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MS法人は上場できるのか?IPO・プロマーケット上場を見据えて検討すべき3つの論点を弁護士が解説

2026.04.17

MS法人は株式会社である以上、形式的には上場を目指すことが可能です。ただし、実際の上場審査では一般的な株式会社とは異なり、医療法人との関係性や取引のあり方が厳しく確認されます。本記事では、上場審査の実務を踏まえ、MS法人が上場を目指す際にまず検討すべき3つの重要論点について弁護士が解説します。

 

第1章 MS法人の上場は可能なのか?審査で見られる特殊性の正体

1-1 株式会社であるMS法人が上場を目指す意義

MS法人は株式会社という形態をとっているため、医療法人とは異なり、法律上、上場することに制限はありません。上場を実現することで、市場からの資金調達の選択肢が広がるだけでなく、社会的信用の向上や人材採用面でのプラス要素、さらには親族外への事業承継を円滑に進めるための基盤づくりなど多様な可能性が広がります。特に2007年以降、持分なし医療法人への移行が進む中で、グループ全体の資本政策を考える際にMS法人の上場が選択肢として検討される場面が増えています。
ただし、非営利性が求められる医療法人との取引を主軸とする特徴から、通常の事業会社と同様に考えることはできず、固有の論点を踏まえた設計が求められます。

1-2 形式的な要件よりも中身の適正性が問われる理由

上場審査では、売上規模や利益水準といった形式的な指標だけでなく、その収益がどのような構造で生み出されているかが重視されます。特にMS法人の場合、主要な取引先が特定の医療法人に集中していることが多く、その取引関係の適正性が重要な検討対象となります。
具体的には、医療法人からMS法人への支払いが提供される業務の内容や市場水準に照らして合理的といえるか、また、MS法人が独立した事業主体として機能しているかといった点が確認されます。これらが不明確な場合、医療法人の非営利性を前提とした制度との関係で問題があると評価される可能性があります。
そのため、MS法人の上場を検討する際には、業績を積み上げるだけでなく、取引の内容や意思決定の仕組みを含めた事業の中身について、独立性・利益構造・実態性を含めて説明できる状態を整えておくことが重要です。次章で詳しく確認していきます。

 

第2章 【論点①】医療法人との独立性が担保されているか

2-1 医療法人の意向と切り分けられた意思決定ができているか

上場審査における「独立性」とは、MS法人が特定の医療法人の意向に左右されず、自らの判断で事業を継続できる状態を指します。
単に法人格が分かれているだけでは足りず、実際の経営判断や重要な意思決定が、MS法人側で完結しているかどうかが問われます。実務上よくみられるのが、医療法人の理事長がMS法人の代表取締役を兼ねているケースです。このような体制自体が直ちに否定されるわけではありませんが、そのままでは、医療法人とMS法人との間の取引について利害調整が適切に行われているのかが見えにくくなります。とりわけ、取引条件の決定や重要な契約の締結において、MS法人として独立した判断ができているかは慎重に見られます。
そのため、上場準備の段階では、MS法人の取締役構成や承認体制を見直し、医療法人との関係を適切に整理した上で意思決定できる仕組みを整えておくことが重要です。

2-2 役員構成だけでなく統治の仕組みまで整っているか

とはいえ、役員の兼任を解消すれば、独立性の評価に足りるというものでもありません。MS法人の取締役会や監督体制が実際に機能しているかどうかも、重要な確認ポイントになります。
例えば、医療法人との間で重要な契約を締結する場合に、利害関係を有する者がその意思決定にそのまま関与する運用になっていれば、形式上は会社が分かれていても、実質的な独立性には疑問が残ります。そのため、関係当事者が議決から外れるルールを設けたり、一定の取引については取締役会で審議する運用を明確にしたりすることが必要になる場面があります。
また、必要に応じて社外取締役や監査役等による監督体制も整え、医療法人との取引がMS法人の少数株主や一般株主の利益を害していないかを確認できる状態にしておくことも大切です。属人的な判断に依存した運営から離れ、組織として統治が機能していることを示せるかどうかが問われます。

2-3 実態として、医療法人の一部門になっていないか

MS法人が名目上は別会社であっても、実際の運営実態が医療法人の一部門と変わらないのであれば、独立性があるとは評価されにくくなります。
例えば、事務所が医療機関の施設内にありながら賃料の支払いがされていない場合や、電話・備品・システムなどを明確な区分なく共用している場合には、費用負担や資産管理の切り分けが不十分であるとみられるおそれがあります。こうした事情は、MS法人が独立した事業主体として運営されているのか、それとも医療法人の内部機能を外形上切り出したにすぎないのかを判断する上で重要です。
そのため、拠点や資産、費用負担の区分を明確にすることに加え、採用や資金調達の面でも、できる限りMS法人単体で成り立つ体制を整えておくことが望まれます。医療法人の信用や運営基盤への依存が強い状態を残したままでは、独立性を説得的に説明することは難しくなります。

 

第3章 【論点②】取引価格と利益構造に合理性はあるか

3-1 取引価格はどのような根拠で決められているか

MS法人が上場を目指す際、医療法人との取引価格の妥当性は特に重要な検討対象となります。医療法人は非営利性が前提とされるため、MS法人への支払いが過度に高額である場合には、その取引条件の適正性に疑義が生じやすくなります。
上場審査では、このような疑念を払拭できるかどうかが問われます。単に「従来からこの水準で取引している」という説明では足りず、どのような考え方に基づいて価格を設定しているのかを整理しておく必要があります。
例えば、業務の内容ごとに原価を把握し、そこに一定の利益率を上乗せする方法や、類似のサービスを提供する外部事業者の価格帯を参照する方法など、客観的な算定プロセスをもとに価格の妥当性を説明できる状態にしておくことが、上場審査を受けるうえでの前提となります。

3-2 第三者との取引と比較しても不自然な水準になっていないか

取引の適正性を判断する際には、「第三者間であればどのような条件になるか」という視点が用いられます。
MS法人と医療法人は密接な関係にあるため、どうしても価格設定や契約条件が内部的に決まりやすい構造になりますが、その結果として市場水準から乖離していないかは慎重に確認されます。例えば、MS法人の利益率が同業他社と比較して著しく高い場合には、医療法人からの利益移転と評価される可能性があります。一方で、MS法人側が赤字となるような低い対価設定であっても、今度は医療法人側に偏った条件設定とみられる余地があり、いずれの場合も適正な取引とは評価されにくくなります。
したがって、第三者との取引を前提にした場合でも一般的な水準と比較して合理的な説明が可能な条件になっているかという観点で、取引内容を見直しておくことが重要です。

3-3 取引関係の継続性と契約内容が適切に整理されているか

MS法人の売上が特定の医療法人に大きく依存している場合、その取引関係の安定性や透明性も確認されます。
契約書が形式的に存在しているだけでは足りず、契約期間や更新条件、解除条項などが合理的な内容になっているか、また、医療法人側の意思決定手続が適切に経られているかといった点まで含めて整理されている必要があります。特に、医療法人の判断によって一方的に契約が変更・終了され得る構造になっている場合には、MS法人の事業基盤が不安定であると評価されるおそれがあります。
そのため、現在の取引が継続的かつ安定的に行われる前提をどのように確保しているのか、また、その条件が法的にも整理されているかを説明できる状態にしておくことが求められます。

 

第4章 【論点③】その業務に事業の実態性は備わっているか

4-1 単なる経理代行や窓口になっていないか

MS法人の上場を検討する際には、「その業務を誰が実際に担っているのか」という点が重要になります。形式上はMS法人が業務を受託していても、実際には医療法人の職員がそのまま対応している場合や、MS法人が外部業者への支払いを取り次ぐだけの存在になっている場合には、事業としての実態が十分とはいえません。
上場審査では、MS法人が窓口や名義会社にとどまることなく業務の主体となって価値を提供しているのか、それとも実態は他にあるのか、という点は上場させるに値する事業者であるとの評価を分ける重要なポイントになります。

4-2 人員・設備・ノウハウがMS法人に帰属しているか

事業の実態性を説明するには、MS法人が独自に事業を遂行できる体制を備えていることが重要になります。具体的には、業務を担当する従業員がMS法人に所属しているか、必要な設備やシステムをMS法人が保有・管理しているかといった点です。
例えば、医療機器のリースや管理を行う場合であれば、その運用や保守に関する知見や体制がMS法人側に備わっているかが問われます。単に契約上の受託主体であるだけでなく、人・物・ノウハウがMS法人に集約されている状態を示せるかどうかが、実態性の評価に直結します。

 

第5章 現実的な選択肢としてのプロマーケット市場

5-1 一般市場とプロマーケットで異なる審査の考え方

スタンダード市場などの一般市場では、不特定多数の個人投資家を前提とするため、形式面・実質面の双方において一定水準を満たすことが求められます。その結果、審査基準も画一的かつ厳格に運用される傾向があります。
これに対し、東京プロマーケットなどプロ向け市場では、投資家が一定の知識や経験を有する層に限定されていることから、企業ごとの事情を踏まえた審査が行われます。MS法人のように、医療法人との関係性という前提を持つビジネスについては、形式的な基準だけで判断するのではなく、その構造の合理性や説明可能性が重視される場面が多くなります。

5-2 プロマーケット上場が持つ実務上の位置づけ

プロマーケットへの上場は、必ずしも大規模な資金調達を主目的とするものではありません。むしろ、上場企業としてのガバナンス体制や開示体制を整備し、それを対外的に示すことに意義があります。
MS法人の場合、医療法人との関係性や取引構造について説明が求められる場面が多いため、こうした体制整備そのものが経営の透明性を高めることにつながります。
また、一般市場と比較して上場維持に係る負担を抑えやすい面もあることから、まずはプロマーケットで上場し、その後の成長に応じて一般市場への移行を検討するという段階的な選択も考えられます。

 

第6章 MS法人の上場を成功させるためのファーストステップ

MS法人の上場は、制度上は可能ですが、実際には医療法人との関係性を前提とした事業構造がどのように評価されるかが重要になります。ただ業績を積み上げるだけでなく、独立性・利益構造・事業の実態といった点を、全体として整合的に説明できる状態にしておくことが必要です。
これらの論点は相互に関連しており、個別に整備するだけでは不十分です。取引価格の見直しは意思決定体制や契約関係の整理にもつながるため、スキーム全体を見渡しながら段階的に整えていくことが求められます。また、医療法人との関係性や取引条件は後から変更しにくいため、早い段階から方向性を整理しておくことが重要です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士・税理士・社会保険労務士など士業が連携し、プロマーケット上場に特化した伴走支援を行っています。現状の構造にどのような整理が必要かについても、実務の視点から検討を進めることが可能です。MS法人の上場を見据えた体制整備についてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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