知的財産高裁は,平成29年1月20日,先発医薬品の特許の保護期間が延長された場合に、その延長期間中に保護される範囲について、判断基準をを示しました。
本件は,おおまかに言えば,スイスの製薬会社デビオファーム社が開発し特許取得していた先発医薬品について、東和製薬が開発・販売していたジェネリック医薬品が特許権を侵害しないか争われたものです。
この事案において,裁判所は,延長後の保護範囲について,成分,分量,用法,用量,効能及び効果に僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異にすぎない医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに及ぶとしました。
そのうえで,実質同一といえる類型として,「①医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長登録された特許発明において,有効成分ではない『成分』に関して,対象製品が,政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合,②公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において,対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合で,特許発明の内容に照らして,両者の間で,その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき,③政令処分で特定された『分量』ないし『用法,用量』に関し,数量的に意味のない程度の差異しかない場合,④政令処分で特定された『分量』は異なるけれども,『用法,用量』も併せてみれば,同一であると認められる場合」を挙げました。
この判決は、いままで見切り発車で開発するしかなかったジェネリック医薬品が特許権侵害を回避するための基準を提示しました。これによって、今後は、特許権侵害を回避するための方法を考えたうえで安心してジェネリック医薬品の開発ができることになるでしょう。
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