最近は、商標権を取得する企業が年々増加しています。今や商標権を取得するということは、企業によるブランディング戦略の一環として、日常的に行われていることです。
さて、「商標権」とは知的財産権のうち「産業財産権」と呼ばれる権利の1つです。
企業は、自社の商品やサービスを他社のものと区別しやすくするためにマークをつけたりネーミングしたりしています。このマークやネーミングを「商標」といい、消費者が商品やサービスを選んでいく基準となり、ブランドイメージをつけていく重要な役割を担っています。このような自社商品やサービスについて、マークやネーミングを付け、それらを自社のものとして利用するために設けられているのが商標権になります。
® このマークが、その商標は商標権を持っているという目印になります。
自社のマークやネーミングを財産として守るためにあるのが「商標権」なのです。
今回はこの商標権を獲得することにどのような意義があるのかをお話ししていきます。
1.知的財産権とは
はじめに商標権は知的財産権のうちの1つだと述べましたが、ここで知的財産権について説明します。
人間の知的活動によって生み出されたアイディアや創造物には、財産的な価値をもつものがあり、それらを「知的財産」と呼びます。この知的財産を一定期間独占するための権利が知的財産権で、さまざまな法律によって保護されています。
知的財産権は技術などに関する産業財産権と、文学などに関する著作権等に分けられますが、商標権は産業財産権に分類されています。
特許権、実用新案権、意匠権、そして商標権の4つが産業財産権に含まれます。
特許庁によると、
と定められています。いずれも、特許庁に審査されていますが、保護する対象が何かによって獲得する権利は異なり、その保護期間も変わってきます。
2.商標権の目的と機能
次は商標権を獲得する目的と、その機能について詳しくお話したいと思います。商標権は商標法に基づいて制定されていますので、まずは商標法制定の目的を見ていきましょう。
商標法第一条ではこう記されています。
(目的)この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
ここで、具体例を交えて説明していきたいと思います。
もしも、商標権というものが存在していなければ、世の中に同じ名前の商品がありふれてしまっているかもしれません。
例えば、A社からボールペンAという商品が発売され、書きやすいと評判になりロングセラー商品になっていたとします。その人気に便乗し、他社からもよく似たデザインのボールペンAという名前の商品が販売されたとします。すると、消費者はたくさんあるボールペンAを区別するのが難しくなり、A社以外のボールペンAを購入するようになるかもしれません。
そうなることで、A社の売り上げが下がる、「品質が違う」といったクレームという実害が考えられます。
こうした事態(あくまで一例ではありますが)が起こらないよう、元祖ボールペンAを生み出したA社の信用を維持し、さらに産業の発達に寄与、需要者の利益を保護することが商標法制定の目的なのです。
3.商標登録をしていなかったら
商標登録をするには、費用がかかります。だからといって商売をするときに商標登録をしなかったらどんな事が起こり得るのでしょうか。
例えば、X社が10年前から「Xウサギ」というキャラクターを会社の広告キャラクターとして発案し、使用していたとします。そのキャラクターがテレビ番組で紹介されたことを機に人気沸騰し、同社から発売されているキャラクター関連商品の売り上げが5倍に上がったとします。
そんな中、一通の内容証明が届くのです。
内容は、「『Xウサギ』は『Y社』が商標登録をしているので商標権の侵害にあたる。ただちにキャラクターの使用、関連商品の販売の中止を求める、、損害賠償を請求する」というものだったのです。
10年前からXウサギを使用してきたX社としてはとても理不尽極まりない出来事でしょう。
しかしここで重要なのは、「X社」がXウサギを先に考え使用していた(=商標を使っていた)ことなのではなく、「Y社」がXウサギの商標権を取得していることなのです。
知らない間にX社はY社の商標権を侵害していたことになるのです。
このように、商標登録は早い者勝ちと言えるのです。「いつまでに」という期限やきまりはないので、この商標でやっていくという事が決まれば、「できるだけ早く」商標登録をすることをお勧めします。(商標登録完了までに、半年から1年間かかるのです。)
4.まとめ
商標権は自社のサービスを区別化、ブランドイメージをつけていくために大切な権利です。特許庁が認めたということで社会の信用にもつながり、更なる事業の成長にも繋がるでしょう。
しかし知名度が上がったり、人気が出たりしてから商標登録をするのでは遅い場合もあります。「早い者勝ち」であることを念頭に置きましょう。
また、反対に自分が商標権を侵していないか、という事も考えなければなりません。あらかじめ商標調査をし、商標を決めるのが良いでしょう。