出光興産の公募増資について,同社の創業家が新株発行の差し止めを求めた仮処分申立てで,東京高等裁判所は,7月19日,創業家側の即時抗告を棄却した。東京高等裁判所の川神裁判長は,「新株発行は,『著しく不公正な方法』により行われたとは言えない」とし,また,「出光側に反対する株主らの支配権を弱める可能性は低い」,「新株発行後,出光が直ちに昭和シェルとの合併承認を議案とする臨時株主総会を開く可能性が低い」ことを決定理由として挙げた。創業家は同日,最高裁判所に抗告しないと表明している。出光は,発行済み株式数の約3割にあたる4800万株の新株を発行し,約1200億円を調達する。これにより,創業家の持ち株比率は,現在の33.92%から,昭和シェルとの合併協議を単独で否決できる3分の1を下回るが,強硬姿勢は崩していない。出光は合併に向けた臨時株主総会の招集を急がず,創業家との直接話等を通じ説得を続ける方針である。
公募増資とは,新しい株式を発行するに当たり,不特定かつ多数の投資家に対して取得の申し込みを勧誘することです。そして,資金調達を目的として行われる場合であっても、特定の株主又は株主以外の第三者に対して発行されるときには,株主構成(持株比率)が変化します。そのため,会社法は,企業が「著しく不公正な方法」で株を発行した場合には,株主が差止めを請求できると定めています(会社法第210条)。
そして,客観的な事情から支配権の維持・奪取目的を認定する方法,例えば、特定の株主の持株比率が低下することを認識しながら,あえて第三者に対し,募集新株の発行を行った場合には,合理的理由のない限り,差止めが認められると示した裁判例もありますので,会社において,資金調達の必要性から新株発行を行う場合でも,上記の点に留意する必要があるでしょう。
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