2024年4月1日より、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた労働者に対して、時間外労働の上限規制が適用されることとなります。
トラック運転者は、現在時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますが、同日以降、時間外労働の上限規制の適用を受けます。
これに合わせ、トラック運転者に適用されている「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」といいます。)も、2024年4月1日より改正されます。
そこで、今回から2回にわけて、トラック運転者の改善基準告示の改正内容について、概要をお話したいと思います。
1.用語について
最初に、改善基準告示で用いる用語について簡単に説明します。
⑴拘束時間 拘束時間とは、労働時間(作業時間・手待ち時間等)と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間、つまり、始業時刻から終業時刻までの使用者に拘束される全ての時間をいいます。
したがって、運転手以外の労働者は、基本的に「労働時間」と「休憩時間」で管理されるのに対し、運転手は、「労働時間」「休憩時間」とは別に両者を合わせた「拘束時間」で管理されることになります。
⑵休息時間 休息時間とは、使用者の拘束を受けない期間であり、勤務と次の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間をいいます。
勤務間インターバルのようなものと考えていただいてもいいかと思います。
⑶休日 休日は、休息時間に24時間を加算して得た、連続した時間をいいます。
通常、「休日」とは暦日、つまり0時から24時までの連続した24時間を単位として付与する必要があるのですが、運転者の場合、その業務の特殊性から暦日を単位として休日を付与することが困難と考えられるため、改善基準告示にて、上記の取扱いとなっています。
2.現行ルール(概要)の確認
以上を前提に、まずは現行ルールの確認です。 一部例外もありますが、拘束時間、休息時間に関する現行のルールの概要は、以下のとおりです。
②1日15時間を超える拘束時間は1週間2回が限度
③休息時間は継続して8時間以上確保が必要
④月の拘束時間は293時間が限度
※拘束時間の延長に関する労使協定を締結すれば「1年のうち6回、1年間の拘束時間が3516時間を超えない範囲であれば1月の拘束時間を320時間」まで延長可能です。
次に、運転時間に関する現行ルールの概要は以下のとおりです。
こちらも例外がありますが、今回は割愛させていただきます。
②2週間平均で1週間44時間が限度
③連続運転時間は4時間が限度。直後に30分以上の休憩の確保が必要
3.まとめ
今回は、改善基準告示の改正に合わせて、まずは現行の改善基準告示の概要について説明させていただきました。
次回は、今回説明した内容を前提に、改善基準告示の改正内容について、簡単ではありますが説明させていただく予定です。
現行のルールと、改正内容を比較してもらえたらと思います。
次回の記事はこちらから:【2024年4月】改善基準告示の改正(トラック運転者)②
KOMODA LAW OFFICE 弁護士
坂本 志乃 SHINO SAKAMOTO
得意分野は労務、企業法務。
座右の銘は『努力は人を裏切らない』