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【例文付き】クリニックの低評価口コミにどう返信する?未来の患者に信頼される返信例文と医療広告ガイドライン上の注意点を弁護士が解説

2026.07.23

ネット上に低評価の口コミを書かれると、「そのようなことはなかった」と反論したくなることもあるでしょう。しかし、口コミへの返信は、投稿者だけでなく、受診先を検討している多くの人の目に触れます。返信の仕方によっては、かえって誤解を広げ、クリニックの印象を悪くするおそれもあるため、内容は慎重に考えなければなりません。
本記事では、ケース別にクリニックの口コミ返信例文と書き方を紹介し、守秘義務や個人情報保護、医療広告等ガイドライン(以下「医療広告ガイドライン」とします)の観点から、返信時の注意点を弁護士が解説します。

 

第1章 クリニックが低評価口コミに返信するときの基本

1-1 返信は投稿者だけでなく、未来の患者にも読まれている

低評価口コミを見ると、事実と違う点を訂正し、クリニック側の事情を説明したくなるものです。しかし、口コミ欄は投稿者と議論するための場ではありません。そこに書いた返信は、投稿者だけでなく、受診先を探している人や通院中の患者など、多くの人の目に触れます。
そのため、投稿相手を説得することよりも、その返信を第三者が読んだときに「不満にも冷静に向き合う誠実なクリニックである」と伝わる文章になっているか、という視点で返信を考えることが大切です。

1-2 低評価口コミの返信は4つの要素で組み立てる

クリニックへの低評価口コミに対する返信は、基本的に以下の順番で組み立てます。

①意見を寄せたことへの感謝
②不快な思いをさせたことへの配慮やお詫び
③院内で確認・改善する姿勢
④必要に応じた個別連絡の案内

もっとも、「不快な思いへのお詫び」と「過失や医療ミスを認めること」は同じではありません。事実を確認する前に過失を認めるような謝罪をするのではなく、患者が不安や不快な思いをしたことなど、何についてお詫びするのかを明確にして返信することが大切です。

1-3 返信前に事実を確認し、個別の診療内容は公開しない

返信する前に、口コミに書かれている出来事について、実際にどのような状況であったかを診療記録や関係者への聞き取りなどをもとに確認します。院内で確認できた事実と口コミの内容を照らし合わせ、どの点に配慮やお詫びを示すのか、必要に応じてどのような改善策を伝えるのか、個別の連絡を案内するのかを検討します。

ただし、院内で確認できた内容を、そのまま返信欄へ書いてよいわけではありません。
患者本人が病名や治療内容を書いていたとしても、クリニック側から来院事実や検査結果、診断、処方内容などに関する情報を、本人の同意なしに公表することは原則として避けるべきです。患者に関する医療情報は個人情報に該当し得るため、返信では必要以上に具体的な内容に踏み込まないことが大切です。

 

第2章 ケース別|クリニックの低評価口コミへの返信例文

以下の返信例は、あくまで基本形です。実際には、投稿内容と院内で確認できた事実を踏まえ、過失や責任を認める表現になっていないか、個人の診療情報を含んでいないかなどを十分に確認し、それぞれの状況に応じて調整してください。

2-1 予約したのに長時間待たされたと書かれた場合の返信例

想定口コミ

「予約して行ったのに、1時間近く待たされました。予約の意味がありません。」

返信のポイント

待たせたことへの配慮を示し、予約管理や待ち時間の案内を見直す姿勢を伝えます。
仮に急患対応などやむを得ない事情があったとしても、ほかの患者の診療状況を説明したり、医療機関では待つのが当然といった反論をしたりするのは適切ではありません。

※避けたい返信
「急患の対応が入ったためです。診療内容によって順番が前後することはご了承ください。」

返信例

「このたびは、ご予約いただいたにもかかわらず、長時間お待たせし、ご負担をおかけしました。いただいたご意見を院内で共有し、予約の取り方や待ち時間のご案内について、改善できる点がないか確認いたします。貴重なご意見をお寄せいただき、ありがとうございました。」

待ち時間が生じた理由を細かく説明するよりも、患者が困った点を受け止め、今後の案内方法を見直す姿勢を示すことが大切です。

2-2 受付や医師の対応が冷たい、説明が不十分だったと書かれた場合の返信例

想定口コミ

「受付の対応が冷たく、医師の説明も一方的でした。質問したかったのに、すぐ診察を終わらされました。」

返信のポイント

「冷たい」「一方的」といった主観については、たとえ誤解であっても、「そんなつもりはなかった」と否定するより、十分な配慮や説明が伝わらなかった点に向き合う方が効果的です。
だからといって、事実確認前に職員の非を断定したり、処分を約束したりする必要もありません。

※避けたい返信
「医師は必要な説明をしています。ほかの患者様もお待ちですので、診察時間には限りがあります。」
「受付スタッフの不適切な対応をお詫び申し上げます。当該スタッフについては、院内規程に基づき処分します。」

返信例

「このたびは、受付や診察時の対応により、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。また、説明やご質問の機会が十分ではないと感じられたことを重く受け止めております。いただいた内容を院内で確認し、患者様が質問しやすいご案内や説明のあり方を見直してまいります。」

接遇や説明への不満は、患者の感じ方を否定せず、確認と改善の姿勢を示す方向で返信します。

2-3 薬が効かなかった、診断や治療結果に納得できないと書かれた場合の返信例

想定口コミ

「処方された薬を飲んでも全くよくなりませんでした。診断も合っていなかったのではないかと思います。」

返信のポイント

口コミ欄で「診断は正しい」「薬の選択に問題はない」と反論すると、個別の診療内容を公表することにつながりかねません。また、「必ず効く薬ではありません」とだけ返すと、患者を突き放す印象になります。
公開の場では診療内容に触れず、必要な確認を個別に行うことを案内します。

※避けたい返信
「診断と処方は適切でした。医師の指示どおり服用されましたでしょうか。」

返信例

「このたびは、症状の改善を感じられず、ご不安な思いをされたことと存じます。個別の診療内容については、公開の場ではお答えできないため、差し支えなければ当院の窓口までご連絡ください。診療経過を確認したうえで、必要なご案内をいたします。」

再受診を案内する場合も、「来院すれば改善する」「当院で適切に対応できる」など、結果を約束するような表現は避けます。また、公開の返信欄で診断や治療内容について説明を重ねるのではなく、必要な確認は個別の連絡に切り替えることが大切です。症状や診療経過を確認したうえで必要な案内を行う、という姿勢にとどめましょう。

2-4 検査や治療の費用が高いと書かれた場合の返信例

想定口コミ

「必要のない検査をされ、会計も予想より高額でした。費用の説明もありませんでした。」

返信のポイント

当該患者の具体的な検査内容や請求額を本人の同意なく返信欄で示すことは、患者に関する情報の公表につながるため、原則として避けるべきです。また、「保険診療なので当院が決めた金額ではない」とだけ答えても、費用への疑問に向き合っていない印象を持たれるおそれがあります。

※避けたい返信
「必要な検査しか行っていません。費用も保険点数どおりです。」

返信例

「このたびは、検査内容や費用について十分な説明がないと感じられ、ご不安を与えてしまい申し訳ございません。個別の検査内容や会計については公開の場でお答えできませんが、当院窓口へご連絡いただけましたら、内容を確認のうえご説明いたします。あわせて、検査前や会計時のご案内についても見直してまいります。」

費用の正当性を主張するよりも、説明が伝わらなかった点に向き合う姿勢を示す方がクリニックの誠実さが伝わります。

2-5 クリニックの認識と食い違う内容が書かれた場合の返信例

想定口コミ

「何の説明もなく検査をされ、結果も教えてもらえませんでした。」

返信のポイント

院内記録では説明をしていたとしても、「説明しました」「口コミは事実ではありません」と公開の場で反論すると、第三者には患者を突き放しているように映り、クリニックの診療姿勢を誤解されかねません。
患者に説明が伝わっていなかった可能性も考慮し、クリニックの認識と異なる点があることだけを中立的に伝え、個別確認につなげます。

※避けたい返信
「事実と異なります。診療録にも説明したことが記載されています。」

返信例

「ご投稿の内容について、当院で把握している状況と異なる点があるため、事実関係を確認したいと考えております。個別の診療内容については公開の場でお答えできませんので、お差し支えなければ当院窓口までご連絡ください。いただいたご意見は、今後の説明方法を見直す際の参考にいたします。」

投稿者が意図的に虚偽を書いたと決めつけず、悪質な投稿が疑われる場合は、第3章の対応を優先します。

 

第3章 すぐに返信せず、別の対応を検討すべき口コミ

3-1 医療ミスや健康被害、損害賠償を主張されている場合

「治療によってけがをした」「後遺症が残った」「医療ミスなので賠償を求める」などと書かれている場合は、通常の低評価口コミと同じように返信すべきではありません。公開の返信でクリニックの過失や原因を認める内容の謝罪をすると、その後の交渉に影響する可能性があるためです。
診療録や説明記録を確認し、必要に応じて弁護士へ相談したうえで、返信の有無と内容を判断します。

3-2 虚偽投稿や悪質な誹謗中傷が疑われる場合

存在しない出来事が書かれている、クリニックが詐欺や犯罪行為をしていると断定されている、同じ内容が繰り返し投稿されているといった場合には、公開の場で反論するよりも、投稿を保存して削除申請や法的対応を検討すべきことがあります。
紛争が拡大するおそれがある場合は、返信前に弁護士へ相談することが望ましいです。

3-3 職員の氏名や特徴が書かれている場合

職員の氏名や名字、イニシャル、外見的特徴などが書かれている場合は、クリニック全体への低評価とは分けて対応する必要があります。職員本人に返信を任せず、クリニックが窓口となって対応方針を決めましょう。

職員個人を特定する形での誹謗中傷や、それに伴う職員への労務上の配慮については、別コラムで詳しく解説しています。以下のリンクからご確認いただけます。

関連コラム

口コミでクリニック職員が名指し批判されたら?誹謗中傷・個人特定のラインとスタッフを守る初動対応を弁護士・社労士が解説

 

第4章 口コミ返信で注意したい医療広告ガイドライン上のポイント

低評価口コミへの返信は、通常は患者から寄せられた意見への対応として行うものです。しかし、返信欄で自院の治療効果や実績を強調し、受診を促すような内容を書いた場合には、医療広告として規制の対象になる可能性があります。
厚生労働省の事例解説書では、SNS上の返信について一連の広告として医療広告規制の対象になり得る考え方が示されていますが、ネット上の口コミへの返信についても、受診を誘引する内容を含み、医療広告の要件を満たす場合には注意が必要です。

4-1 返信欄で治療効果や安全性、優良性を宣伝しない

低評価を打ち消そうとして、「当院の治療は安全です」「多くの患者様が改善しています」「最先端の治療を行っています」「地域で最も実績があります」などと書くことは避けましょう。
返信であっても、内容によっては受診を誘引する広告として評価され、医療広告ガイドライン上、虚偽広告や誇大広告、比較優良広告などが問題になる場合があります。

4-2 ほかの患者の治療体験談を使って反論しない

「ほかの患者様からは、症状が改善したとの声をいただいています」「多くの方が治療効果を実感しています」といった返信も避けるべきです。
医療広告ガイドラインでは、患者の主観や伝聞に基づく治療内容や効果の体験談を、医療機関への誘引を目的として紹介することは認められていません。そのため、治療内容や効果に関する他の患者の口コミを利用した返信が医療広告に該当する場合には、この規制に抵触するおそれがあります。

 

第5章 まとめ 低評価口コミへの返信は、第三者からの信頼を得る機会にもなり得る

否定的な口コミに事実と異なる点があれば、反論したくなるのは無理もありません。しかし、口コミへの返信は投稿者だけでなく、受診先を探している多くの人にも読まれます。
否定的な意見に対しても、冷静かつ誠実に対応する姿勢を見せることで、第三者から「問題が起きたときにも丁寧に対応するクリニック」と受け止められ、新たな信頼の獲得につながる可能性があります。
医療機関の口コミ返信では、一般的な店舗やサービスとは異なる注意も必要です。
返信の中で患者の診療情報を明らかにしたり、治療効果を宣伝したりすれば、守秘義務や個人情報保護、医療広告規制の問題が生じることがあります。
また、事実確認前に医療ミスや責任を認めるような謝罪をすると、その後に紛争へ発展した際、クリニックに不利に働く可能性も否定できません。

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