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医療法人を拠点展開する場合の検討パターン例

①同一都道府県内で検討している場合

病院やクリニックの経営者が事業拡大を考える場合、まず検討されることが多いのが同一都道府県内での「分院展開」です。具体的には、本院のある地域と同じ都道府県内にもう1つ診療所を設置する方法を指します。この分院展開には次のようなメリットがあります。

分院展開でのメリットと注意点

■本院で培ったブランド力を活かせる
本院での評判や実績を新規拠点にもそのまま展開しやすく、スムーズに患者層を拡大できます。

■スタッフの異動や共有が容易
物理的な距離が近いため、本院と分院間での医師や看護師、事務スタッフなどの人事交流が比較的簡単です。必要に応じて応援スタッフを派遣できるのは大きな強みとなります。

■許認可手続きが比較的シンプル
行政手続きや医療法上の要件は都道府県ごとに定められていますが、同一都道府県内であれば「本院がある程度満たしている要件の延長線上」で手続きを進められるケースが多いです。

一方で、同じエリア内に複数拠点を持つことで、患者さんの認知度やシェアを高める効果がある一方、本院と分院が近距離すぎる場合は患者層のカニバリゼーション(奪い合い)が起きる可能性もあるため、出店するエリアや診療科目の分担を明確にするなど、競合と差別化する対策が必要となります。

②隣県等都道府県をまたいで展開を検討している場合

異なる都道府県にわたって拠点を展開する際は、「広域医療法人化」という手段です。たとえば、本院が東京都内にあり、今後は千葉県や埼玉県などにもクリニックを増やしたい場合などが典型例となります。広域医療法人化には、次のようなメリットがあります。

広域医療法人化でのメリットと注意点

■新たなエリアの患者層を獲得できる
本院が位置する都道府県とは異なる商圏に進出することで、まったく新しい患者層へのアプローチが可能です。

■診療科や専門分野の拡張がしやすい
地域によって求められる医療サービスは異なります。たとえば高齢者が多いエリアでは在宅医療やリハビリテーションを重視した拠点、都市部では美容医療や高度専門医療に特化した拠点を設置するといった戦略的な展開が考えられます。

■経営基盤の安定化
複数の都道府県で患者層を確保できれば、一地域の景気変動や競合状況の影響を分散しやすくなり、経営全体のリスクヘッジにつながります。

ただし、各都道府県で異なる許認可要件や行政手続きへの対応、ならびに会計・労務管理などの面でも複雑さが増すため、広域化を行う際には専門家のサポートを受けつつ、拠点ごとのニーズや法規制を綿密に調査し、計画的に展開を進めることが重要です。

「分院展開」の場合の流れと注意点

分院展開のための流れ

1.事業計画の策定と市場調査

競合するクリニックや病院の状況、人口構成などを分析し、本院とのシナジーを最大化できるエリアと場所を見極めます。患者ニーズが高い分野に特化するのか、本院で対応しきれない診療科を増やすのかなど、明確なコンセプトを設定しましょう。

2.診療報酬・経営戦略の調整

分院を設けることで収益構造が変化します。新たな拠点を運営するための人件費や設備投資費用をどのように捻出するのか、また各拠点で算定できる診療報酬はどう変わるのかを事前に試算し、事業収支のバランスを考慮した経営戦略を立てます。

施設選定・許認可手続き

開業候補地で物件やテナントを探し、物理的な環境や交通の便などを総合的に判断します。そのうえで、保健所や行政へ診療所開設届など必要な許認可の申請を行います。医療法人の定款変更などの手続きが必要な場合は、速やかに着手しましょう。

分院展開の際の注意点

資金調達と財務リスクの管理

分院の初期投資や開業後の運転資金をどのように確保するかは経営の根幹です。銀行融資・補助金制度・助成金など、利用できる制度は積極的に活用しましょう。また、複数拠点を運営することで財務リスクが増大する可能性もあるため、リスクマネジメントを徹底する必要があります。

医療従事者の確保と人事管理

医療法人としてスタッフの数が十分確保できなければ、新たに拠点を増やしても運営がままなりません。給与体系や就業規則の見直しを含め、どの拠点にどの人員を配置するか、中長期的な視野で検討が求められます。

法規制の遵守と行政手続き

医療法、医師法、薬機法、労働法など、クリニック運営には多くの法規制があります。分院開設の際も、本院同様に各種届け出や認可を得なければなりません。定期的な届出や更新手続きなどを忘れず行うことが重要です。

広域医療法人化の場合の流れと注意点

広域医療法人化のための流れ

都道府県ごとの許認可申請手続き

異なる都道府県に拠点を設置する際は、それぞれの行政機関で独自の審査基準が設けられている場合があります。書類の整合性や手続きのタイミングがずれないよう、専門家と連携して漏れなく準備を進めましょう。

組織体制・ガバナンスの整備

広域に展開するほど、法人全体のマネジメントが複雑化します。理事会や本部機能を強化し、事業運営と財務管理を一元化する仕組みが必要になります。拠点ごとの責任者や意思決定ルールを明確に定めることが大切です。

資本政策・運営戦略の確立

他法人との合併や合同事業などを視野に入れた場合は、資本関係や利益配分のルールを整理する必要があります。また、グループ全体としての最適な運営戦略を描き、どの拠点でどのような診療科やサービスを提供するのかを計画的に決定しましょう。

広域医療法人化の際の注意点

許認可要件の違いと審査基準

各都道府県で申請必要書類や審査手順、要件が異なるため、申請スケジュールが想定より長期化するリスクがあります。事前に行政機関と確認をしつつ、無理のない計画を立てることが不可欠です。

グループ全体の財務管理と法人税制の最適化

拠点が増えるほど、会計処理や納税管理は煩雑になります。各拠点でまちまちの会計基準を適用していると財務状況が把握しづらくなるため、早い段階で統一的なルールを定めることが重要です。また、医療法人ならではの税制優遇制度を有効活用することで、さらに経営を安定させることができます。

医療法人間の業務提携と契約管理

広域医療法人の形態をとる場合、本院と分院間の契約を明確にし、医療法人間の業務委託契約や経営管理体制を整備する必要があります。適切な契約がないと、法人間の資金移動や診療報酬請求の透明性が問題視される可能性がありますので適切な契約管理を行いましょう。

Nexill&Partnersができること

当事務所では、医療法人の拠点展開における法務・財務・労務全般をワンストップで支援しております。先生方のクリニック運営を全力でバックアップし、より充実した医療サービスを地域社会へ提供できるようサポートいたします。

必要な手続き・登記業務に関する一括対応

分院設置や広域医療法人化に伴う複数の許認可申請や登記変更、定款修正など、煩雑な手続きを一括でサポートいたします。専門家がトータルに管理するため、効率的かつ正確に進行可能です。

集患・ブランディングのためのWEB対策もご提案

新拠点を開設する際には、患者さんに広く周知するための集患施策が欠かせません。ホームページやSNSなどのオンライン媒体を活用したブランディング戦略についても、当事務所でサポートいたします。

事務長代行サービスで事務処理工数を削減

分院や複数拠点を運営するにつれて、労務管理・経理処理・法務対応といった業務量が格段に増えることでの業務のひっ迫にお悩みの先生も多いです。事務長代行サービスを活用していただくことで、先生方は診療や患者対応に専念できる環境を整えられます。

ご相談内容に応じて最適な対応をご提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。