医療業界の経営・法務・労務に精通した総合リーガルファーム
病院 診療所 クリニック 歯科医院 薬局
医療業界の経営・法務・労務に精通した総合リーガルファーム
病院 診療所 クリニック 歯科医院 薬局
厚生労働省は雇用維持・賃上げを後押しするため、医療機関も利用できる助成金を複数用意しています。以下、代表的なものをご紹介します。
有期雇用やパートを正社員化した際に中小企業であれば1人当たり最大80万円(多様な正社員制度加算を含む最大額)が支給されます。研修・人材育成コースも併用すれば従業員のOJT費用の一部もカバーできます。
産休・育休・介護休業を取得させ、職場復帰させた場合に中小企業であれば助成されます(助成金額はコースによって異なります)。応募要件を満たすと男性の育休でも受給可能です。
事業所内の最低賃金を30円以上引き上げ、業務効率化設備(電子カルテ端末・自動精算機など)を導入すると、設備費用の3分の2(最大600万円)が補助されます。
これらは「雇用保険適用事業所」であれば医療法人でも個人診療所でも申請可能ですが、助成金の対象者が雇用保険被保険者であることが前提となります。(院長(事業主)や、個人事業の開業医本人は助成金の支給対象外となります)
ここから各助成金に関する詳細と申請時のポイントについてご紹介します。
キャリアアップ助成金の対象となる人は6か月以上雇用しているパート・契約社員・派遣スタッフです。対象となる雇用形態のスタッフ(看護助手や受付事務等)を「短時間正社員」「ジョブ型正社員」に転換し、基本給を5%以上アップすると助成金が支給されます。助成金額は雇用形態によって異なり、「重点支援対象者」にあたる有期雇用労働者が正社員になると1人あたり80万円(大企業は60万円)、無期雇用労働者だと40万円(大企業は30万円)、それ以外の6ヶ月以上雇用している労働者の場合は、それぞれ半額の金額になります。
キャリアアップ助成金の最も重要な要件は「賃金アップ確認」です。具体的には転換後6ヶ月の賃金が転換前6ヶ月の賃金より3%以上増額しているかがポイントになります。そのため、採用段階から本助成金の活用を見越した給与体系を提示することが重要です。
また、労働条件通知書については正社員化後の労働条件通知書に①就業の場所(配属部署を含む)、②所定労働時間・就業時刻が明記されているかを確認するようにしてください。
労働局は「正社員転換後に労働条件が5%以上改善されているか」を部署単位で確認するため、病棟 8:30–17:30、外来 9:00–18:00 のように就業場所によって勤務時間が違うケースでは、複数の部署・シフトを通知書に明示しておきましょう。
医療機関では、特に短時間正社員制度を夜診・土日診療の枠に当てはめるような活用の仕方ができると、「夜・土日だけ働きたいが待遇は落としたくない」という人材ニーズと「夜・土日のシフトが埋まらず負担が偏る」という医院側課題を同時に解決できる手段となり得ます。
夜間や土日のみ勤務できる看護師や医療事務は、育児・介護・ダブルワークなどの事情でフルタイムが難しい一方、「パート扱いだと社会保険が付かない」「昇給が頭打ち」というような悩みを抱えやすい層です。短時間正社員であれば、週30時間未満でも雇用保険・厚年・健保がすべて適用されるほか、正社員と同様の賞与や退職金テーブルにも組み込めるため、待遇向上につながり、結果として人材の確保や定着度を高められるメリットも期待できます。
産休前面談→育休中フォロー→復職面談という3ステップを就業規則に組み込み、助成金対象者が復職後6か月定着すれば中小企業だと60万円が支給されます。
育休中フォローとは、①育休者への定期的な連絡(メールやオンライン面談)、②業務マニュアル・研修動画の提供、③復職後の時短勤務やシフト希望を事前にヒアリングするなどの “情報共有と職場へのつながり維持”のことで、これを行ったうえで、その記録を実績報告に添付することが支給申請時の要件となります。
従業員に対する介護休業制度、介護を理由とする時短勤務やフレックス勤務制度を就業規則に組み込み、要介護2以上の家族を持つ従業員が制度を利用し、休業・時短終了後1年間離職がなければ助成金が支給されます。
助成対象は1事業所あたり1年度最大5人までで、上限枠は事業所単位となり人数加算ではありません。
1日でもずれた状態で申請すると不支給になり得ますので、計画届と実際の育児休業期間に変更が生じた場合は速やかに変更(訂正)届の提出が必要です。
育児・介護休業明けの復職面談や休業中のフォロー実施内容については必ず書面やメールなど文字で記録を残しておきましょう。実績報告時に提出が必要となります。
賃金が休業前と同額以上で、かつキャリア等級・昇進ルートが実質的に下がらないのであれば、職務内容が多少変わっても助成金の支給要件を満たしますが、反対に、賃金が下がる、等級が下がる、将来昇進しにくいポジションへ一方的に配置転換するというような「不利益取扱い」があると不支給(または返還)対象になります。
事業所内の最低賃金を30円以上引き上げ、併せて生産性向上設備を導入した場合に費用の3分の2が補助されます。(上限600万円)。
医療機関で多い活用例としては、電子カルテ用 PC 追加・受付券売機の導入やリハビリ機器の最新モデルへリース変更、オンライン診療システムを組み込んだ予約サイト刷新等が挙げられます。
助成金申請時は複数業者の見積書を添付することのほか、「機器導入で1人当たり売上が○%向上」という効果測定指標を示すことが必要です。なお、医院内の内装・消耗品は助成金の対象外となります。見積には含めないよう注意してください。
助成金申請は、計画届の提出から制度実施・設備導入、支給申請まで年単位での時間を要することから期限管理が重要になるほか、些細な書類不備であっても不支給となるケースも多いことから申請時は細心の注意を払いながら進める必要があります。
当事務所では、弁護士・社労士が社内連携の上で、各種制度設計・導入から実際の助成金申請までを一貫してサポートしております。
助成金を活用してみたいとお考えの先生は、まずは初回無料相談をご利用ください。