小売業

1. 小売事業者が特に留意したい法律と法務ポイント

小売業界では、店舗販売・宣伝広告・人事労務・顧客情報管理など、多岐にわたる業務を同時に行っていますので、その分留意しておかなければならない法令も多数あります。以下、特に押さえておきたい主要な法律を挙げています。

特定商取引法・消費者契約法:販売方法・表示

店舗販売だけでなく、ネット通販や通信販売を行う場合は、特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)を避けて通れません。事業者名、所在地、連絡先、販売価格、支払い方法、返品特約などの表示義務があり(特定商取引に関する法律第11条など参照)、これらを怠ると行政処分や罰則の対象になるおそれがあります。加えて、消費者保護の観点で消費者契約法が適用されることも多く、過度に事業者側が有利な免責条項などは無効となるケースに注意が必要です。

景品表示法:商品表示

小売業で扱う商品やサービスについては、景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)により、「優良誤認表示」「有利誤認表示」が禁止されています(景品表示法第5条)。たとえば「定価の50%オフ」と宣伝する場合、実際にどれだけの期間、どの店舗で定価販売がされていたかを証明できなければ、有利誤認表示とみなされるおそれがあります。
また、食品や雑貨を取り扱う際には、パッケージ表示に関する法令(食品表示法や計量法など)や薬機法(化粧品・医薬部外品を扱う場合)も絡むことがあります。これらに違反すると、行政指導の措置が取られることもあります。

個人情報保護法:顧客データとプライバシー

実店舗でも顧客情報を取得する機会が増えており、会員カードやスマホアプリ、ウェブサイトでの予約などを通じて、大量の個人情報を取り扱う可能性があります。個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)では「利用目的の特定」「本人への通知・公表」「適正な取得方法」「安全管理措置」などが義務付けられているため、ポイントカードの発行や会員登録時の個人情報取り扱い時にはここを遵守した対応が必要です。

労働基準法:正社員・アルバイトの労務管理

小売業では、販売スタッフやレジ担当、品出しなどを含めて多くの正社員・アルバイトを雇用する企業が多いため、労働基準法(労基法)をはじめとした労働諸法令への対応も重要です。時間外手当の支払い、アルバイトの社会保険加入、適切なシフト休憩・休日管理など、労務管理を適切に行う必要があります。特に繁忙期やセール期間中を含めて長時間労働が蔓延してしまうと労働基準監督署から是正勧告を受けるケースもあります。過重労働は労災事故へと発展する可能性もあるため、法令に則った労務管理が不可欠です。

2. 多店舗展開・フランチャイズ展開時の注意点

小売業が店舗数を増やしてビジネスを拡大する際、あるいはフランチャイズ展開を検討する場合、店舗オペレーションやブランド管理だけではなく、法的なリスクも一層複雑化します。

広報広告における注意点

多店舗やフランチャイズのメリットは、共通ブランドを掲げることで認知度や集客力を高める点にあります。しかし、デザインガイドラインやマニュアルを適切に設けていない場合、店舗ごとに広告表現がバラバラになったり、誤解を招くセール告知(景品表示法違反)が行われたりするリスクが高まります。特にキャンペーン内容が各店舗で異なる場合は、トラブルの原因となりやすいため、本部が一括して広告表現や表記ルールを管理する体制を作ることが重要です。

多店舗展開での注意点

多店舗展開にあたっては、新規テナント契約や不動産賃貸借契約も増えるため、賃貸借契約上の原状回復義務や保証金、近隣テナントとの競合制限など出店に付随する法務面については必要に応じて専門家のチェックを受けながら進めることが望ましいです。さらに、多店舗展開に伴いアルバイトや正社員の数が増えると、従業員の労務管理が複雑化し、労働基準法違反リスクが高まります。複数店舗を一括管理する労務管理システムの導入などを含めて、人事・労務のルールを統一化・標準化した就業規則と運用体制を整備することが求められます。

フランチャイズ展開での注意点

フランチャイズ方式を採用する際、フランチャイズ本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)との間で締結されるのが、いわゆるフランチャイズ契約です。この契約では、ロイヤルティ(加盟料)の算定方法や、本部が提供するノウハウ・商標の使用範囲、また契約終了後の取り扱いなどが定められます。ところが、契約書の作成が曖昧だと、加盟店が「思っていた支援が受けられない」「解除条件が厳しすぎる」といった不満を抱え、紛争に発展しがちです。さらに、本部が優越的地位を背景に過度な条件を押し付ければ、独占禁止法(特に不公正な取引方法に関する条文)に違反する可能性も否定できません。たとえば、加盟店に対して特定の仕入先からの大量購入を強要するなどは、ここに該当する可能性があります。

また、フランチャイズにおいては、契約締結前に本部が加盟希望者へ事業内容や収支予測などを説明する加盟前開示義務があります。(中小小売商業振興法第11条)
これは、「事前に重要事項を告知しないまま契約を結ばせる行為」を防ぐ狙いがあり、本部が十分な情報を開示せず、実態と乖離したシミュレーションを示した場合、後から「重要事項の不実告知」として加盟店から契約解除や損害賠償を請求されるリスクがあるため、説明内容を文書化・記録化することが重要です。

3. 当事務所におけるサポート範囲・強み

当事務所では、弁護士のほかに社労士・税理士・行政書士など複数の士業が在籍しており、ワンストップでの企業支援体制を整えております。
商品表示や広告宣伝の適法性チェック、就業規則作成や労務トラブルへの対応、フランチャイズ契約のレビュー・交渉など、幅広い法務ニーズに対応可能です。万一の紛争や行政対応だけでなく、予防的なリスク管理や労務管理まで総合的にサポートいたします。無料相談や顧問契約を通じて、安定した小売経営を実現するためぜひ当事務所をご活用ください。

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