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医療機関開業を取り巻く最新動向とよくある失敗例

新規開業の外部環境

厚生労働省の統計によれば、2024年の新設診療所数はコロナ禍前を回復しつつある一方、耳鼻咽喉科・整形外科の競争激化、オンライン診療へのシフトといった構造変化が顕在化しています。開業資金は平均6,000万~1億円。金融機関は「医師個人保証」を求める傾向が強く、資金繰りが不安定だと自宅・個人資産までリスクが及ぶ点に留意が必要です。開業3年以内で法人化・分院展開を視野に入れるなら、個人保証を 3 年後に解除できる特約を付けたり、リース中途解約ペナルティを最小化したりする交渉が重要となります。

開業時の三大ハードル

許認可の遅延

診療所を開設する際は許認可が必須となりますが、保健所・厚生局・建築基準・消防手続きと各省庁への手続の並列管理がうまくいかなかったことにより、想定していた時期に許可が下りず診療開始が遅れ、その結果賃料や人件費がただただ流出してしまう事態となってしまうケースが多いです。

人材確保の遅れ

看護師・医療事務の採用がうまくいかず人が集まらない、採用条件が曖昧なまま内定を出してしまい、開業直前に内定辞退されてしまうなど、人材確保が遅れると計画していた診療体制が崩れてしまいます。

集患マーケティングの不足・不備

周辺地域の競合が多く想定よりも新患流入が少なくなってしまうなど、マーケティング面での課題もハードルになりやすいです。また、どうにか集患をしようというところばかりに目を向けて医療広告ガイドライン違反となる誇大表現でホームページ作成をしてしまい、開業直後に行政指導を受けてしまうというケースもあります。

許認可の時系列管理

内装設計図が決まった段階で、消防と建築基準法の事前協議を同時に始めてください。消防からの指摘で隔壁を追加すると、建築確認の再申請になり 3〜4 週間のロスが生じます。保健所の開設許可は開院 60 日前提出が原則ですが、図面に受付面積・カウンセリング室の表記が抜けただけで差戻しになるため、行政書士にチェックを依頼することをお勧めします。なお、厚生局の保険指定は月 1 回しか審査日がないので、書類不備で差し戻しになった場合=その1か月間は売上がゼロになるリスクがあることを留意しておいてください。

資金調達・設備投資リスク

医療機器はリース会社3社以上に見積もりを取り、残価設定と保守料金を比べます。電子カルテはメーカー縛りの保守契約が多く、月額サポート費が機器リースと二重に発生するケースがあります。契約前に「保守範囲(ソフト・ハード)」「更新時の追加費用」「解約条項」を必ず確認しましょう。

医療法人設立+分院展開の実務ポイント

①持分あり・なしの選択

持分あり法人は出資持分が相続税評価の対象になる一方、持分なし法人は出資者の経済的権利が限定されるため、親族間で経営権を集中させたい場合は持分ありが適し、将来 M&A や第三者承継を視野に入れるなら持分なしが有利です。最近は「設立時は持分あり→5年後に持分放棄して持分なしへ転換」という両者を組み合わせた方式も取られています。

②法人認可とガバナンス体制

都道府県の審査では「診療時間と理事長の勤務時間が実勤務に合っているか」を厳しく見られます。理事長=院長が 1 日 5 時間しか勤務しない計画だと、兼業疑義で認可が遅れることがあります。設立後は理事会議事録を年 2 回以上作成し、厚生局の個別指導で提示できるよう電子保存しておくとリスクが減ります。

③分院展開の資金と労務

分院は本院と同じ医療法人コードで請求するため、本院の黒字と分院の赤字が相殺できる節税効果があります。ただし分院が3期連続赤字の場合、都道府県から「健全化計画書」の提出要請が来るため、黒字化までの計画を初年度から立てておく必要があります。スタッフ就業規則を院ごとに分けると労務統制が難しくなるため、法人統一規程+院別細則とするのが望ましいです。

開業時での人事・労務における注意点

採用契約・社会保険・賃金体系

採用時には必ず労働条件通知書を交付し、採用条件を明記してください。特に、試用期間の有無、残業の有無(固定残業代の金額)、就労場所、業務範囲は後々トラブルになりやすい部分になります。また、社会保険の適用範囲の拡大により、パートタイムで採用する場合も基準を満たす場合は社会保険加入義務が発生します。(週の所定労働時間が20時間以上、月の所定内賃金8万8千円以上)

就業規則と勤怠システム

従業員が 常時 10 名を超えた時点 で就業規則届出が必須です。開院準備段階でも内定者を含めた常勤換算人数が 10 名に達するケースがあるため、遅くとも着工時には就業規則のドラフトを作成し、労働条件の周知と届出準備を進めておきましょう。

また、医療機関は「変形労働時間制」導入率が高いものの、手術や救急対応など時間外や超過が発生しやすくなります。打刻データと残業申請の乖離があると未払い残業代発生のリスクにもなるため、カルテのログと勤怠を連動させるような病院向けの勤怠管理システムを導入するなどで正確な労務管理を行うことが望ましいです。

Nexill&Partnersができること

当事務所は医療法務に精通した弁護士を中心に、税理士・社労士・行政書士・司法書士が社内連携の上でワンストップでの開業支援体制を取っております。
建築・消防・保健所・厚生局の申請手続きの代行をはじめとして、事業計画策定から、資金繰り・節税の数値シミュレーション、実際の資金調達までサポートいたします。事業を拡大するなかで発生する労務面・法務面への対応についても積極的なご提案を行います。

複数の士業分野を横断したワンストップでの対応を強みとし、開業にかかる院長の負担を最小化し、開業後の成長戦略まで視野に入れた提案を行っております。
まずは構想段階のご相談からでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。