医療業界の経営・法務・労務に精通した総合リーガルファーム
病院 診療所 クリニック 歯科医院 薬局
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持分ありの医療法人は、社員(出資者)が払込んだ持分に相当する権利を保有し、死亡・退社・譲渡時に「出資額+評価増額」を請求できる構造になっています。医療法人設立当初は出資額が数百万円でも、長年の内部留保や不動産含み益で純資産が膨らむと、相続発生時に数千万~数億円の払戻請求権へ跳ね上がるケースも珍しくありません。払戻資金を用意できなければ運転資金が枯渇し、最悪の場合は医療法人の解散・清算に発展するため、事前の対策が重要となります。
出資持分は定款で譲渡制限がかかっているのが一般的です。社員総会で「譲渡承認議案」を特別決議(出資総額の3分の2以上など定款所定)で可決しなければ譲渡は無効となります。
譲渡価額は「純資産+営業権」の鑑定評価が推奨され、時価とかけ離れると贈与税課税・過少資本税制のリスクがあります。
個人間譲渡の場合、譲渡人は所得税・譲受人は贈与税の課税対象、法人への譲渡であれば、法人税の課税対象となります。持分が適正な価額で評価されているという第三者算定書を取り付けておくことで、追徴リスクを低減できます。
払戻しは資本金減少と同義であり、社員総会の特別決議が必要です。
払い戻しを行う前に、官報公告+個別債権者通知を1か月行わなければなりません。この公告を怠ると「隠れ債務隠し」とされ過料対象になります。
払戻を実施する際の原資をどう確保するかを検討します。大体が、内部留保、金融機関融資、理事長個人からの借入の3つのいずれかを選択することになります。
持分あり医療法人で出資持分を動かすときに検討すべき論点は、“誰に・いくらで・いつ渡すか”という点です。
持分の譲渡を行う場合は、議決権=持分比率が譲渡で動くため医療法人を運営するうえで経営権を持たせて問題ないかは事前に検討が必要です。
また、相続を契機に持分を動かす場合は、遺留分の問題や納税資金の確保が難しいなどの新たな課題も発生する可能性があります。
払戻資金や経営権の課題、遺留分や相続税リスクを根本から解消したい場合は、持分なし法人への移行も選択肢に入れると良いでしょう。
持分なし医療法人への移行時は、社員総会決議、基金評価と税務特例の適用、厚労省・都道府県への認可申請が必要ですが、一度完了すれば将来の払戻請求や相続トラブルを恒久的に遮断できます。
移行コストと節税効果を試算したうえで、譲渡・払戻しを行う前に併せて検討されてみられることをお勧めします。
当事務所では、持分譲渡・払い出しの手続面だけでなく、節税・将来の相続面を踏まえたシミュレーションを行い、持分ありのままでもよさそうか/持分なしに移行した方がよさそうかのご提案も行っております。
将来的に持分なしに切り替えた方がよいのか?という疑問をお持ちの先生は一度ご相談ください。