遺言は相手方のない単独行為です。これは、他人との法律関係を遺言者が遺言によって一方的に形成し、その効果をその他人に押し付けることを意味します。このような性質をもつ遺言でどんな行為でも自由にできるとすると、行為の名宛人や遺言の履行義務者の利害に大きく影響するし、遺言者の死後に遺言内容を確定できないこともあります。そこで、他者の意思に抵触しない事項や、抵触しても遺言者の意思が優先されるべき事項だけが、遺言でなしうる行為(遺言事項)として法定されています。たとえば以下のような事項が挙げられ、遺言事項に該当しない遺言は無効となります。
①家族関係に関する事項:認知(民法781条2項)、未成年後見人の指定(839条)
②法定相続に関する事項:推定相続人の廃除・廃除の取り消し(893条・894条2項)、相続分の指定及びその委託(902条)、特別受益者の相続分に関する事項(903条3項)、
③ ②以外の財産処分に関する事項:遺贈(964条)、遺贈の効力に関する定め(988条・992条・994条2項など)
④遺言執行に関する事項:遺言執行者の指定およびその委託(1006条1項)、遺言施行者に関する定め(1006条1項・1017条1項・1018条1項)
⑤遺言の撤回(1022条)
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