2024年4月1日より、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた労働者に対して、時間外労働の上限規制が適用されることとなります。
医師は、現在時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますが、同日以降、時間外労働の上限規制の適用を受けることとなります。
前回は、医師の時間外労働規制のうち、原則的な取扱い特定労務管理対象機関について説明させていただきました。
前回の記事はこちらから:【2024年4月適用】医師の時間外労働規制について①
今回は、前回の続きとして、特定労務管理対象機関の指定の受け方等について説明させていただきます。
1.特定労務管理対象機関の指定を受けるためには?
特定労務管理対象機関の指定を受けるためには、以下の流れで動いていただくことになります。
来年4月1日よりA水準以外の水準での上限規制の適用を受けるためには、令和5年度中に指定を受けておく必要があります。
②医療機関勤務環境管理センターに評価受審申込を行い、評価を受ける
(※必要書類を受領してから評価通知まで約4ヶ月程度)
③医療機関勤務環境管理センターからの評価を受けた後、評価結果、時短計画と必要書類等を揃えて都道府県に対し、指定申請を行う
特に、②については評価センターが必要書類を受領してから評価通知を出すまでに約4ヶ月程度かかる見込みとされていますので、指定を受けることを検討している医療機関は、速やかに動く必要があります。
なお、指定を受けない医療機関、つまりA水準の医療機関においても、ガイドラインに沿った時短計画を作成している場合は、診療報酬の地域医療体制確保加算の算定要件となるようです。
2.追加的健康確保措置の実施(面接指導・勤務間インターバルなど)について
これまで説明してきた時間外労働の上限規制の他に、全ての医療機関において、時間外・休日労働が月100時間以上となることが見込まれる医師に対して、100時間以上となる「前」に面接指導を実施しなければなりません。
ただし、A水準においては、疲労の蓄積が認められなければ、月の時間外・休日労働が100時間以上となった後遅滞なく実施することも可能となっています。
また、A水準以外の水準の指定を受けている場合、面接指導に加え、①勤務間インターバル(取得ができなかった場合の代償休息)、②連続勤務時間の制限が義務化されます(A水準の場合は努力義務です。)。
①については、始業から24時間以内に9時間、又は46時間以内に18時間の連続した休息時間を確保する必要があります。
なお、C-1水準の場合で、臨床研修における必要性から、指導医の勤務に合わせた24時間の連続勤務時間とする必要がある場合については、始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間を確保する必要があります。
この勤務間インターバルの確保を徹底することが原則となりますが、やむを得ない事由により、インターバル中に緊急業務に従事することが容易に想定されます。
この場合は、遅くとも翌月末までにインターバル以外で代償休息を付与する必要があります。
②については、勤務間インターバルに関連するものになりますが、休息時間の確保の観点から、必然的に連続勤務時間の上限が28時間となります。
なお、C-1水準の場合については、連続勤務時間の上限が15時間と、他の水準よりも制限が強化されています。
もっとも、上で述べた24時間の休息時間を確保する場合については、連続勤務の上限が24時間となります。
3.まとめ
前回から2回にわたり、医師の時間外労働規制の概要についてお話させていただきました。
特定労務対象機関の適用が想定されているのは、総合病院、大学病院等がメインだと思いますが、時間外労働の原則的な上限規制及び面接指導については、全ての医療機関で対応する必要があります。
いずれにしても、医師の長時間労働の抑制、ひいては健康の確保という観点から、医療機関としては適切に運用していく必要があろうかと思われます。
KOMODA LAW OFFICE 弁護士
坂本 志乃 SHINO SAKAMOTO
得意分野は労務、企業法務。
座右の銘は『努力は人を裏切らない』