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歯科医院が個別指導で「再指導」と言われたら|対応次第で評価が分かれる再指導までの実務ポイントを弁護士が解説

2026.02.06

歯科医院が個別指導の結果、再指導と通知された場合、「どこまで是正すれば足りるのか」「このまま次の段階に進むのではないか」と判断に迷う場面は少なくありません。再指導は直ちに処分を意味するものではありませんが、再指導までの対応内容とタイミング次第で、その後の行政評価が変わる局面といえます。再指導までに何を優先して確認し、どのような対応を取るべきか、そして判断を誤りやすい注意点について、弁護士がわかりやすく解説します。

 

第1章 歯科医院における「個別指導」と「再指導」の位置づけ

1-1 歯科医院に対する指導は「3段階」で整理されている

歯科医院に対する保険診療上の指導は、制度上、大きく3つの段階に分けて整理することができます。「再指導」は、そのうち個別指導に次ぐ段階に位置づけられています。

段階1:個別指導

診療報酬請求や算定運用が関係法令や算定ルールに沿って行われているかを確認し、必要に応じて是正を促すための行政指導です。違反や不正を前提とするものではなく、改善を目的とした確認の手続と整理されます。

段階2:再指導

個別指導において指摘された事項について、是正状況や説明内容が十分でないと判断された場合に行われます。性質は個別指導と同じく行政指導ですが、改善の実効性がより重視される段階といえます。

段階3:監査

指導による改善が確認できない場合などに検討される、より厳格な事実確認の手続であり、結果次第では返還請求や指定取消などの行政処分が問題となることがあります。
※事案の内容によっては再指導を経ずに監査が検討される場合もあります

1-2 個別指導でどのような評価があると「再指導」に進むのか

個別指導の結果、すべての歯科医院が再指導に進むわけではありません。
再指導に進むかどうかは、指摘の数や重さそのものではなく、個別指導後の対応がどのように受け止められたかによって判断されます。
具体的には、個別指導において、

  • 指摘事項について、なぜ問題とされたのかの理解が十分に示されていない
  • 是正内容が記載や形式的な修正にとどまり、実際の運用変更が確認できない
  • 再発防止策について、具体的な説明がなされていない

といった場合、改善の実効性を確認しきれないとして、再指導が必要と判断されることがあります。
つまり再指導とは、行政が「個別指導後の説明や是正内容だけでは、今後も適正な運用が継続されるかを十分に確認できない」と判断している状態といえます。

1-3 再指導で改善が確認できなかった場合、どうなるのか

もし、再指導においても是正内容や説明から改善の実効性が確認できない場合には、事案の内容や性質に応じて、監査への移行が検討されることがあります。
監査は、個別指導や再指導とは異なり、より厳格な事実確認を行う手続です。その結果次第では、診療報酬の返還請求や、指定取消などの重い行政処分が検討される可能性があります。
再指導は、今後の手続を左右する重要な分岐点であることを理解したうえで、十分な対策を行う必要があるといえます。

 

第2章 再指導と判断された実務上の理由

再指導と判断された理由は、個別指導後の対応内容が、行政の確認水準に達していなかった点にあります。再指導と判断される場面で、実務上どのような点が問題とされやすいのかを具体的に整理します。

2-1 是正対応が「形式的な修正」にとどまっていた場合

再指導と判断される理由として最も多いのが、是正対応が記載や帳票の修正にとどまっているケースです。
診療録の文言を整えたり、算定要件を追記したりしても、実際の診療や算定判断の流れが変わっていなければ、改善の実効性が確認できません。行政が確認しているのは、書類の体裁ではなく、診療や算定の判断がどのように行われるようになったかという実態です。この点が説明できない場合、再指導が必要と判断されやすくなります。

2-2 算定判断の基準や確認体制が整理されていなかった場合

次に問題となりやすいのが、算定判断の基準が医院として整理されていないケースです。
誰が、どの場面で、どの要件を確認するのかが明確でないと、同じ判断ミスが繰り返される可能性が残ります。
個別指導後に「気を付けるよう指示した」「スタッフに伝えた」という説明だけでは、再発防止策としては不十分と受け止められがちです。判断基準や確認手順が、個人ではなく医院の運用として定まっているかが確認されます。

2-3 再発防止策の説明が抽象的にとどまっていた場合

再指導と判断されるもう一つの理由が、再発防止策が抽象的な内容にとどまっているケースです。
「今後は注意する」「チェックを強化する」といった表現だけでは、具体的に何が変わるのかが分かりません。行政が確認したいのは、過去にミスが起こった時と同じ状況が生じた場合でも、前回と同じミスが起こらないよう、判断基準や確認手順が医院として整理されているか、という点です。
この説明ができない場合、改善の方向性は示されていても、実効性を判断しきれないとして再指導に進むことがあります。

 

第3章 再指導に向けた対応策|事前準備から当日対応までの実務ポイント

3-1 説明や資料は結論以上に「対応の流れ」が伝わる形にする

再指導は、個別指導後の対応を踏まえ、「改善が実務として定着する見込みがあるか」を確認する場です。したがって、再指導に向けて用意する説明や資料では、「問題は解消した」という結論を強調する必要はありません。求められるのは、「問題をどのように認識し、どのような対応を行ってきたか」が分かることです。
具体的には、以下のような点を資料から読み取れる形に整理しておきましょう。

  • 指摘事項に対し、どのような是正を行ったのか
  • 是正によって、従来の運用と何が変わったのか
  • 現在の運用状況として、何が定着しているのか

3-2 再指導当日に求められる説明姿勢

再指導当日は、事前に準備した資料や是正内容を説明する場であると同時に、歯科医院としての理解の深さや一貫性が確認される場でもあります。重要なのは、必要以上に主張したり、防御的になったりしないことです。
指摘事項については、なぜ問題とされたのかを理解したうえで、是正内容を事実に基づいて簡潔に説明する姿勢が求められます。推測や一般論を交えた説明は避け、事前に整理した説明の枠組みから逸脱しないよう意識しましょう。

3-3 口頭説明・質疑応答で注意すべきポイント

質疑応答では、その場で結論を急がず、事実と整理済みの是正内容に沿って答えることを意識します。特に気を付けたいのは、曖昧な記憶や感覚に基づいて発言してしまうことです。
「以前からそうしていた」「他の医院でも同様だと思う」といった発言は、是正の実効性とは関係がなく、不要な評価につながるおそれがあります。
分からない点や、その場で即答できない点については、無理に答えを作らず、確認のうえで説明する姿勢を示す方が適切です。

3-4 提出資料・説明内容の扱いで気を付けたい判断

再指導当日には、事前に準備した資料をもとに説明を行いますが、用意した資料以上の説明をその場で広げないことも重要です。資料に記載していない事項について、補足のつもりで説明を加えた結果、新たな論点が生まれ、確認範囲が広がることがあるためです。
また、是正内容について「完全に問題は解消された」と言い切る表現も慎重であるべきです。再指導は評価の場であり、是正の実効性を確認する手続です。現時点での対応状況を説明するにとどめ、過度な断定は避けるのが無難です。
再指導当日は、準備した整理を崩さず、理解と運用の一致を淡々と示すことが、結果として評価を安定させる対応といえます。

 

第4章 歯科医院の安定的な運営を取り戻すために

再指導は、個別指導後の対応について、行政が「改善の実効性を改めて確認する必要がある」と判断した段階です。そのため、再指導を、評価を立て直すための確認の局面として捉え、評価に足る対策を十分に行う必要があります。
具体的には、本コラムで確認した通り、

  • 指摘された問題の性質を正確に理解していること
  • 是正内容が実際の診療や算定運用に反映されていること
  • 同じ判断を繰り返さない仕組みが医院として整っていること

といった点を、提出資料および当日の説明の双方から確認できる形になっていることが重要です。
判断に迷う場合や、対応の妥当性に不安がある場合には、早い段階で専門家の視点を取り入れることも検討してみましょう。私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士をはじめとする各士業が連携し、状況に応じた実務的な対応をサポートしています。小さな不安でも判断に悩まれる場合は、どうぞお気軽にご相談ください。