2024年4月1日より、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた労働者に対して、時間外労働の上限規制が適用されることとなります。
トラック運転者は、現在時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますが、同日以降、時間外労働の上限規制の適用を受けます。
これに合わせ、トラック運転者に適用されている「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」といいます。)も、2024年4月1日より改正されます。
前回は、現行の改善基準告示の概要を簡単に説明しましたので、今回は、トラック運転者の改善基準告示の改正内容について、概要をお話したいと思います。
前回の記事はこちらから:【2024年4月】改善基準告示の改正(トラック運転者)①
1.改正ルール(概要)
では、改正後のルールについて確認したいと思います。
なお、以下で確認するルールにはそれぞれ例外・特則がありますが、今回は概要の確認に留めさせていただきます。
⑴拘束時間 拘束時間は、最初にお話しした時間外労働の上限規制の適用に伴い、1日の拘束時間の限度・1か月の拘束時間・1年間の拘束時間共に減少しています。
具体的には、以下のとおりです。
②1日14時間を超える拘束時間は1週間2回が目安
③月の拘束時間は284時間が限度、年間の拘束時間は3,300時間が限度
※拘束時間の延長に関する労使協定の締結により、「1年のうち6か月まで、1年間の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲であれば1月の拘束時間を310時間」まで延長可能です。
※1か月の拘束時間が284時間を超える月は連続3か月までです。
なお、トラック運転者は、2024年4月以降も、時間外労働規制のうち「時間外・休日労働の合計時間数が月100時間未満であること」については適用が除外されているのですが、改善基準告示では、「1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努める必要がある」とされていますので、念のため注意が必要です。
⑵休息時間 休息時間についても、時間外労働を抑制するという観点から、現行ルールの8時間から休息時間数が増加しています。
⑶運転時間 運転時間については、大幅な改正は見られないのですが、運転時の休憩の取得について変更があります。
②分割1回がおおむね連続10分以上として合計30分以上の分割取得も可能
③10分未満の運転の中断は、3回以上連続できない
このうち、②でいう「おおむね10分以上」とは、改善基準告示によれば、運転の中断は原則10分以上とする趣旨であり、上記③の場合には②に該当しないことを表しているようです。
2.まとめ
前回から2回に分けて、改善基準告示の改正について説明させていただきました。
運送業界では、従前から時間外労働の上限規制の適用と併せて「2024年問題」として取り上げられており、運送業を営む事業者においては、輸配送効率の向上、輸配送形態の変更、人員の確保、これに関連して労働条件の見直し等といった対応に迫られます。
「2024年問題」への対応に苦慮している事業者様は、ぜひ一度専門家に相談されることをお勧めいたします。
KOMODA LAW OFFICE 弁護士
坂本 志乃 SHINO SAKAMOTO
得意分野は労務、企業法務。
座右の銘は『努力は人を裏切らない』