、市場全体として高い流動性と投資対象としての規模感が求められます。
また、上記の定量基準に加え、以下のような経営管理体制そのものが厳しく審査されます。
●取締役会の実効性
●独立社外取締役の関与
●内部統制システムの整備状況
●コンプライアンス違反の有無・対応履歴
また、形式的に基準を満たしているだけでは不十分で、上場後もこの水準を維持できるかという視点で見られる市場となります。
スタンダード市場
スタンダード市場は、一定の事業規模と安定した収益基盤を有する中堅企業を主な対象としています。
プライム市場ほどの流動性やグローバル展開は求められませんが、上場企業としての基本的な管理体制は当然に前提となります。
上場基準
スタンダード市場の財務基準の目安としては、流通株式時価総額10億円以上、株主数400人以上、流通株式比率25%以上が基準となり、安定した事業基盤を有する中堅企業が主な対象となります。
また、財務基準に加え、以下のような実務面の整備状況が確認されます。
●契約書の管理体制(雛形の整備、レビュー体制)
●労務管理(労働時間、未払残業代リスク、就業規則)
●社内規程の整合性
●コンプライアンス違反への対応体制
こちらもプライム市場と同様、形式的に基準を満たしているだけではNGとなり、これまでの運用では問題がなかった部分について、上場準備の過程で、法務・労務の不備が顕在化するケースも少なくありません。
グロース市場
グロース市場は、高い成長可能性を持つ企業を対象とした市場です。
現時点での利益水準よりも、事業モデルの持続性や将来の成長戦略が重視されます。
スタートアップやベンチャー企業にとっては選択肢となりやすい点が特徴の一つといえます。
上場基準
プライム・スタンダード市場ほど厳格な時価総額要件は設けられていませんが、上場時点で一定の時価総額・株主数(原則150人以上)が必要とされます。
グロース市場では、特に成長戦略の合理性や実現可能性が審査されますが、同時に、以下のような基礎的なリスク管理も確認されます。
●労務トラブルの有無
●契約関係の整理状況
●創業者・役員間の権限関係
●株式・新株予約権の管理
成長性が重視される一方で、労務トラブルや契約リスクなどの基礎的なコンプライアンス欠如は大きなマイナス要因となります。
プロマーケット市場
プロマーケット(Tokyo PRO Market/Fukuoka PRO Market)は、一般投資家向けではなく、プロ投資家向けに設計された市場です。
「プライム・スタンダード・グロースは現時点では難しいが、事業の実態や将来性には一定の評価を得られる余地がある」という企業にとって、現実的な選択肢となります。
上場基準
他の一般投資家向けの市場とは異なり、プロマーケットはプロ投資家のみを対象とした市場です。そのため、プライム・スタンダード・グロース市場で求められるような株主数や流通株式時価総額に関する画一的な数値基準は設けられていません。
この点が、プロマーケットの大きな特徴であり、事業規模や成長フェーズに応じて、幅広い企業が上場を目指すことが可能となっています。
なお、 プロマーケットでは、J-Adviser(FPMではf-adviser)が関与し、上場審査および上場後の継続的な指導が行われます。
財務・会計・税務については、J-Adviser、監査法人、税理士が中心となって確認を行いますが、その前提として、「法務・労務上の重大なリスクがないこと」「社内体制が一定水準で整備されていること」が求められます。
上場を検討する企業が抑えるべき最新動向
どの市場での上場を目指すかどうかを検討するうえでは、企業の状況に応じて最新動向を踏まえて最適な判断を進めていくことが重要になります。市場や環境は常に変動をしているので、最新の傾向を抑えておくことがポイントです。
東証・プライムへの上場基準の厳格化
近年、東証は市場全体の信頼性向上を目的として、上場基準および上場維持基準の見直しを進めています。
特にプライム市場では、基準を満たしていない企業は、市場区分の見直しを求められるという流れが明確になっており、以前であれば上場できた水準の企業であっても、別の市場区分を検討せざるを得ないケースも増えています。
プロマーケット市場への移行企業の増加
こうした流れの中で、プロマーケット市場(TPM/FPM)を上場の第一ステップとして位置づける企業も増えています。ただし、プロマーケットも「準備なしで上場できる市場」ではありません。
最低限の上場基準は満たしておかなければなりませんし、J-Adviser(f-adviser)への相談段階で、社内体制が未整備、契約・労務面のリスクが顕在化していると判断されると、そもそも上場準備の対象として進められない場合もあります。
上場を検討する際の注意点とポイント
プロマーケットへの上場を検討する際には、市場の傾向をしっかりと理解したうえで準備を進めていきましょう。
J-Adviserの役割
J-Adviser(FPMではF-adviser)は、プロマーケットにおける上場審査および上場後の継続的な指導を担う重要な存在です。
一方で、J-Adviserは上場準備のすべてを代行する立場ではありません。特に、法務・労務・社内規程などの整備については、事前に企業側で対応しておくことが前提となります。
上場を検討する場合には、 J-Adviser・F-Adviserから求められる整備事項について、適切に理解をしたうえで速やかに対応をしていくことが求められます。
社内体制整備の重要性
このようなJ-Adviserの役割分担を前提にすると、上場準備の成否を分けるのは、相談前の社内体制整備にあるといえます。具体的には、法務面・労務面それぞれにおいて、下記のようなリスク確認が重要になります。
●契約内容と実態の乖離がないか
●労務管理が法令に適合しているか
●社内規程・権限分掌が整理されているか
上記のようなリスクについては、デューデリジェンス(DD)を実施することで確認し、ここで重大な課題が見つかった場合には、J-Adviserによる審査以前に是正対応が求められます。
これらは短期間で形式的に整えられるものではなく、日常業務の運用そのものを見直す必要がある領域です。そのため、早期に着手することが、結果的に上場準備全体のスピードと確実性を高めます。
計画的な上場準備
特にプロマーケット上場では、「まず社内体制を整え、そのうえでJ-Adviserの審査・指導を受ける」という順序を踏むことが、上場を目指すうえでの近道となります。
J-Adviserと適切に役割分担をしながら上場準備を進めることが重要ですので、法務・労務・ガバナンスの整備を含めて、自社でやるべきことを漏れなくリストアップの上で計画的に対応していくことが求められます。
上場に興味のある方はぜひ一度ご相談ください
Nexill&Partners Groupでは、J-Adviserや監査法人が関与する前段階から、上場を見据えた法務・労務体制の整備を支援しています。
上場準備の初期段階として、現状の課題を可視化するスモールDD(簡易デューデリジェンス)にも対応しています。
東京プロマーケット(TPM)、福岡プロマーケット(FPM)を含め、
上場を経営戦略の一つとして検討されている企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
