医療業界の経営・法務・労務に精通した総合リーガルファーム
病院 診療所 クリニック 歯科医院 薬局
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医療機関においては、日常的にさまざまな契約書が取り交わされます。例えば、患者さんとの間で取り交わす治療同意書や個人情報保護に関する誓約書、さらには医薬品や医療機器を納入する業者との購入契約、院内のテナントスペースを利用する外部サービス事業者との賃貸借契約など、その内容は多岐にわたります。これらの書面は、医療法や個人情報保護法といった厳格な法規制の範囲で運用されるだけでなく、万が一のトラブルやクレームに備えるためにも欠かせない役割を果たしています。
医療機関が契約書を作成したり、既存の契約書をチェックしたりする際には、通常の企業とは異なる特有の留意点があります。医療従事者は患者さんの生命や健康を預かる立場であるため、書面に盛り込むべき内容には法律や業界ガイドラインによる厳格な規制や配慮が欠かせません。
診療情報や健康保険に関するデータはきわめて機微性が高く、取り扱いを誤ればプライバシー侵害や行政処分のリスクが伴います。契約書には、業務委託先や取引業者が適切に患者情報を管理する義務や、守秘義務違反時の措置などを明文化しておかなければなりません。また、クラウドサービスを利用して電子カルテを管理するケースでは、データの保管場所やセキュリティ対策について、利用規約や契約書で十分にカバーしているかを慎重に確認する必要があります。
医療機関においては、法律で診療上の説明義務が課されており、口頭での説明だけでなく、書面による同意取得が強く推奨されています。これらの法令上の要件を踏まえながら、契約書の文面で「医師が患者にどの程度の情報提供を行うのか」「患者が理解・納得した上で治療に臨むための手続き」が明記されているかを確認することが大切となります。
医療機関で取り交わされる契約書には、患者さんとの関係を定めるもの、スタッフとの雇用関係に関するもの、外部業者との取引契約など、多種多様なパターンがあります。それぞれに共通する課題や、よく起こるトラブル事例を把握しておくと、未然にリスクを回避しやすくなります。
患者との間での代表的な契約書としては、入院契約書や治療同意書があげられますが、書式に不備があることで以下のようなリスクがでてきます。
・入院時に必要な保証金や支払い方法、保険適用外の費用などを詳細に規定しておかないと、退院後に医療費を巡る紛争が生じやすくなる。
・同意書の内容が不十分なままだと、「手術や治療の具体的リスクの説明がなされていない」として、医療事故の際に医療機関側が責任を問われるケースがある。
特に高額医療や自由診療分野では、費用負担や治療効果に関する説明不足を主張されるリスクが高いため、契約書や同意書でカバーすべき範囲を明確化することが重要です。
従業員との間での契約書としては、雇用契約書や業務委託契約書が代表的です。医師や看護師など医療資格をもつスタッフを雇用する場合、労働条件や勤務時間の規定だけでなく、守秘義務や副業・兼業の扱い、退職後の競業避止など、医療特有の条項を盛り込む必要があります。また、法改正やガイドラインの変化にも対応しながら契約内容を適切な形に整えることも、労使紛争リスクを回避するためには必要不可欠です。
外部業者との契約書としては、医薬品や医療材料の購買契約、医療機器のリース契約、院内設備のメンテナンス契約などが挙げられます。これらは取引額が大きく、長期的に利用するケースが多いため、支払い条件のほか、トラブル時の責任分担や保証の範囲を明確に定めておかないと紛争が生じやすいです。実際に、医薬品の供給が遅れたことで院内の診療計画に支障をきたし、損害賠償の問題へと発展した事例も報告されていますので、条件部分は締結の都度きちんと見直しを行っておくべきでしょう。
医療機関が契約書を管理・運用するうえで、法的リスクを最小限に抑えるには、医療分野に精通した専門家のアドバイスが不可欠です。当事務所では、複数の医療機関の顧問弁護士としてサポートを行ってきた経験より、医療業界特有の法規制を踏まえたうえでの的確なアドバイス、契約書面の文言の最適化を行います。
また、弁護士のほかに社労士、税理士など複数の士業が在籍していることで、経営面や労務面との一体的なサポートが可能となります。例えば、新たなクリニック開業時には物件やリースなど各種契約書をチェックするだけでなく、スタッフの雇用契約や給与体系に関する相談や、開業時の税務面でのサポートまで一貫して行えます。
既に使用している契約書内容の見直しや、新たに契約書の作成が必要な際には、ぜひお気軽にご相談ください。