「死後事務委任契約」って知っていますか?
自分が亡くなったあとの手続きを誰に頼めばいいのか、家族は遠くに住んでいてきちんと手続きをしてくれるか不安な方、など分からないことを一緒に理解していきましょう。
1.死後事務委任契約とは
誰かが亡くなったら、たくさんの事務手続きが必要となります。関係者への死亡の連絡、通夜や葬儀、納骨や埋葬など、やらなければならないことがいくつもあります。
そのような手続きは通常亡くなった方の親族が行いますが、親族以外の方にこういった手続きをお願いする場合や、特定の親族のみに手続きをお願いする場合は、生前に「死後事務委任契約」を結んでおく必要があります。
依頼する相手に制限はなく、司法書士や弁護士、信頼できる友人や知人でも構いません。しかし、「死亡届」に関しては、戸籍法第87条に同居の親族、その他の同居者、家主や後見人等が提出できるとされており、役所によっては、「死後事務委任契約」を結んでいても、死亡届を受理してもらえない可能性もありますのでご注意ください。
死後事務委任契約の意義は主に、頼りにできる親族が周りにいない場合も死後のことを安心して任せることができる点、自分が希望する葬儀や納骨の方法を生前に伝えることができる点にあります。
さらに、親族に迷惑をかけたくないから知人に頼みたいという人にも良い方法です。ただし、司法書士や弁護士に依頼をすると報酬が発生しますので、この場合は費用面についても考えておく必要があります。
2.死後事務委任契約の内容
「死後事務委任契約」には以下のような内容を盛り込むことが一般的です。
・葬儀、告別式、火葬、納骨、埋葬などに関する事務手続き
・家財道具や生活用品など遺品の整理・処分
・医療費や老人ホーム費用など債務の支払い
・年金関係や税金などの事務手続き
・関係者へ亡くなったことを通知する事務手続き
・SNSやメールの削除や死亡したことの告知
どの作業をどこまで依頼するかは、依頼する側が自由に決めることができます。しかし、各手続きには費用が発生しますので、その費用をどこから出すのかまで詳細に記載しておく必要があります。司法書士や弁護士など専門家に契約書をチェックしてもらい、不備のない契約書を作成しておくのが、依頼する側も依頼を受ける側にとっても良いでしょう。
「死後事務委任契約書」は自分自身で作成することもできますが、公正証書の形で作成しておくのがベストです。公正証書とは、公証役場という役所で、法務大臣による任命を受けた公証人が作成する公文書ですので、公正証書にしておくことで、後日その内容についてトラブルが生じる恐れを大きく削減できます。
具体的な作成方法ですが、本人と依頼される人の2名で公証役場へ行き、必要書類を持参すれば作成することができます。費用は、契約書の内容にもよりますが、1万円~2万円程度で済むケースが多いです。
最寄りの公証役場へ事前に予約を取ってから作成に行きましょう。公正証書作成は、弁護士等の専門家に依頼することも可能であり、この場合、弁護士等に代理人として公証役場に出向いてもらうことも可能です。
3.こんな人は「死後事務委任契約」を検討してみましょう
では、実際にどのような人が「死後事務委任契約」を締結するのが良いのでしょうか。一般的には、子供がいないご夫婦や、近くに頼れる親族がいない人が締結するケースが多くみられます。
葬儀や埋葬の手続きを誰が行うのか決めておかなければ、死後、残された親族間で揉めることもありますので、生前にきちんと決めておきましょう。また、親族はいても、海外に住んでいる場合や、手間のかかる事務手続きを親族以外の第三者に依頼したい方も死後事務委任契約を検討してみると良いでしょう。
その他にも、法律婚が難しい内縁関係や同性のカップルは、籍が入っていないと、死後の事務手続きを行うことができない場合があります。パートナーに死後の手続きを任せたいと考えている方は、死後事務委任契約を結び、スムーズに手続きが行えるように準備しておく必要があります。
お互いに死後の手続きを依頼するような内容の契約書を作成しておけば、突然亡くなった場合にも対応ができるので、一度契約書の作成を考えてみてください。また、葬儀や埋葬方法を選択するにあたっても、葬儀をどのような形で行ってほしいか、お墓に入るか納骨にするかなど、様々な選択肢があります。
最近では、桜や紅葉など亡くなった方が好きだった木の周りに遺骨を埋葬する「樹木葬」や亡くなった方が良く行っていた場所へ散骨する「散骨旅行」などもよく耳にするようになりました。以上の埋葬方法は決められた方法があるため、事前にやり方をきちんと調べておく必要があります。このような場合にも、予め「死後事務委任契約」で埋葬方法等を決めておくと良いでしょう。
4.まとめ
今回は「死後事務委任契約」についてお伝えしました。最近ではテレビや雑誌などで「終活」が取り上げられることが増え、「死後事務委任契約」も少しずつ注目され始めてきました。
元気なうちに死後のことを決めておくのは少し嫌なことかもしれませんが、自分自身のために、残された家族のために、死後どのような形で手続きをしてほしいか、しっかりと気持ちを伝えておくと良いでしょう。