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元検事・元司法試験考査委員(憲法)が考える司法試験―司法試験全般で問われているものは何か?

2024.02.05

今回は、これから法曹を目指される方に向けて、元検事・憲法の司法試験考査委員も務めた弁護士が考える司法試験というテーマのコラムです。

司法試験全般で何が問われているか、その問われているものは何かということについて、実務家の視点から弊所所属川本日子弁護士がお話していきます。

1.司法試験(全般)で問われているものは?

川本弁護士まず、結論からお話ししますと、私が考えるに、司法試験で問われているものは、法曹実務家として必要な能力があるかということに尽きると思います。

言い換えると、法的思考に基づいて妥当な結果を導き出せるかということになると思います。

受験指導において、『法的思考に基づいていれば、どのような結論であっても構わないんだ』ということが言われていることがあると思います。

究極的には、確かに法的思考が整っていれば、どのような結論であっても構わないというのが試験としてはそうなんですけれども、実際、作問しているのも、採点しているのも、半分は学者さんですけど、半分は法曹実務家です。

となると、法曹実務家としては、この受験者を合格させていいかということは、言い換えると自分たちの仲間として受け入れるのか、ということですので、法曹実務家として、通常この事案だったらこういう結論になるよねというコンセンサスがある程度あるものであれば、そこから外れたところの結論を書かれている答案について、あまりいい感じはしない、ウェルカムではないということをお伝えしておく必要があるかなと思っております。

2.司法試験とは?

実際のところ法律はどうなっているかというと、司法試験法1条1項「司法試験は裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。」となっております。

ここでも言われているように、法曹実務家に必要な学識それと応用能力、これが問われている試験であるということが法律にも明記されています。

3.法曹実務家に必要な学識とは?

まず、法曹実務家に必要な学識についてですが、これは皆さん勉強されていると思いますけれど、条文、判例、通説が非常に重要です。
順番もこのとおり重要でして、まずもって条文です。

条文が並んでいる順番、項目立て、改正したときにどのように改正しているか、ここに立法者意思が非常にあらわれていますので、まずは条文、そして最後にも条文、そこに戻っていただくということが、非常に重要だと思っています。

そして、その条文の解釈について、ある程度指針を示しているのが判例、もちろん最高裁判例です。
高裁以下の判例は、そういう意見があるよという程度のものになるかと思います。
そして、判例でも賄えないものがあるのであれば、通説ということになるかと思います。

法曹実務家にとっては、すごく特殊な少数説とか、そういうものは、もう本当に必要ないことですので、そこに皆さんの労力を割くというのはとても無駄なことではないかなと思っております。

論文を書くに当たって、どうしても反対説に立ちたい、少数説に立ちたいということを留はしませんが、法曹実務家にとって判例を押さえていないということは、致命的なことになりますので、迷ったのであれば必ず判例をとっていただきたいなと思っております。

4.法曹実務家に必要な応用能力とは?

そして、もっと重要なのが実は応用能力です。
法曹実務家に必要な応用能力は、以下の能力であると私は思っております。

  • 社会問題の把握能力​
  • 法的思考能力​
  • 問題解決能力

昨今、司法試験の論文試験というのは非常に長い例題を出していますが、まさにこの応用能力を本当に聞きたいから、そういう例題を出しているんだと私は理解しております。

実際の問題を見ても、かなり実際に起こった事象をデフォルメしているものとか、あるいは実際に法律としてはできていないけれども、こういう法律を作ったらいいのではないかということが議論されている事案とか、そういうものが取り上げられていることが多いように思います。

そして、それは何を見ているかというと、いろいろある社会問題をどうやって解決しようかということで、例えば立法化が図られたり、立法を踏まえないでも行政庁としてあるいは都道府県としての施策を実行に移していったりすることがありますが、そういった場合、必ず法律問題が発生するあるいは憲法問題が発生するということになってきます。

そうなると、法律家としてはどこにその法律上の問題があって、理論的にはどう解決すべきところなのかっていうことを検討しなければいけないですし、その法的思考をたどった上で、じゃあこの事象についてはどのような結論をとるのが妥当なのかという問題解決能力までが法律実務家には求められているということになります。

そのため、問題把握~法的思考~問題解決まで、その思考過程を余すことなく答案にあらわしてほしいというのが、この昨今の長文化している論文の問題であるというように認識しています。

実は問題を読むと、検討する上で考慮してほしいことは書いてあるというように思いますね。その上で、そこをいかに拾っていけるかというのは法的センスを求めているんだなと思いますので、そういった観点で皆さん勉強していただければいいのではないかなと思います。

皆さんの御検討を祈ります。

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