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クリニックで労務監査を行う重要性

医療機関を取り巻く労務リスクは、ここ数年で質・量ともに大きく変わっています。
まず直近では2024年に開始した医師の働き方改革により、時間外・休日労働の上限規制や宿日直許可の厳格化がされたことで従来の「月100時間超残業」「夜勤‐当直の連続勤務」が一斉に見直し対象となりました。さらに、2020年の法改正により未払い残業代の請求可能期間が2年から5年に延長されたこと、 2023年には月60時間超残業の割増率改正(25%から50%に変更)になったことで、過去分まで含めた未払い残業代の誘発要因になるため、労務監査で早期に是正しておく意義が大きくなっています。
その他、厚労省が提示しているハラスメント指針の遵守義務化、有給休暇5日取得義務、適切な勤怠管理・手当支給など、いずれも就業規則・賃金規程が現場運用と合致していなければ従業員との労使紛争や労基署調査の引き金になりかねません。
労務管理を適切に実施し、リスクを最小限にするためにも、定期的な労務監査は医院経営を行う上で重要事項であるといえます。

労務監査でチェックすべき主な項目

当事務所にて労務監査を行う際、主に精査するのは以下のような項目です。

①就業規則等各種規程・各種届出

就業規則、賃金規程など各種規程が作成されているか、内容が法改正に対応したものになっているか、実際の運用と規程内容に相違がないか、36協定含めて時間外・変形労働時間制に適した届け出がなされているかなど、規程や届出の状況を確認します。

②勤怠管理・残業管理

勤怠が正確に管理されているか、残業時間の管理が適切に行われているか、上限越えの残業が無いかなど、日常的な勤怠管理状況を確認します。

③有休管理

有給休暇が適切に付与されているか、消化状況が適切に管理されているか、年間の取得義務を満たしているかなど有休の管理状況を確認します。

④給与計算・社保手続

日常の給与計算手順においてリスクとなる点がないか、法的に是正が必要な点がないか、社会保険加入者に不足がないか、産休・育休等の手続が適切に実施されているかなど、給与計算および社会保険手続の状況を確認します。

⑤雇用契約書・労働条件通知書

雇用契約書・労働条件通知書が交付されているか、内容が法改正に対応したものになっているか、法的に是正が必要な点がないか、紛争リスクとなる点がないかなど、契約書や労働条件通知書の内容および条文を確認します。

⑥ハラスメント・メンタルヘルス

ハラスメント相談窓口の整備状況の確認、実際に相談が入った際の対応フロー、メンタルヘルス施策の整備状況など、ハラスメントやメンタルヘルス面で将来的なリスクとなりそうな点がないかを確認します。

上記のような点を重点的に確認したうえで、将来的なリスクとなりそうな点および法的に是正が必要な点について改善施策とあわせてフィードバックさせていただいております。

よくある労務リスクと是正方法

未払い残業

よくある事項として「スタッフに対して着替え・朝礼および申し送りをした後でタイムカードの打刻をさせていた」「残業時間を5分単位で毎回切り捨てて給与計算を行っていた」等の対応をしていることがあります。
通常は労働時間としてカウントされるため、是正方法としては打刻時間をと適正なタイミングに戻すように周知をしたり、1分単位での残業管理を行うように変更したりしていく必要があります。

36協定未届/時間外の上限超過

36協定の届け出をせずに残業が発生してしまっていたり、医師の残業時間が月の上限を超えて100時間以上労働してしまっていたりする場合も、労務上の大きなリスクに繋がります。
特別条項付き 36協定を届出したうえで、代診医を確保する等して医師の残業時間を分散させる必要があります。

変形労働時間制の届出漏れ

1か月単位の変形労働時間制を取り入れる場合には、労基署への届出が必要となります。管理が漏れてしまっていると就業規則に記載しただけで労基署届出をしていなかったというケースも少なくありません。

しっかりと変形労働時間制の届出を行うことはもちろんのこと、届出未了の過去期間は通常の法定労働時間規制が適用されるため、週40時間超・日8時間超部分の時間外割増の未払いがある場合は追加支給をすることで未払残業代請求リスクを回避することが重要です。

ハラスメント対応窓口の形骸化

近年パワハラ防止法等の改正によって、ハラスメント窓口を設置する企業も増えてきていますが、社内に相談窓口を置いても実質的には機能していない、相談が発生した際の対応が十分に行われていない等の場合は、従業員との労務問題に発展してしまう恐れがあります。
院内での相談窓口のみではなく弁護士をはじめとした専門家への外部委託や、ハラスメント事案発生時の対応フロー整備をしていくと良いでしょう。

医師の宿日直許可の取り扱い

夜勤等の業務がある病院の場合で起こりうるケースとして「“待機当直”扱いでも実際は処置件数が多く実質的に通常業務となってしまっている」ということがあります。通常業務となっている場合は、労基署調査により未払残業・割増賃金支払命令が出るリスクがあります。

宿日直許可を維持する場合は基準内に収まるように対応件数・業務量を圧縮させる等の処置を講ずる必要があり、それが難しい場合は適切な時間外・割増賃金の支給を行うことが求められます。

このように日常の業務のなかでも多くの労務リスクが潜んでいるのが医療業界の特徴ともいえます。定期的な労務監査を行うことによって、このようなリスクを早い段階で認識して改善のための対策を行うことができます。

Nexill&Partnersの「労務監査」の特徴

予防労務、予防法務を含めた総合的な監査実施

当事務所は社労士資格も保有している弁護士が在籍しており、企業労務・法務に強い弁護士を中心に総合的な労務監査を行っております。
弁護士としての労働紛争の実務経験を踏まえて、「将来的に紛争にならないような仕組みづくり」という観点も含めて、課題のフィードバックと改善案のご提案を行いますので、法的に問題ないかどうかという点だけでなく、さらに踏み込んだサポートをさせていただきます。

労務管理面のDX化提案

勤怠などの管理や、給与計算など、システムを導入することでより効率的に運用できるような場合は、DX化を含めた提案を行います。紙媒体での管理や手作業に比べて、工数も削減できるほか、データの集計や出力もしやすくなりますので、DXを含めて検討をされたいという先生に向けてはその点も含めてフォローを行っております。

日常業務のアウトソーシング(給与計算・社保手続・ハラスメント窓口)

給与計算、社会保険手続は社労士法人で、ハラスメント相談窓口については弁護士法人で、それぞれお受けすることが可能です。
法務・労務に詳しい人がいない、業務量の兼ね合いで対応できる人がいないなど、院内での実施が難しい場合は当事務所にお任せください。